【レポート】『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』オリジナル作曲者・梅本竜のトリビュートイベント開催

 

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【レポート】『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』オリジナル作曲者・梅本竜のトリビュートイベント開催
【レポート】『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』オリジナル作曲者・梅本竜のトリビュートイベント開催 全 9 枚 拡大写真
2011年8月16日に亡くなったゲーム音楽コンポーザーの梅本竜さんが楽曲制作を手掛けた代表作のひとつ『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』。PC-98版でのリリースに始まり、コンシューマハードではセガサターン用タイトルとして移殖され、ヒットしたタイトルだ。そのセガサターン版以来、約19年振りとなるリメイク作が2017年にPS4とPS Vita向けにリリースされることになった。

それを記念し、梅本竜さんと交流関係のあったゲーム音楽コンポーザーが集結。『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』のトリビュートアレンジアルバム『TRIBUTE TO RYU UMEMOTO ~ Music From YU-NO』を制作すると共に、そのリリースイベントとして“You Know? Ryu Umemoto”が2016年11月12日に秋葉原のMOGRAにて開催された。多数のゲーム音楽コンポーザーが登場し、DJプレイやトークが飛び出したこの日のイベントをレポートしよう。

◆梅本竜さんの作り上げてきたサウンドとメロディがフロアに響き渡る!


オープニングのDJプレイでオーディエンスを盛り上げた高見龍氏

開演後に出演者による簡単なトークも交えつつ、イベントの説明や進行についての案内がされた後、トップバッターの高見龍氏によるDJプレイが開始。“FM音源時代の梅本竜”をテーマに『EVE burst error』や『Desire』から人気曲を中心に選曲。「Hacking」の作曲は梅本さんではなく高見龍氏作曲の曲だが、唯一梅本さんがアレンジしてくれた曲とのことで選曲したそうだ。ラストはトリビュートアルバム収録の「MPU - Move to parallel universe」に別の曲をメドレー形式で繋げた特別バージョンが届けられた。

DJプレイの後は最初のトークタイム。hally氏の司会・進行により、梶原正裕氏、樋口秀樹氏、ヨナオケイシ氏、高見龍氏、せんたろ氏の5名がステージに登場。トークに登場したコンポーザーがそれぞれ梅本さんとの出会いのきっかけや思い出を語りながらの自己紹介に始まり、イベントのために用意された梅本さんの音楽活動を表記した年表を追っていきつつのトークが展開された。

梅本さんにとって人生初の音楽の打ち込み経験はファミリーベーシックだそうで、ファミリーベーシックのCMで流れていた音楽とファミリーベーシックのマニュアルに載っている音楽が違うことに気付き、自分で打ち込みながら直していったそうだ。X68000購入後はディスクマガジンのサークルに参加し、様々な方たちと知り合い、FM音源を扱う腕を磨いていったとのこと。


梅本竜さんの活動を振り返りながら出会った頃の思い出を語り合った最初のトークパート

出演者とこの日集まったファン同士交流できるという歓談タイムを経て、2番手のせんたろ氏が登場。モニスタラッシュからリリースされているゲームに使用されている楽曲に始まり、トリビュートアルバムから「Opening」へ。最初は別の曲をアレンジする予定だったが、空いていたこの曲に変更したそうだ。後半はせんたろ氏が梅本さんの曲を初めて聴いたという、YM2203やOPN用の曲へ。ラストの「Stupid Request」はサビが頭に来た上にAメロがPMD-BBSで“初心者感動パターン”と言われてた構成になっていて、せんたろ氏が大好きな曲だそうだ。


DJプレイの中盤にはMCで梅本竜さんとの様々なエピソードを語ってくれたせんたろ氏

続いてX68000大魔神という異名を持つ、hizmi氏が登場。“趣旨ガン無視でガツガツいく”というテーマで選曲し、フロアを独特の音世界に築きあげた。そのセットリストは梅本さんが亡くなった2011年に開催されたチップチューン祭典“Blip FestivalTokyo”でのセットリストがベースだったそうで、このセットを組んだことについて何かしらの見えない意志が働いていたのでは、と回想していた。ラストは梅本さんの「YU-NO」の「52BH」で締めくくった。


チップチューンの祭典“Blip FestivalTokyo”と梅本竜さんの「YU-NO」を繋げるかのようなセットリストを組んだhizmi氏

続いて4番手の樋口秀樹氏が登場。他の出演者とは違った梅本さんの側面を紹介したかった、というテーマで「ぽぽたん」「群青の空を越えて」「RURUR」「きっと、澄みわたる朝色よりも、」等の楽曲を選曲。梅本さんが樋口氏と共作してた時期はこういう曲も書くんだよ、というアピールをすると共に、尖ったカッコいい梅本竜ではなく、きれいな梅本竜という側面を見せてくれるセットでプレイしてくれた。


他の出演者の流す楽曲とは別のタイプの選曲で攻めた樋口秀樹氏


◆2回めのトークパートでは梅本さんの後期の活動をメインにトークを展開

ここからは2回目のトークタイムへ。1回目に続いてhally氏の司会・進行により、山田一法氏、高橋コウタ氏、並木学氏、そしてシークレットゲストとして菊田裕樹氏、MAGES.の浅田誠がステージに登場。ここでも梅本さんとの出会いのエピソードが出演者の方から語られつつ、活動記録を記した年表を追っていく形でトークが進められた。ちなみに最初のトークがPC-98等のFM音源時代までがメインだったのに対し、2回目のトークはそれ以降の梅本さんの活動について語られた。

MAGES.の浅田氏は梅本さんと知り合ったきっかけがチャットツールのICQだったという時代を感じさせるエピソードに始まり、山田一法氏はhally氏が過去にEGG MUSICの販促でやっていたネットラジオへのゲストに出演したことがきっかけで梅本さんと知り合ったそうだ。

ちなみに梅本氏もhally氏と共に2年くらいEGG MUSICを運営するD4エンタープライズに所属し、EGG MUSICからリリースされるゲームミュージックのマスタリングを担当していたそうだ。その頃のことをhally氏は「超楽しかった」と振り返った。

また、ケイブ時代には浅田氏の企画の元で並木氏の楽曲をアレンジしていたというエピソードも語られた。ここまで来ると近年の話ということもあり、集まったファンもその活動を知っている方が多かったことだろう。


梅本さんの活動の後期のことを振り返りながらトークが交わされた2回目のトークタイム

トークが終わると、DJ5番手のhally氏が登場。楽曲の解説をしながらのDJプレイという、普段とは違うプレイ方法のDJプレイを魅せてくれたhally氏。1曲目の「うっでぃいぽこ」に始まり、「イース」や「ソーサリアン」といったファルコム作品や、「北斗星の女」等の曲を選曲。これらの楽曲は梅本さん自身がアマチュア時代にFM音源でアレンジしたという、秘蔵音源なのだそうだ。“人に歴史あり”をテーマに梅本さんが歩んできた知られざる一面を見せてくれたDJプレイだった。


梅本さんがFM音源で打ち込みした様々なゲーム音楽のコピー曲やオリジナル曲を
解説を交えながらDJプレイで楽しませてくれたhally氏

トリを務めるのはヨナオケイシ氏。“踊れる梅本竜曲を!”をテーマに、4つ打ち曲を中心に選曲。1曲目にはトリビュートアルバムに収録されなくて残念だったという「始動」を今回のイベント用にアレンジし、聴かせてくれた。ラストはまさに“踊れる梅本竜曲”といったアレンジになっているトリビュートアルバム収録曲「エリィ」で締めくくった。


DJのトリを務めたヨナオケイシ氏は、ノリのいい楽曲を立て続けに選曲し、フロアを盛り上げた

ゲーム音楽コンポーザー、梅本竜さんの築きあげてきた活動の歴史を、音と証言を交えて追っていったこの日のトリビュートイベント。梅本竜という音楽家が存在したことを伝えていきたい、出演者達のそうした思いがステージから溢れ出ていたことが何よりも印象的だった。

[You Know? Ryu Umemoto SET LIST]
・[DJ] 高見龍
01. Spiral(Desire)[Event Edit Version.]
02. DRAM(Xenon)
03. Hacking(EVE burst error) [Unlimited ver]
04.店頭デモ(GROUNSEED)
05.Reflector(Desire)[Unlimited]
06. MPU - Move to parallel universe(YU-NO)[Event Special Medley Version.]

・[DJ] せんたろ
01.crazeI~II(モニスタラッシュ作品用BGM)
02.ennui~sad(モニスタラッシュ作品用BGM)
03.common(モニスタラッシュ作品用BGM)
04.Opening(YU-NO)
05.Forest(Dengeki Devision)
06.Stupid Request(Dengeki Devision)

・[X68000大魔神] hizmi
01.arinko factory
02.Musod s4a
03.Zigrumad
04.Mutzrad
05.no title
06.Polyhed
07.Kawasakitek
08.Mechbass
09.Swoop
10.52BH(YU-NO)

・[DJ] 樋口秀樹
01.017 star ship(ぽぽたん)
02.08_normal(群青の空を越えて)
03.未使用曲 M04(作品名無し)
04.005 ムーンシャイン(RURUR)
05.優しさ(きっと、澄みわたる朝色よりも、)
06.絆(きっと、澄みわたる朝色よりも、)

・[DJ] hally(VORC)
(SET LIST非公開)

・[DJ] ヨナオケイシ
01.始動(危機)(YU-NO)
02.drift
03.artifact
04.away
05.灯 -blaze up-(ECLIPSE)
06.the FM
07.spin
08.エリィ(YU-NO)

■TRIBUTE TO RYU UMEMOTO ~ Music From YU-NO

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の発売を記念し、梅本竜と交流があったアーティストたちが集結、贈り出す公式トリビュート・アルバム。作りこまれたFM音源版原曲をアーティストたちがそれぞれの想いを胸にアレンジ、ミックスしたトラックを収録。コンピレーションアルバムの決定版。梅本竜を知る参加アーティストや古代祐三氏からコメントと共にhally氏が綴るライナーノーツも収録。

[収録曲]
01.Opening / せんたろ
02.Unseparated Parallel Line -Illusion First Mix- / TECHNOuchi
03.運命 ~因果律~ / 佐野広明
04.MPU - Move to parallel universe / 高見龍
05.?!(?!!?) / hizmi
06.危機 (Famicomized blues rock mix) / hally (VORC)
07.絆~kajapon Remix / 梶原正裕
08.幻想一夜 / 樋口秀樹
09.KYU-TEN-FUNERAL-JAZZ / 菊田裕樹
10.エリィ - THE MIX - / ヨナオケイシ
11.去りし人 / 山田一法
12.You Know? / 高橋コウタ
13.成長 / キノコ国本剛章
14.棺~祈り響く / 粟田英樹
15.悲哀(033piano-mix) / 仁志田竜司

レーベル:Spin→Out
発売日:2016年11月25日
価格:3000円(税抜)

[公式WEBページ]
http://spinout.forge.jp/?p=881

《風のイオナ(シティコネクション) 取材協力 長門克弥》

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