【アナログゲーム決死圏】第7回:よく聞く「クトゥルフ神話」ってなに?定番ゲームも紹介

小説はもちろんマンガや映画などなどいろんな形で親しまれている「クトゥルフ神話」。読者の中にもそういった作品のファンという方も多いかと思いますが、実はクトゥルフ神話は、アナログゲームの題材としても愛されていて、毎年様々なタイトルが登場しているのです。

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◆「クトゥルフ神話」のアナログゲーム


「クトゥルフ神話TRPG」



・著者:サンディ ピーターセン、リン ウィリス
・翻訳:中山 てい子、坂本 雅之
・出版:KADOKAWA
・価格:5800円(税抜)

プレイヤーは人間の「探索者」として「クトゥルフ神話」に登場する宇宙的恐怖に出くわしながら、なんとか生き延びようともがき苦しむの様を楽しむSFホラーTRPG。原題と同じ『クトゥルフの呼び声(Call of Cthulhu)』というタイトルで、デジタルゲーム化もされているのでそちらの方で知っている人も多いかも(TRPGの旧版は、『クトゥルフの呼び声』というタイトルで流通していました)。

ニコニコ動画を中心にファンが作ったリプレイ動画がたくさん公開されているので、遊んだことはないけれど動画でなら見たことがあるなんていう人もいるかもしれませんね。

まずゲームの特徴となっているのが、キャラクターの「SAN値(正気度ポイント)」と呼ばれるステータス。よくネタにもされているので、言葉だけは聞いた事があるという人もいることでしょう。SAN値とは、キャラクターが恐怖を体験するたびに狂気に飲まれその数値が減っていき、0になると発狂するというもの。いわゆる精神面でのHPのいった感じ。

恐怖体験といっても驚かされて減るというだけでなく、怪しい書物を読んでクトゥルフ神話に関する知識を得たり、神話生物を目撃するだけでもSAN値は減るので、目的を達成したり生き延びるためには、SAN値を削りながらも進まなくてはならないシチュエーションに追い込まれるのが面白いポイントとなっています。また、そのルールブックにはゲームの遊び方だけでなく、クトゥルフ神話の世界観やモンスターの挿絵とともに解説されており、クトゥルフ図鑑としても楽しいし、クトゥルフ神話を今まで知らなかった人でも、読めばある基本的な知識が身につく本となっています。

そのため、TRPGに馴染みのない人はびっくりするかもしれないほど厚い本となっているのですが、基本的な判定の部分は至ってシンプルで、どちらかと言うとゲームマスターの裁量が大きく、ロールプレイ重視のシステムとなっています。基本システムがシンプルということもあって応用が効き、お話の舞台の自由度が高いので、基本ルールブックでも1890年代、1920年代、現代で遊べるほか、エクスパンションを導入すれば、中世ヨーロッパ(残念ながら現在絶版)、日本の戦国時代や第二次世界大戦中などなどいろんな時代や場所で宇宙的恐怖に出くわしてしまう人々をロールプレイできるようになっています。

ちなみに、このゲームに登場するモンスターの多くが見るだけでもSAN値が削れる上に、人間と比べてかなり強く設定されているため、(普通に作った)探索者では到底かなわないようになっています。なので、モンスターと戦って経験値やお金を稼ぎ、キャラクターを強化し再び戦いに挑むといったハック&スラッシュなスタイルで遊ぶのではなく、自主的or巻き込まれ型で起こった危機的状況をその場にいる人たちと協力し、(時に犠牲者を出しながら)首の皮一枚で切り抜けるという「ホラー映画」的な遊び方が楽しいゲームなのです。

とはいえ、シンプルで自由度の高いところを活せば、超人的な探索者を作り、『クトゥルフvsエクスペンダブルズ』みたいな感じで、筋肉任せのアクション・ホラーとして遊ぶこともできなくはない懐の深いシステム。旧支配者にだって「血を流せば殺せる」の精神でいけるはず!

要するに、(TRPG全般に言えることですが)ゲームマスターとプレイヤーたちみんなのやりたいことの方向性をしっかり合わせればいろんな楽しみ方ができるゲームというわけですね。

『クトゥルフ神話TRPG』は、全国の書店・TRPG取扱店の他、Amazonでも販売中です。

「マンション・オブ・マッドネス」


・プレイ人数: 2~5人
・プレイ時間:120分~180分
・対象年齢:13歳以上
・デザイナー:コーリー コニーチカ 
・販売:アークライトゲームズ
・価格:8000円(税抜)

ボードゲームでありながら、ゲームマスターとプレイヤーに分かれて遊ぶという本当にTRPGのようなシステムで遊ぶクトゥルフ神話ボードゲーム。ファンタジーTRPG風ボードゲーム『ディセント』のクトゥルフ神話版ともいえます。



各プレイヤーがそれぞれ別の探索者を担当し、怪しい建物内を探索して、建物に隠された秘密を解き明かすことを目的とし、ゲームマスターは不利な効果を発生させるカードを使ったりモンスターを操ったりして探索者たちを妨害しながらゲームを進めていきます。




なんといっても目を引くのが、美しいボードと素敵なミニチュア。ミニチュアに色はついていませんが、そのままでも迫力十分で、『クトゥルフ神話TRPG』などのTRPGで使って遊ぶこともできるでしょう(『クトゥルフ神話TRPG』はミニチュアを使う必要なゲームではありません)。

単純にコマを動かしモンスターと闘いながらゲームを進めるのではなく、パズル要素もあったりするのが楽しい。また、シナリオが複数収録されており、マルチエンディングとなっているので、繰り返し遊んでも新鮮なゲームが出来るのも特徴。事前に準備がいらなくて気軽にTRPGっぽい体験ができるゲーム……と言いたいところですが、ルールは重めで事前準備と説明に1時間以上かかり、実プレイにも慣れるまでは2時間くらいはかかるので、どちらかと言うと、クトゥルフ神話を知らない人でもじっくりゲームを楽しみながら、世界観に親しむことのできるタイトルとなっています。

クトゥルフ神話に興味があって、豪華なミニチュア&ボードを使った贅沢なひとときを過ごせるボードゲームを探しているという人向けの一本です。

『マンション・オブ・マッドネス』は全国のボードゲーム取扱店の他、Amazon等でも販売中。

「エルダーサイン」

・プレイ人数: 1~8人
・プレイ時間:60分~90分
・デザイナー:リチャード ラウニウス、ケヴィン ウィルソン
・販売:アークライトゲームズ
・価格:3600円(税抜)

ダイスとカードを使って遊ぶ協力型ダイスゲーム。プレイヤーは探索者として復活しようとする邪神を封印する「エルダーサイン(古の印)」を集めるために奔走するという設定のゲーム。ちなみに、『マンション・オブ・マッドネス』とは異なり、ゲームマスターは存在しません。



ゲームプレイとしては、プレイヤーは各ターンにダイスを振って、奇妙な事件や怪しい品が描かれた冒険カードにある条件をクリアできるかを判定します。判定に失敗しても振るダイスの数を減らして再挑戦が可能。最終的にクリアできたかどうかによって、耐久力・精神力が減ったり、モンスターが出現したりします。

また、目的をクリアすると(カードを入手する形で)ポイントが手に入るので、それを消費してアイテムを入手することで、ゲームを有利にすすめることもできます。冒険カードの条件を達成しながら、一定数のエルダーサインを集めて邪神を封じれば万事解決。しかし、上手に集めることが出来ずにある程度のターンが経過すると、邪神が復活。探索者たちは持てる全てを使って邪神相手に決死の戦いを挑まなければなりません……。

といった感じで、基本的にはダイスを振るだけながら、クエストをこなしたりモンスターと戦ったりアイテムを集めたりとRPG的な雰囲気を味わえるタイトル。基本的にランダム判定なので、ダイスという邪神に翻弄されながら、出目に一喜一憂してみんなでワイワイ楽しめます。『マンション・オブ・マッドネス』よりも気軽にクトゥルフ神話が題材のボードゲームで遊んでみたいという人向けの一本ですね。

『マンション・オブ・マッドネス』は全国のボードゲーム取扱店の他、Amazon等でも販売中。

「クトゥルフ・ウォーズ(Cthulhu Wars)」




・プレイ人数: 2~4人
・プレイ時間:60分~90分
・対象年齢:12歳以上
・デザイナー:サンディ ピータセン
・販売:Petersen Games
・価格:199ドル

クトゥルフ神話の邪神となって、地球で覇権争いを繰り広げるゲーム。ちなみに、もう人類は滅亡済みだ!



プレイヤーは各ターンに自分のカルト信者を集めたり、モンスター(ユニット)を生み出したり、戦闘したりしながら支配を広げ、呪文書を集め、より多くの破滅ポイントを獲得することが目的。ゲームには、「クトゥルフ」「ハスター」「ニャルラトホテプ」「シュブ=ニグラス」の4勢力が収録されており、それぞれ異なるデータをもったユニットが登場します。


しかも、それぞれのユニットが精巧なミニチュアで再現されているのが嬉しいところ。大きさ的にも『クトゥルフ神話TRPG』に流用しやすいサイズだと思います(邪神は邪神だけあってデカイですけどね!)。

ちなみに、このゲームの生みの親はその『クトゥルフ神話TRPG』を生み出した、サンディー・ピータセン。デジタルゲームの『DOOM』や『エイジ・オブ・エンパイア』にもゲームデザイナーとして参加した人物。そんな有名デザイナーが生み出したタイトルということもあり注目度が高いタイトルで、開発資金を募集するKickstarterでは、140万ドル(約1億7000万円)もの資金を集めました。

ちなみにいろいろ書いていますが、筆者は未プレイのタイトル。基本的にミニチュア使って遊べるゲームが好きなので、非常に気になっています。いつか遊べるといいなぁ……。

「クトゥルフ・ウォーズ」は今のところ正式な日本語版は発売されておらず、一部ボードゲーム取扱店で輸入販売が行われています。ちなみに、豪勢にミニチュアが入っているということもあり箱はかなり大きく、重さも5kg超らしいので、買うときには収納・運搬面でかなりの覚悟が必要となるでしょう。

アハトゥンク! クトゥルフ・スカーミッシュ・ゲーム(Achtung! Cthulhu Skirmish Game)



第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、連合国と邪神の手下となったナチが戦いを繰り広げるミニチュアゲームです。



ゲームは現在開発中で、まだ詳細は不明ですが、10体前後のミニチュアを使って小規模戦(スカーミッシュ)をするゲームとなる様子。連合国側の探索者とナチの化け物のデザインがいい感じ。

Modiphius Entertainmentから発売された第二次世界大戦クトゥルフもののTRPG用のセッティング集である『Achtung! Cthulhu』をベースにした作品で、今作はそのModiphiusがスチームパンク艦隊ゲーム『ディストピアン・ウォーズ』や『Halo』世界の艦隊戦を再現する『Halo:Fleet Battles』などを手がけるスパルタン・ゲームスと共同で製作。

まだ正式なリリース日は決まっていませんが、今年の年末にはボックスセットを発売する予定であると制作者が公式フォーラム上で発言しています。ミニチュアゲームはクトゥルフ神話を題材にしたゲームが殆ど無いので今後の動向が気になるタイトルです。


■傭兵ペンギン
フリーライターとして働く傍ら、時々アナログゲームの翻訳をしております。アナログゲームと筋肉映画が大好物。最近はホビージャパンのテーブルゲームチャンネルでTRPG『ウォーハンマーRPG』のプレイ風景を生配信する番組に出演中。アーカイブ動画もありますので、是非チェックしてみてね!
Twitter:@Sir_Motor
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《傭兵ペンギン》

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