プログラマなら計算はコンピュータにやらせましょう!? 「ゲーム開発における数学」レポート

IGDA日本は、ゲームテクノロジSIGの第9回セミナー「ゲーム開発における数学」を開催しました。講師はハイパーコンテンツの長久勝氏と、オー・エル・エム・デジタルの安生健一氏。アルゴリズムはもともと数学の概念ではありますが、普段は縁遠い、あるいは敷居が高いと考えられているのではないでしょうか。長久氏からはゲームプログラマならではの「数学」の敷居の下げ方が紹介されたほか、安生氏からはグラフィックス処理での数学利用が実例をまじえつつ紹介されました。

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プログラマなら計算はコンピュータにやらせましょう!? 「ゲーム開発における数学」レポート
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IGDA日本は、ゲームテクノロジSIGの第9回セミナー「ゲーム開発における数学」を開催しました。講師はハイパーコンテンツの長久勝氏と、オー・エル・エム・デジタルの安生健一氏。アルゴリズムはもともと数学の概念ではありますが、普段は縁遠い、あるいは敷居が高いと考えられているのではないでしょうか。長久氏からはゲームプログラマならではの「数学」の敷居の下げ方が紹介されたほか、安生氏からはグラフィックス処理での数学利用が実例をまじえつつ紹介されました。



専門学校でゲーム開発者を目指す学生に数学を教えた経験を持つ長久氏は、シューティングゲームの移動処理(メインループでフレームごとに位置座標を変化させる)が微分方程式を解くのと同じように扱えることなどを例に、「(ゲームプログラマが)ふだんやっていることが数学だ」と説明し、プログラムを書ければ「数学」を実用的に使用できることを紹介。代数的に解を求める方法(いわゆる解の公式のたぐい)でなくても、コンピュータにループ処理させ数値解析的に近似解を求めることができることなどを挙げ、ゲームでは近似解で十分なことも多く、さまざまな応用数学を「ライブラリ」的に利用しながら、ライブラリのソースが読みたいときがあるように、数学もその「ライブラリ」の中を理解したいときに持ち出せばよいとしています。

安生氏は、「グラフィックス対話処理技術の数学的基礎」との題で、ポケモンなどOLMのアニメーション制作工程で使用されるツールにおける数学について講演をおこないました。トゥーンシェーディングにおいて「アニメ的な影」を実現するためのツール(レンダリングされたキーフレームの映像に、ブラシツールで塗るように指示するだけで、3Dアニメーションに特定の影をつけたり消したりできる)を例に、指定領域周辺の輝度情報の補間や、前後のフレームの補間に使用しているRBF(Radial Basis Function / 補間精度の高い計算手法)について紹介しました。



講演の後おこなわれたパネルディスカッションでは「どのように数学を学べばいいのか」という問いに、安生氏は「CGをきっかけに数学が面白くなった人は多い。数学が嫌いとか考えず、やりたいことをやっていく中で、数学が必要という局面が来たときにやればよい」と答えています。また、バンダイナムコゲームスの馬場哲治氏は、「目の前の現象を解いて定式化していったものが数学だが、現代では(定式化した後の)数学だけを教わる。なぜその数学が必要になったか、解きたかった現象と、その解き方の両方を知ったら面白くなる」として、教え方への工夫があればより数学への興味が高まるのではないかと指摘しました。

数学というと、筆者は専門にやってこなかったこともあり、「公式」が覚えられない、あるいは、難しい記号が並んでちんぷんかんぷんというイメージがどうしても強いのですが、長久氏の指摘するように数値解析的に近似解を求めることも可能でしょう(初期値に鋭敏に反応するカオス理論など、一部の分野は別か)。また、安生氏の講演は、いくつかの値から補間したいときに、単純な補間の品質では満足できないので、より精度の高い補間を求めてRBFを導入したという事例でしょう。ゲーム構成要素のうち、3Dグラフィックスや物理シミュレーション、AIといったさまざまな部分で数学が使用されるようになっています。ツールの引き出しとして、あるいは自分の書いた処理の数学的な意味の認識を含め、今後、ゲーム開発のより広い部分で数学への理解が求められることになりそうです。

《伊藤雅俊》

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