記野直子の『最新北米市場分析』2015年8月号―PS4ハードが戦略の勝利か

東京ゲームショウ目前で8月度の北米市場データ速報がNPDから発表されました! 市場全体でみると8月単体の売上は5億4800万ドル(約660億円)と前年比2%ダウン。ソフトウェア売上は前年比10%ダウンの2億790万ドル(約250億円)。

ゲームビジネス 市場
記野直子の『最新北米市場分析』2015年8月号―PS4ハードが戦略の勝利か
記野直子の『最新北米市場分析』2015年8月号―PS4ハードが戦略の勝利か 全 3 枚 拡大写真
こんにちは。いよいよ東京ゲームショウ2015(TGS 2015)が始まりますね! 今年は出展社数最多と聞いていますし、家庭用ゲーム機が業界を引っ張ってきた時代から、それだけではない多種多様な業界へと変遷する潮目のゲームショウとも言われていますので、ぜひご参加くださいませ。

さて、その東京ゲームショウ目前で8月度の北米市場データ速報がNPDから発表されました!


■市場全体動向: 安定市場とはいえ7月度から横ばい



市場全体でみると8月単体の売上は5億4800万ドル(約660億円)と前年比2%ダウン。プレ年末商戦のはずなのに7月からの伸びはほとんどありませんでした。また、ハードウェア売上は1億9050万ドル(約230億円)と前年同月の1億9530万ドル(約235億円)から2%ほどダウン。

ソフトウェア売上は前年比10%ダウンの2億790万ドル(約250億円)。この数字はもちろんダウンロードコンテンツを含まない店頭でのパッケージ販売のみの数字です。

前年比12%アップを達成したのはアクセサリー(周辺機器)で、好調なんだなと思っていたら、NPDの分析では『LEGO Dimensions』、『Skylanders: Superchargers』、『Disney Infinty 3.0』などのインタラクティブ・フィギュアゲームは小売店が在庫を持つのを嫌がって安売り体制に入ったようだ、とのこと。

この分析に任天堂のamiiboの名前が挙がっていないところがすごいな、と思ったりしますね。任天堂はamiiboを北米だけで700万体販売したと発表しました。

■ハード動向: PlayStation 4強し!戦略の勝利か



8月もPlayStation 4が首位をキープしています。Xbox Oneも悪くはないのですが、PlayStation 4の首位がここまで続くと水をあけられた感が否めないですね。4月を除き2015年はPlayStation 4が毎月ナンバーワンハードウェアに輝いています。インストールベース(累積販売台数)で100万台近くの差になってきたと推定されます。

価格が高かったり、いろいろな発表の仕方がユーザーに受け入れられなかったりと、マイクロソフトはXbox Oneのスタートダッシュで出遅れた部分を一生懸命キャッチアップしてきてはいるのですが、世はオンライン時代。ユーザーのコミュニティが出来上がってしまった後では、簡単に巻き返しは難しいということなのでしょうね。

先行者利益という言葉を久しく使っていませんでしたが、確かにコミュニティのインフラを伴うオンラインハードにおいてはあながち正しい表現かもしれません。


8月にPS4を押し上げた理由の一つとして、E3で発表したActivisionとの提携に因るものが大きいと思われます。PS4ユーザーが他のプラットフォームユーザーに先んじて『Call of Duty: Black Ops III』のベータ版が遊べるというディールです。発売すれば全世界で1,000万本以上売れてしまうお化けソフト『Call of Duty:Black Ops』シリーズですから、そりゃあ一刻も早く遊びたいユーザーは待ちませんよね。

ただ、まだまだ競争は続くのです。ハードが単月で100万台以上売れてしまうこともある北米の年末商戦の様相ですから、果たしてマイクロソフトが年末に大きな隠し玉を持っているのか、ソニーがそれを上回る施策を考えているのか、年末商戦の各社の戦略が楽しみです。いずれにしてもハードが拮抗していれば業界が盛り上がる、という定説は当たっているようですね!

それにしてもハードの世代交代の速さは加速しているようで、現世代機の売上は前年比34%アップ、旧世代機は前年比51%ダウンとのこと。昔は日本が一番ハードの買い替えが早いと言われていたはずなんですが……。

NPDによるとハードウェア販売の93%がソフトウェアとのバンドル(同梱)版だそうです。前年同月には41%だったバンドル版比率ですから、ユーザーはハードのみを買うのではなくソフトをプレイするために買う、ということですね。また、大型タイアップタイトルのバンドルがユーザーの購入欲を刺激しているのも事実です。

任天堂はここのところWii U本体に関してコメントを出しません。売上台数の伸び悩みは否めないようです。一方3DSに関しては新しいモデルのおかげで2015年の1月~8月までの売上が前年同期間の30%アップだったという発表をしています。あれ、先月の発表で「2015年1月~7月の7か月間のハード売上が前年2014年同時期と比べて35%程度の売上のアップが見られました。」って言ってたのに。8月にそれを5%ダウンさせたってことです。

■ソフト動向: エクスクルーシブタイトルが3つランクイン!



2015年8月度のソフトウェアランキングをレポートします。

1.Madden NFL 16 (PS3/PS4/X360/X1) - Electronic Arts
2. Minecraft (PS3/PS4/X360/X1) - Microsoft/ Sony Computer Entertainment
3. Gears of War: Ultimate Edition (X1) - Microsoft
4. Grand Theft Auto V (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Take 2/Rockstar
5. LEGO: Jurassic World (PS3/PS4/X360/X1/Wii U/3DS/PSV) - Warner Bros. Interactive
6. Rare Replay (X1) - Microsoft
7. Until Dawn (PS4) - Sony Computer Entertainment
8. Call of Duty: Black Ops Combo Pack (PS3/X360) - Activision Blizzard
9. Batman: Arkham Knight (PS4/XBO/PC) - Warner Bros. Interactive
10. Call of Duty: Advanced Warfare (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Activision Blizzard


毎年夏になると発売され、首位をかっさらう『Madden NFL』。今年も例年通り発売とともにトップ1です。

ハード別エクスクルーシブタイトルが3タイトルランクインしています。3位の『Gears of War: Ultimate Edition』(マイクロソフト)、6位の『Rare Replay』(マイクロソフト)、7位の『Until Dawn』(ソニー)。マルチプラットフォーム展開しているタイトル群の中で単独プラットフォーム向けタイトルがランクインするのはご立派です。


特に7位のソニーの『Until Dawn』は、『Gears of War: Ultimate Edition』のようなシリーズものでもなく、『Rare Replay』のような旧作を使ったゲームでもなく、オリジナルでイチから作ったタイトルと考えれば、すごいことですよね。ホラーとしてのシナリオも高く評価されています。

さて、マイクロソフトはエクスクルーシブタイトルを2つもランクインさせている!と考えると、なぜXbox OneハードはPlayStation 4よりも売れなかったのでしょう?

答えはSCEAの声明文の中にありました。「PlayStationをいつも応援してくれてありがとう。そして8月にはPlayStation 4は一番売れたハードウェアであると同時に、ソフトウェアもPlayStation 4向けが一番売れたんだよ」。

つまり、マルチプラットフォーム向けのソフトはかなりの確率でPlayStation 4 版の方がXbox One版より買われているということです。実際に上記トップ10のマルチプラットフォームタイトル中『Minecraft』と『LEGO: Jurassic World』を除きPlayStation 4向け販売数が多いということです。

プラットフォームメーカー(ファーストパーティ)が自社ハードのために優良なエクスクルーシブタイトルを発売することはもちろんですが、サードパーティの大型タイトルを、より売り上げれはハード牽引の大きな助けになるのは明らかです。

開発費が高騰して単体のプラットフォームだけに供給することが難しくなったサードパーティタイトルを、プラットフォーム側としてどう囲い込んでいくか?と考えた時に、前述した『Call of Duty: Black Ops III』におけるソニー&Activision提携のような形は、今後ますます増えてくるものと考えられます。このパートナーシップにおいてはベータ版の優先プレイのみならず、PlayStation 4オンリーのDLCも発表されています。

新しくランクインしてきたタイトルも多く、活気づいた市場ですが、ソフト市場規模は現世代ハード台数がここまで多くなかった昨年に比べては前述の通り減少しています。これは昨年同時期に発売された『Diablo III』や『The Last of Us』などの大型タイトルにインパクトとしては追いつかなかったためと見られています。

9月からはホントの年末商戦が始まっています。実際にはQ4(第4四半期)のことを言うので10月からという方々もいらっしゃいますが、大型タイトルのラッシュを嫌って先んじて発売する!というのも戦略としてあるため、これから年末まではあつーい商戦を見つめましょう。

■さぁ、東京ゲームショウへGO!


毎年のことながら任天堂は東京ゲームショウに出展しませんが、今年はマイクロソフトも出展しないためコンソールのプラットフォームホルダーとしてはソニーの独壇場になります。

「え、じゃあちょっとさみしいかな」と思いきや、モバイル向けアプリケーションのメーカーさんや海外のゲームコンテンツメーカーなどのおかげもあって過去最大の出展社数とのこと、盛況なショウになりそうです。

「コンソールと一部モバイルとその仲間たち」の様相から大きく変わると予想される今年の東京ゲームショウ、見出しにも書きましたが大きなチェンジの年かもしれません。皆さんも目撃者になってくださいね。See you at TGS!Otherwise, また来月!

記事提供元: Game*Spark

《Game*Spark》

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]

関連ニュース