【hideのゲーム音楽伝道記】第44回:『ニーア ゲシュタルト/ ニーア レプリカント』 ― 愛と喪失の物語を彩る、切なくも美しい音楽

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【hideのゲーム音楽伝道記】第44回:『ニーア ゲシュタルト/ ニーア レプリカント』 ― 愛と喪失の物語を彩る、切なくも美しい音楽
【hideのゲーム音楽伝道記】第44回:『ニーア ゲシュタルト/ ニーア レプリカント』 ― 愛と喪失の物語を彩る、切なくも美しい音楽 全 4 枚 拡大写真
インサイドをご覧の皆さま、こんばんは! ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第44回目となる今回は、『ニーア ゲシュタルト/ニーア レプリカント』をご紹介いたします。


『ニーア ゲシュタルト/ ニーア レプリカント』は、2010年4月22日にスクウェア・エニックスからXbox360およびプレイステーション3で発売されたアクションRPGです。Xbox360版が『ニーア ゲシュタルト』、PS3版が『ニーア レプリカント』となります。


本作は、主人公・ニーアと、その肉親である女の子・ヨナを中心にして描かれた物語です。両作品はニーアの設定がそれぞれ違っていて、Xbox360版『ゲシュタルト』では大人の男性、PS3版『レプリカント』では青年という設定となり、外見や年齢がそれぞれ違います。ニーアとヨナの関係性も、Xbox360版『ゲシュタルト』では「父と娘」、PS3版『レプリカント』では「兄と妹」といった形で変わってきますが、物語の大筋に大きな違いはありません。


本作の舞台となるのは、遠い未来の滅びゆく世界。身体に不気味な黒い文字が浮かび上がり、やがて死に至ってしまう奇病「黒文病」にかかってしまったヨナを救うため、主人公のニーアは、「黒文病」の治療法を求めて、”マモノ”の徘徊する世界を旅することになります。

◆悲哀に満ちた物語を彩る、切なくも美しい音楽たち


さて、そんな『ニーア』の世界を彩るのに非常に大きな役割を果たしているのが音楽になります。本作のサウンドプロデュースを手掛けたのは、サウンド制作会社MONACA(モナカ)の岡部啓一氏です。作曲・編曲は、岡部氏をはじめ、MONACA所属の石濱翔氏、帆足圭吾氏、ゲームの開発を担当したキャビア所属(当時)の西村隆文氏が担当。また、MONACAの高田龍一氏も編曲に携わりました。

『ニーア』の音楽は、悲壮感のある本作の物語に見事にマッチした、切なさを帯びつつも美しい楽曲が多いです。本作の音楽における大きな特徴は、ほぼ全ての楽曲にボーカルが入っていること。特に、freesscapeという音楽ユニットに所属するヴォーカリストのEmi Evans(エミ・エヴァンス)氏による、美しさと儚さを合わせ持ったボーカルは絶品です。Emi氏の歌声は、岡部氏らが紡いだ切ない旋律と織り合わさって、『ニーア』の世界観を大いに彩ってくれます。Emi氏のボーカルは『ニーア』の世界観に絶対に欠かせない存在ですね。ちなみに、Emi氏によって歌われる歌は、“未来の言語”をイメージしてEmi氏自らが複数の言語を組み合わせて作った造語となっており、本作の幻想的な雰囲気と無国籍感を引き立てています。

それでは、本作の楽曲をピックアップしてご紹介していきましょう。なお、Youtubeのスクウェア・エニックス公式チャンネルで本作のいくつかの楽曲の試聴動画が公開されておりますので、あわせてお聴きになってみてください。(下記動画は、各曲を最後まで再生すると、自動で楽曲が切り替わっていきます。また、動画左上のアイコンをクリックすると、楽曲を選んで試聴することもできます)


●「夏ノ雪」
ゲームのオープニングで流れる楽曲です。TOKYO FM少年合唱団による美しくも儚いコーラスが、冷たく寒々とした雰囲気を醸し出し、『ニーア』の世界に引き込んでくれます。また、中盤から入ってくる力強いパーカッションは、ただ冷たい雰囲気だけではなく、迫りくる運命に抗おうとする強い意志のようなものを感じさせてくれますね。

●「イニシエノウタ / デボル」
ニーアが住む村で流れる音楽です。Emi氏のやさしいボーカルとアコースティックギターで奏でられる旋律が、村での穏やかなひとときを演出します。この曲は、村に住んでいる双子の姉妹のひとり「デボル」が、村の中央にある噴水の傍らでギターを弾きながら歌っているという形になっています。僕は『ニーア』初プレイ当時、この歌声があまりにも心地よすぎて、デボルさんのそばでずーっと歌を聴いていて、しばらくゲームが先に進められませんでした(笑)。ちなみに、村では普段はギターの音だけが流れているのですが、デボルさんに近づくとだんだん歌声が聴こえてきて、離れるとだんだん歌声が小さくなっていく……という演出もおもしろかったですね。これはぜひ実際にゲームで確かめてみていただきたいです!

●「光ノ風吹ク丘」
ニーアが住む村の北にある、緑豊かな平原で流れる楽曲です。パーカッションで奏でられる野生的な旋律に、Emi氏の伸びやかなボーカルが重なり、風を感じるような爽やかな旋律が楽しめますよ。雄大な平原の雰囲気がうまく表現されている1曲だと思います。

●「青イ鳥」
ゲーム序盤に訪れる「石の神殿」で戦うことになる、2体で1組のマモノ「ヘンゼル&グレーテル」との戦いで流れる音楽です。曲名は綺麗なのですが、実際の曲は、パーカッションがジャカジャカと掻き鳴らされ、禍々しく重々しい男性コーラスがアップテンポで奏でられ、さらにかすれたような女性コーラスが重なる、曲名とはまったく真逆の(笑)、混沌とした雰囲気を持つ楽曲になっています。恐ろしさと高揚感の混じった曲調が非常にインパクトがあって、妙な中毒性を持っています。共感していただける方がどのくらいいらっしゃるか分かりませんが(笑)。

●「カイネ / 救済」
身体の左半分をマモノに取り憑かれているという、複雑な境遇を持った本作のヒロイン・カイネのテーマ曲です。ピアノによる美しいメロディに、Emi氏の繊細な歌声が重なって、可憐さと同時に儚い印象を与えてくれます。僕はこの曲を初めて聴いた時、「なんて美しいんだろう!」と衝撃を受け、『ニーア』という作品に惚れました(笑)。 個人的には、この曲からは「儚い」という印象だけではなく「芯の強さ」も感じられます。大きなハンデに負けず、懸命に生きているカイネというキャラクターが、音楽でも表現されているのかもしれませんね。

●「全テヲ破壊スル黒キ巨人」
ゲーム中盤にニーアの住む村へ襲いかかってくる黒き巨人、「ジャック」との戦いで流れます。壮大で力強いコーラスが、巨人の絶望的なまでの巨大さと恐ろしさ、緊張感を演出しています。

●「エミール / 犠牲」
物語中盤にニーアの仲間になる、とある過酷な運命を背負った少年・エミールのテーマ曲です。とある哀しいシーンで流れるのですが、TOKYO FM少年合唱団による儚いボーイソプラノのコーラスと、冷たい弦の旋律が、悲哀に満ちたエミールの運命を描きます。あまりにも悲壮感のある旋律で、僕もゲームプレイ当時、心が締め付けられるほどに哀しくなったことを覚えています。

●「イニシエノウタ / 運命」
ゲーム終盤の、とある重要なイベントで流れます。詳細は伏せますが、抗うことのできぬ運命の残酷さを感じさせてくれるような悲壮感・絶望感がありながら、不思議な美しさを持っている楽曲ですね。イントロから奏でられる重厚なパーカッションと、流麗な歌声によって織りなされる、独特の浮世離れした浮遊感が素晴らしい1曲です。

●「魔王」
本作のラスボスとなる“魔王”との戦いで流れます。重厚かつ美しいコーラスとパイプオルガンの音色が、荘厳かつ神聖な印象と同時に、深い切なさを与えてくれますね。曲の後半にはパーカッションが加わり、大きな盛り上がりを見せ、闘いの激しさが演出されています。この楽曲は、音楽単体として聴いても素晴らしいのですが、ゲームを最後まで進めて、”魔王”という存在の正体を知ってから聴くと、”彼”の想いや哀愁がいちだんと深まり、より印象深くなるかと思います!

●「喪失 / Ver.ピアノ」
その名の通り、大切なものを”喪失”してしまうシーンで流れる楽曲です。ネタバレになってしまうので詳しくは伏せますが、大事な存在を失ってしまう深い悲しみや、胸を引き裂かれるような激しくやるせない感情が、ピアノの繊細な旋律で見事に表現されています。

●「Ashes of Dreams」
本作のエンディングで流れる楽曲です。Emi氏による儚くも美しい歌声と、ピアノとヴァイオリンで紡がれる旋律は、思わず涙腺がゆるんでしまうほどの絶品の美しさがありますね。うたかたの夢のような悲壮感のあるこの楽曲は、『ニーア』の残酷で哀しい愛の物語を、しっとりと締めくくってくれます。ちなみにこの楽曲は、基本となる英語バージョンのほか、フランス語・ゲール語・日本語を基にした造語のバージョンがありますので、聴き比べてみるのも一興かと思いますよ!

◆キャラクターの“気持ち”に対してつけられた音楽



『ニーア』の音楽は、独特の悲壮感と儚さを醸し出しており、悲哀に満ちている本作の物語と見事にマッチしています。『ニーア』のサウンドプロデューサー・岡部啓一氏が過去にインタビューで答えたお話によると、本作の物語の中で流れる音楽は、“状況”に対してではなく、キャラクターの“気持ち”に対して、つけたのだそうです。そのためか、本作の音楽を聴いていると、哀しい運命に翻弄されるキャラクターの気持ちと同調して、プレイヤーも胸をえぐられるようなせつない気持ちになるのです。メロディアスで、物悲しさと美しさを合わせ持った『ニーア』の音楽は、それに触れる者の心へダイレクトに突き刺さり、身体の奥底へとじんわり浸透していきます。『ニーア』の世界には欠かせない、非常にパワーのある楽曲だと思いますね。


『ニーア』の物語には哀しい展開が多いのですが、この作品の根底に流れているテーマは“愛”だと思います。愛する者のためならば、どんな代償をも怖れない――。そんな、どうしようもなく純粋な愛が描かれていて、心に残ります。

『ニーア』は音楽の評判が非常に高いので、音楽先行で語られてしまいがちな所があるのですが、ゲームのほうも良く出来ていますので、できればゲームとあわせてお楽しみいただきたいですね。ゲームをプレイしながら音楽を聴くと、物語との相乗効果でより心に刺さってきますので! プレイした方の心に、きっと強烈な爪痕を残してくれると思います。 ただし、本作のレーティングはCERO「D」(17歳以上対象)となっており、暴力的な描写や、出血表現も含まれていますので、そうした表現が苦手な方はご注意ください。

ちなみに……本作はマルチエンディングになっているのですが、2周目以降にはそれまでの見方が180度ガラッと変わってしまう、とある仕掛けがしてあります。詳細は伏せますが、これが僕はかなりショックで、どんどん『ニーア』の世界観にハマっていきました。

また、本作の「D」エンドには、ゲームの歴史上類を見ない、とある強烈な“仕掛け”がしてあります。僕は“それ”に直面した時、そのあまりにも残酷な選択に、「そんなの選べるかぁぁぁぁぁぁッ!」と叫び、十数分ほど真剣に悩みました(苦笑)。『ニーア』の物語や世界観にはうまくマッチしているんですけどね。

僕は、意を決してその“仕掛け”を見届けた後、心にぽっかりと大きな穴が空いたような空虚な気持ちになりました。こんなに大きな”喪失感”を体験できるゲームはそうそう無いと思います。でも不思議なことに、喪失感がありながらも、すっきりとした気持ちになったことは覚えているんです。『ニーア』は、今でも心に深く刻まれている、忘れられないゲームですね……。本当に、不思議な魅力を持つ作品だと思います。

本作はPS3のほかに、PS4/PS Vita/ソニー製の液晶テレビ「ブラビア」などで利用できるクラウドサービス「PlayStation Now」での配信も行われています。ご興味をお持ちの方は、ぜひこの愛と喪失の物語を体験してみてくださいね!

◆サウンドトラック情報



本作のサウンドトラックとしては、オリジナルサントラの『NieR Gestalt & Replicant Original Soundtrack』が発売中です。また、本作のダウンロードコンテンツで流れる楽曲と新規アレンジ曲が収録されたサントラとして、『NieR Gestalt & RepliCant/15 Nightmares & Arrange Tracks』が発売されています。また、ピアノアレンジ盤の『ピアノ・コレクションズ ニーア ゲシュタルト & レプリカント』、トリビュートアルバム『NieR Tribute Album -echo-』も発売中です。

本作のオリジナルサントラは、発売当時からそのクオリティの高さが大評判になりました。当時、サントラが人気すぎて売り切れになり、買いたくてもなかなか買えなかったことは思い出深いです(笑)。発売から早6年が経ちますが、今でも愛聴しております!また、このサントラは、海外のゲーム音楽メディア「Original Sound Version」で行われた、各年に発売されたゲームサントラの中から優れたものを表彰する催し「OSVOSTOTY Awards」の2010年度サウンドトラック・オブ・ザ・イヤーを受賞したこともあります。 ゲーム音楽の歴史に間違いなく残るハイクオリティな楽曲群だと思いますので、ゲームを未プレイの方にもぜひお聴きになってみていただきたいですね。

なお、今年4月16日には『ニーア』の公式コンサートが開催され、大盛況を博しました。この模様が収録されたブルーレイディスク『NieR Music Concert & Talk Live Blu-ray 《滅ビノシロ 再生ノクロ》』が12月14日に発売されるそうなので、ご興味をお持ちの方はチェックしてみてください!

◆続編『ニーア オートマタ』も発売予定!




そして来年2月23日には、本作の続編となる『ニーア オートマタ』がPS4で発売予定となっております。本作の主要スタッフは引き続き携わっており(プロデューサー・齊藤陽介氏、ディレクター・ヨコオタロウ氏、音楽・岡部啓一氏)、『タクティクスオウガ』や『ファイナルファンタジータクティクス』などで著名な吉田明彦氏がキャラクターデザインを手掛け、さらに『ベヨネッタ』などのアクションゲームに定評のあるプラチナゲームズが開発を手掛けているという期待の新作です。次はどんな物語が展開されるのか、どんな音楽が奏でられるのか楽しみですね! まあ、ヨコオ氏の作品なので、今回も強烈な個性があるものになっていそうですけれども(笑)。また僕たちを、いろんな意味でアッと驚かせてほしいです。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬

ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、ゲーム音楽関係の記事を執筆しています。『FFXV』、『ウォッチドッグス2』、『人喰いの大鷲トリコ』など今年の年末は気になるゲームが色々!
[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

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《hide/永芳英敬》

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