世界制覇のため日本に応援要請! 2007 韓国ゲーム産業投資説明会

韓国ゲーム産業振興院・KOTRA(大韓貿易投資振興公社)・大和証券SMBCは19日、東京・赤坂で日本の機関投資家やベンチャーキャピタル、ゲーム関連企業を対象とした韓国ゲーム産業投資説明会を開催しました。急速に発展する韓国ゲーム産業の現状と魅力を紹介し、日本からの投資獲得を目的とする催しです。韓国ゲーム産業振興院院長の挨拶のあと、大和証券SMBCソウル支店のシニアアナリスト、トーマス・クォン氏から韓国側の状況説明、NHN Japan取締役副社長の森川亮氏から日本の状況説明が行われた後、韓国ゲーム企業5社の投資プレゼンテーションが行われました。

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世界制覇のため日本に応援要請! 2007 韓国ゲーム産業投資説明会
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韓国ゲーム産業振興院・KOTRA(大韓貿易投資振興公社)・大和証券SMBCは19日、東京・赤坂で日本の機関投資家やベンチャーキャピタル、ゲーム関連企業を対象とした韓国ゲーム産業投資説明会を開催しました。急速に発展する韓国ゲーム産業の現状と魅力を紹介し、日本からの投資獲得を目的とする催しです。韓国ゲーム産業振興院院長の挨拶のあと、大和証券SMBCソウル支店のシニアアナリスト、トーマス・クォン氏から韓国側の状況説明、NHN Japan取締役副社長の森川亮氏から日本の状況説明が行われた後、韓国ゲーム企業5社の投資プレゼンテーションが行われました。

韓国ゲーム産業振興院 院長 Kyu-Nam Choi氏


●国内外の市場が拡大する韓国ゲーム企業

大和証券SMBCソウル支店のシニアアナリスト、トーマス・クォン氏は韓国のオンラインゲーム市場について「カジュアルゲームとシンプルな操作のゲームがユーザーの多様化と参加意識を高め、子供、女性、老人へと拡大している」と、その勢いがまだ停滞せず、依然として拡大基調であると説明しました。大和証券SMBCでは韓国のオンラインゲーム市場が今後3年間にわたり年平均14パーセントで拡大すると予測しています。また、韓国のオンラインゲームは2009年度までにゲーム市場の総売上高の75パーセントを占めると予測しました。この背景には、すでにMMORPGで飽和していると思われたオンラインゲーム市場でFPS(一人称視点射撃)ゲームが流行し始めていることなどが背景にあるようです。

大和証券SMBCソウル支店のシニアアナリスト、トーマス・クォン氏


その一方で、コンソールゲーム市場の低迷は否定できないという見解を示しました。普及が遅れてユーザーの基盤が弱いことと、韓国市場向けの国産ソフトが作られなかったこともその原因です。しかし、韓国ゲーム市場イコールPCゲーム市場というわけではなく、モバイルゲーム市場が形成されつつあります。

韓国ではPCやインターネット基盤が早期に整備されました。さらにユーザーの多様化に合わせたゲームポータルの登場がオンラインゲームユーザーを引きとめ、安定した市場を形成しています。また、オンラインゲームへの消費がデジタルデータ商品の市場を活性化しています。その代表的な例がアバターとゲーム内アイテムです。また、ゲームポータルがユーザーを確保するために、ゲーム内のコミュニティ活動を促進しており、ゲームの寿命を延ばしています。

国内市場だけではなく、韓国製ゲームの海外輸出も盛んです。ネクソンは58ヵ国でメイプル・ストーリーを販売し、グラビティは63ヵ国にラグナロクオンラインを販売しています。ネクソン、NCソフト、NHNの売上高における国外売り上げ高比率は22パーセントに達しました。アメリカで急成長しているゲーム内広告(PPG)も韓国で成長の兆しが見えています。

韓国市場の成長だけではなく、グローバルな展開に高い可能性があることも、韓国企業に対する投資の価値がありそうです。「韓国の技術と日本の資金で欧米を席捲したい」ということでしょう。

インフラがあり、ユーザーが少ない。欧米のオンラインゲーム市場は有望


●日本のゲームポータルにも変化が

NHN Japan取締役副社長の森川亮氏は「日本のオンラインゲーム市場は韓国の市場の3年前の状況に似ている」と語りました。これは日本が遅れているという意味ではなく、韓国がこの3年間でオンラインゲーム市場を拡大し続けたように、日本でも市場拡大の可能性があることを示唆しています。日本のオンラインゲーム登録会員数の累計は約4200万人、市場規模は1015億円に達します。また、アイテム課金の売り上げが定額課金の売り上げを上回り、基本無料でアイテム課金というタイトルが一般的になりつつあります。

NHN Japan取締役副社長の森川亮氏


このようなオンラインゲーム市場において、韓国産ゲームは総タイトル数の約6割、ユーザー参加数では75パーセントのシェアを持っています。日本で稼動しているオンラインゲームの開発国は、1位が韓国、大きく差がついて2位が日本、3位が台湾、次いでアメリカ、中国となっています。日本と中国の立ち上がりは急速で、韓国ゲームは更なる開発投資でグローバルな勝負をする必要があります。その一方で、日本や中国など他国の企業と連携する機会も増えています。

日本のオンラインゲーム市場はMMORPGで立ち上がり、カジュアルゲームで飛躍しました。そして現在、相次ぐFPSの導入により、ユーザーの裾野が広がっています。こうした状況を受けて、ゲームポータルサイトの運営も柔軟な対応が求められます。かつては各タイトルが独自に展開していた状況でした。しかし現在、ポータルサイトの登場によってゲームタイトルのサービスや課金方式が集約されつつあります。そして今後は、ポータルサイトとタイトルの競争が進みます。日本ではネクソンジャパンが運営しているメイプルストーリーがハンゲームからでも遊べるようになるなど、ポータルサイトの集約がさらに進むと予想されます。

日本のオンラインゲーム市場も拡大。ポータルサイトの集約が進む


ハンゲームは当初、無料のカジュアルゲームとアイテム課金方式のアバターによるコミュニティ機能で成長しました。その後、MMORPGやFPSなどの本格ゲームを次々にリリースしていきました。これは新たなユーザーの獲得と同時に、カジュアルゲームからステップアップしようとする既存ユーザーの受け皿でもありました。しかしその結果として、カジュアルユーザーと本格志向ユーザーの価値が混在し、コミュニティが混沌とする状況になりました。

そこで今年7月、ハンゲームはカジュアルゲームと本格志向ゲームのポータルサイトを分離し、異なる価値観を明確化しました。こうしたハンゲームの戦略は日本のオンラインゲーム市場の急速な成長を裏打ちするものであり、その市場の要望を適えるために韓国産タイトルが重要な意味を持っています。

●「タイトルを売りに来たのではない」韓国ゲーム産業の投資家向けプレゼンテーション

続いて、韓国のゲームメーカー5社のプレゼンテーションが行われました。このプレゼンテーションは会社への出資を呼びかけるもので、ゲームタイトルのライセンス販売の商談会ではありません。したがって、発表の内容は企業の紹介、人材、業績見通し、投資された資金の用途などが中心でした。ゲームに直接関係する内容ではありません。しかし、業績の見通し、事業計画のなかには今後展開する予定のゲームも紹介されています。その一部を紹介しましょう。

◆イニアム
「クレヨンしんちゃん」のキャラクターを採用したオンライン教育ソフトで知られている会社です。「クレヨンしんちゃん教室」は韓国で2005年からサービスが始まっており、日本ではDGコミュニケーションズ社と提携した「edu904.com」が2007年8月から開始されています。イニアム社は現在開発中の3DコミカルRPG「MayPan」の日本サービス開始に伴い、サービスのためのリソース資金、国内マーケティング費用、他国への輸出拡大用のための資金を必要としています」。

(左)イニアム 代表取締役社長 Yo-Chul Choi氏
(右)「クレヨンしんちゃん」は今年8月から日本でもスタート


◆ワイズオン
オンライン・クイズゲーム「Max Quiz」が韓国で人気となっている会社です。「熱戦クイズ王」はテレビ好きの人のための放送タイアップクイズです。ドラマのコンセプト、ニュース、芸能、教養など、テレビ番組の放送後すぐに、そのテレビ番組に関連したクイズを楽しめます。しかしワイズオンの世界展開はクイズではありません。MORPGの要素を取り入れてFPS「Dorothy(仮称)」や、ハイスピードFPSの「Metal Jacjket」、ランニングゲーム「FreeJack(仮称)」です。
とくにFreeJackに力を入れています。コンゴのヤマカシという競技にヒントを得た都市型の徒競走です。都市の構造物を駆使して走り回るという爽快なゲームです。世界各国の都市をモチーフとしたマップを用意しています。日本マップとして「渋谷」を検討中です。

(左)ワイズオン 本部長 Sung-ho Zo氏
(中)"ヤマカシ"アクションの「フリージャック」
(右)日本をモチーフにしたマップも登場予定


◆エヌログソフト
確かな技術力を強みとして、早期から世界展開を進めている会社が、いよいよ日本市場に進出します。北米地域で展開しているBOUTという3D変身ロボットアクションゲームが好調です。日本ではBOUTの続編「BM07(仮称)」をリリースする予定です。すでにCDC JAPAN社と契約完了しており、2008年秋にサービスを開始する予定です。
エヌログソフトの強みは独自のゲーム内広告配信システムを持っていることです。現在、シンガポールと北米でテスト中の「DARKNESS AND LIGHT」は、ステータスパネル中央が広告になります。ゲーム中は表示されませんが、プレイヤーキャラクターが倒れ、再出撃するまでの間に、プレーヤーのステータス表示部分が広告になります。広告部分についてはマイクロソフトグループのゲーム内広告会社「マッシブ」と提携しています。

(左)エヌログソフト 代表取締役社長 Lok-Yoon Kim氏
(中)日本で展開予定のゲーム「BM07」を披露
(右)ゲーム内広告の掲出位置はキャラクターのステータス部分


◆ブルーサイド
Xbox用ゲーム『Kingdom Under Fire』シリーズのエンジン部分を開発し、日本ではXbox360の「NINETY-NINE NIGHTS」のプログラムとエンジン開発を担当した会社として有名です。同社は『Kingdom Under Fire』シリーズの続編として、Xbox360/Windows/Nintendo DSのタイトルを2種類開発しています。どちらもオンライン機能を重視しており、事業拡大のための投資を必要としています。韓国の企業ですが、その市場ははじめから世界を向いています。

(左)ブルーサイド 理事 Daniel E.J.Koo氏
(右)さまざまなゲームで重要部分の開発を担当した


◆ジェイシー・エンタテインメント ジェイシー・グローバル
日本でも大人気となったバスケットボールゲーム「フリースタイル」の開発元です。現在開発中のゲームはカジュアルなフライトアクションゲーム「Aeronauts」です。「フリースタイル」ではさまざまな有料アイテムが登場しましたが、「Aeronauts」も同様に、アイテムで自分の飛行機をパワーアップしていきます。フライトシューティングゲームをカジュアル化するという試みがユニークです。もうひとつ、10代のユーザーをターゲットとした「Ghost X」も開発中です。ソウルのビルから妖怪たちがあふれ出すという物語です。
ジェイシー・グローバルは日本法人です。しかしその業務はジェイシー・エンタテインメントの作品のプロデュースだけではありません。開発パートナーと共同で新しいコンテンツを開発、運営するなど、幅広い業務を手がけます。そのための出資パートナーを必要としています。
(左)ジェイシー・エンタテインメント 代表取締役 Cheol-Ho Shin氏
(右)多角化とグローバル展開を推進する


●ショウの小間の受身から攻めに転じた

韓国ゲーム産業投資説明会は東京ゲームショウの前日に行われました。韓国のゲーム産業は例年のゲームショウでは小さなブースを並べており、あまり目立たず、商談に訪れる人も少なかったような気がします。しかし、このように証券会社が手助けし、落ち着いた場所で説明会や商談ができるといスタイルは、ゲームショウのブースで待っているよりも積極的で確実な気がしました。ゲームに投資する人は必ずしもゲーム好きではなく、そうした投資家はゲームショウの雰囲気に馴染みにくいかもしれません。韓国ゲーム産業の攻めの姿勢を感じさせる説明会でした。

《杉山淳一》

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