梶塚氏は、仮想セカイへの発展が高まるという調査結果とユーザーの動向などを紹介しました。認知度が高い割には利用者が少なく、ビジネス利用よりもコミュニケーションを目的とした人が多い。ITリテラシーの高い人ほど普及に懐疑的で、利用率は低くなっているそうです。こうした調査を踏まえて、「日本初の仮想セカイ『スプリューム』は"オープンエンド"です」と梶塚氏は紹介しました。
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オープンエンドとは、スプリューム社の許諾なしに仮想空間を配信できるというしくみです。空間データはスクリプトを記述したテキストファイルやテクスチャーの画像ファイルとして、Webサーバ上に設置されます。空間の設置は企業でも個人でも可能で、ISPがユーザー用ホームページとして提供するスペースも使用できます。その空間を利用するアバターはスプリューム社のサーバで管理します。プレイヤーは専用ブラウザーやプラグインを起動し、アバターサーバからキャラクターを呼び出し、URLで空間を呼び出して、自分のコンピュータで合成させます。
空間が個々のサーバに分散すると、小さな仮想空間ばかりになってしまいそうです。これを解決し、大きな仮想空間を作る仕組みが用意されています。それが『空間リンク』です。スプリュームでは、扉や道路の端などに別の空間へのリンクを設定できます。そして、Webページのリンクのように、リンクを経由することでどこまでも遠くへ辿っていけるわけです。アバター側から見ると、今存在する空間からリンク先の空間が可視化されているため、サーバーを移動したことすら気付かずに移動できます。他のアバターとのチャットも可能です。空間の境界線を介したチャットもできます。
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スプリュームでは、アバターをHUBと呼んでいます。プレイヤーはHUBをひとつだけ持ちますが、アバターの外観やプロフィール、動作、機能などは複数を保有できます。そして、必要に応じて外観やプロフィール、機能などを選択してHUBを作るわけです。スペックの低いコンピュータでも利用できるようにするため、HUBのモデルは手足がボディから離れているなど簡略化されています。そのため、リアルな人間型のアバターよりも、コミカルなアニメ調のアバターがデザインされています。「動物型のアバターを使うと、卑屈な気持ちになる人が多いようです」と、梶塚氏は意外な心理分析も披露しました。
スプリュームは2007年3月からオープンベータサービスが始まっており、企業とのタイアップもいくつか成功させています。梶塚氏からは都内で配布されているフリーペーパー『R25』の創刊4周年企画や、マイクロソフトのイベント『REMIX07』と連動した事例が紹介されました。今後はコミュニケーション機能を強化したブラウザやIE用プラグインのバージョンアップ、モバイル用ブラウザ、ゲームプラットフォームの新規開発に着手する予定とのことです。
単なる仮想セカイだけではなく、アバター同士をつなぐ3Dソーシャルメディアとしての可能性もあるというスプリューム。今後の展開に注目したいところです。
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■仮想空間の成功の鍵は"擬似同期性"にあり 日本技芸 リサーチャー 濱野智史氏