公道を舞台としたレースゲームで、市販車も数多く登場する本作は、自動車好きには見逃せないタイトルです。原作コミックを読んだ人、アニメを観た人だけではなく、ストリートチューンドカーのファンにも興味深いゲームです。今回はセガで『頭文字D』シリーズを統括する新井健二氏、PS3版のプロデューサー藤本光伯氏、同ディレクター阪本寛之氏に魅力を語ってもらいました。
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PS3版はアーケード版プラスアルファの出来
アーケードゲーム版の『頭文字D 』シリーズは2000年に第一弾が登場し、現在は第4作のマイナーチェンジ版『頭文字D ARCADE STAGE 4 改』が最新作。原作の頭文字Dは香港のスタッフの手で映画化されるなど、日本のみならずアジア圏でも人気があるタイトルで、アーケードゲーム版もアジア圏で親しまれています。アーケード筐体の出荷は日本国内が約5000台で大ヒット。アジア各国では合計約1800台が稼働しています。これはそのままPS3版の商圏と位置づけられそうです。PS3版の『頭文字D EXTREME STAGE 』は『4改』の移植版。総額約150万円のアーケード筐体用のゲームを数万円以下のPS3に移植。その完成度は気になるところです。
「グラフィックのデータなどはすべて同じです。クルマの挙動もアーケード版とPS3版にほとんど差はありません。もちろんアーケード機とPS3ではプロセッサも基盤の構成もすべて違いますから、まったく同じとは言えません。そしてどちらのハードが優れているか、という問題でもないんです。それぞれのハードは得意な部分が違う。例を挙げるとローディングですね。ストーリー部分の場面が変わるときの処理は、ちょっとだけアーケードの方が速いです。差がハッキリ解る部分を敢えて上げるとそれくらいです(阪本氏)」。
ハードウェアの設計思想が違いから、同じゲームを作るにしてもソースコードの部分から異なっています。しかし作る過程の微妙な差異はあっても、結果としては同じ仕上がりになったそうです。
「当初はアーケードの4のデータを元に作っていました。製品にする最終の過程で4改のデータに入れ替えたんです。だからクルマの挙動はPS3もアーケードもまったく一緒です。ハードの違いのせいで引き算している部分はあるんですけれど、ほんのわずかです。しかも、まず見破れないだろうというレベルまで作り込みました。その上で、ネットワーク対戦に対応しているとか、毎回100円使わないで楽しめるとか、PS3のプラスの部分が足し算されているんです(藤本氏)」
それを証明してくれたのはアーケード版、PS3版それぞれのプレーヤーです。「素材も質も違います。でも、演算処理は一緒なんですよ。ちなみにアーケード版の秋名コースの全国一位のタイムと、PS3版の全国一位のタイムがほぼ同じなんです。どちらも同じ人じゃないかって話もあるんですが(笑)。攻め方からライン撮り、最高速度への到達タイムまでほとんど同じ(新井氏)」。同じコース、同じクルマ。完全移植なら攻め方の定石も同じ。タイムは酷似していきます。
あえてタイムが変わる要素と言えばコントローラでしょうか。「PS3コントローラでも遊べるように作ってありますが、もっと楽しもう、と思ったらステアリングコントローラを使ってください。これはクルマゲームの宿命だと思います(藤本氏)」
開発者からみてオススメのハンドルコントローラは、ロジクールのDriving Force GTだそうです。
「Driving Force GTはいいですね。アジャストダイヤルには対応していませんが、ハンドル径も大きいし、値段の割りには良くできています(阪本氏)」
「G25 Racing Wheelもいいけど、高いですね(藤本氏)」
それでもアーケード版の剛性感に比べると取付け剛性もフォースフィードバックのゴリゴリ感も物足りないと感じる面もあります。
「それは仕方がないですよ(笑)150万の筐体と比べるのは無理があります。アーケード版にはこーんな大きくて重いモーターを使っているのですよ。リッチなステアリングコントローラーでプレイしたくなったらゲームセンターに来てください(新井氏)」
ドライブシミュレーターではなく『頭文字D』らしさにこだわる