【イベント】先端技術を使ったバーチャリアリティが集結―IVRC東京予選大会

あいにくの小雨模様となった9月29日・30日、日本科学未来館で国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC)の東京予選大会が開催された。今年で15回目を迎える本大会は、バーチャルリアリティやロボットなどの、先端技術を用いたバーチャルリアリティコンテストで、学生の手作り感覚あふれる作品が激突するのが特徴だ。

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【イベント】先端技術を使ったバーチャリアリティが集結―IVRC東京予選大会
【イベント】先端技術を使ったバーチャリアリティが集結―IVRC東京予選大会 全 28 枚 拡大写真


No.06 Heaven’s Mirror(神様用鏡で遊んでみませんか?)
(Stamwoo/東京工業大学大学院)

鏡の世界とインタラクションできるという作品。2つの作品に分かれており、1点目では鏡の下に木片などを置き、スイッチを押しながら鏡を左右に回していくと、次第に負荷が加わっていく。一点を超えると「ポキン」という音と共に、フッと負荷がゼロになって、木片が折れた時の感触が味わえる。2点目では鏡の前に鉄の棒などを置き、鏡を前後に回転させると、鏡像の傾きに応じて棒が前後に移動する。当初はボールジョイントを用いて鏡を前後左右に動かし、1つにまとめる予定だったが、複雑になりすぎるとして、2つに分けられた。また鏡を前後に動かして、拡大縮小のギミックも取り込む予定だったが、こちらも省略。鏡を効果的に用いて、CGを使用していない点がユニークだ。

現実と鏡の世界が繋がるような感覚がおもしろい


No.07 かげくり
(2.5D/岐阜大学)

「かげかみさま」と同じく、影とインタラクションすることがテーマの作品。スクリーン上に映る自分の影を使って、爆弾を爆発させたり、サイケ調の影の動きを楽しんだりできる。鑑賞者の向きも左右4段階で検知しており、背後を向いている間に蜘蛛やオバケを表示しておき、これらを退治するといった遊びも可能だ。PS2の「EyeToy」などのように、カメラによる画像認識ではなく、体験者の背後から赤外線の照射を行い、スクリーン上に映る影をセンサーで認識して、PCでアプリケーション上のオブジェクトと合成し、当たり判定を行う仕組みだ。現在は影を直接表示させるだけに留まっているが、影が勝手に動くなど、もっと影を生き物っぽく活用したいと話していた。

赤外線に反射するテープを背中にはったベストを着て前後を認識する


No.08 HAPPA!!
(中トロ/電気通信大学 知能機械工学科 松野・長谷川研究室)

「花咲かじいさん」のように、植物とインタラクションできる作品。葉っぱ状のコントローラーを木の前で上下に振ると、枝から泡がぶくぶくと発生して、枝を覆い隠していく。プロジェクターからの投影で泡が緑に色づき、葉に見立てるという仕組みだ。泡が増えるにつれて、葉の先端に重りとモーターが移動していき、葉を振るのが重たく感じられていく。このように植物の生長を目だけでなく、重さとしても感じられる点がミソだ。泡の発生には木の下に設置されたコンプレッサーを使っており、最後に「魔法のクスリ」(アルコール)で泡をシュシュッと消して終了となる。今は青葉だけだが、紅葉など春夏秋冬を体験できるように改良したいとのことだった。

葉からの情報はワイアレスでPCに送られる仕組みだ


No.09 風景バーテンダー
(酒豪/北陸先端科学技術大学院大学 宮田研究室)

カクテルを作るように、「風景の素」となる液体をシェーカーに入れてシェイクすると、CGの風景が作成できるユニークな作品。各ボトルには水が入っており、質量の変化とボトルを置く位置で、どの「風景の素」がどれだけ使われたか検知する。シェーカーには加速度センサーが入っており、縦横の動きを検知してワイヤレスでPCに転送。材料の組み合わせと割合、そしてシェーカーの動きで風景が自動生成される仕組みだ。完成した風景には多少の補正がかかっており、自動生成にもかかわらず見栄えのする映像になっている。ボトルやラベル、バーカウンター、衣装などの雰囲気作りにもこだわった。今後は季節感も採り入れるなど、さらに風景の向上を追求したいと話していた。

スクリーンについても、大型化して見せ方を工夫したいとのこと


No.10 ムーミのいる部屋
(zsh/IAMAS)

壁の上をミラーボールの光が回るように、さまざまな映像が表示されるのを鑑賞するという作品。映写部分には可動鏡を用いたマルチプロジェクションシステムが利用されており、縦横4個ずつ、計16個の可動鏡から、異なる映像を壁に照射して、独自に動かせる。壁の上を魚が回遊したり、時計の針がカチカチと動くように月が周回したり、青いブロックのシャワーが高速に移動したり、といったコンテンツが用意されている。可動鏡は個々に交換が可能で、設計から完成まで1年半をかけ、完成までに都合3回の改良を重ねた。「ムーミ」とは文化的遺伝子「ミーム」の逆さ言葉で、空間上を漂う生命体という意味が込められている。

(左)計16個の映像が自由自在に壁の周りを踊る
(中)プロジェクション部分。モーターの音が意外とうるさいのが玉に瑕だ
(右)プロジェクションの個体。ラジコン用のサーボが2基、搭載されている


以上が団体部門の作品紹介だ。一口にバーチャルリアリティといっても、蟻があったり、トランポリンがあったり、鏡を使ったり、舌で舐められたりと、多種多様であることがわかる。CGをまったく使っていない作品が3作品、影を用いた作品が2作品あったのもユニークだった。バーチャルリアリティのイメージにつきものの、ヘッドマウントディスプレイやバーチャルグローブなどは、ほんの一分野でしかないというわけだ。テレビゲームでもWiiが人気を集めているが、もっとヘンテコなWiiリモコンの使い方を期待したいところ。テレビを使わないWiiゲームなどは実現不可能なのだろうか?

ちなみに個人的にはトランポリンとバーチャルリアリティを組み合わせた「HOP AMP」が、完成度の点で抜け出ている印象を受けた。PC部分を小型化できれば、家庭向けに商品化したり、スポーツクラブなどに設置できそうな雰囲気だ。また、トランポリンの揺れとCGがスムーズに連動するのにも驚かされたが、これにはリアルタイムレンダリングではなく、あらかじめ300枚のCGを用意しておき、高さに応じて表示しているだけの「疑似3D」を採用したからとのこと。技術に溺れない姿勢がスマートだ。

■個人部門とインタラクティブ東京の作品群


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《小野憲史》

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