【CEDEC 2008】ゲーム開発のためのプロシージャル技術の応用

CEDEC初日14:50から「ゲーム開発のためのプロシージャる技術の応用」と題したセッションが行われました。

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【CEDEC 2008】ゲーム開発のためのプロシージャル技術の応用
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CEDEC初日14:50から「ゲーム開発のためのプロシージャる技術の応用」と題したセッションが行われました。

このセッションではフロム・ソフトウェア技術部の三宅陽一郎氏が登壇し、ゲームにおけるプロシージャル技術についての使用例を解説していました。

これから注目される技術に多くの聴衆が


プロシージャルとは、演算処理によるデータを生成していくというもので、講演中にも挙げられていましたが『不思議なダンジョン』シリーズや『Rogue』などに実装されているダンジョンの自動生成機能や、植物や生物の成長を自動的に行うといった技術になります。

また昨今では、会話自動生成やアニメーションなどでも使われています。

現在のゲーム制作では、プログラマひとつにたとえたとしてもデータ、ツール、ゲームなどなど担当分野の細分化が進み、ミドルウェアや自社ツール用いてツールチェーンを構成してコンテンツパイプラインに膨大なデータを作成して、これをプログラムで回すといった内容になっていると三宅氏は述べていますが、今の課題として拡大していくゲーム開発に対して、ゲームデータを生成する部分は人の手を使って作るものもあるが、自動生成していくというものをプロシージャルを使うという手法が挙げられていました。

また、PLAYSTATION3やXbox 360など、ゲーム開発の規模が大きくなるほど、コンピューティングよりもデータ生成が必要とされる中で、マンパワーが必要になった場合、巨額の開発費が必要になってしまうという問題が発生します。プロシージャルは、そういった投資以外の部分でも活用できるとのことです。



たとえばデジタル空間で草原を作りなさいといった場合、人の手によってモデリングを行うよりも、たくさんの演算によってモデルを生成するのをプロシージャルコンテンツジェネレーション(PCG)と呼び、欧米の開発では現在注目を集めているといった内容が語られていました。

プロシージャルは、計算による連続した動作が主になりますが、デジタル系では連続操作による自律的な力も持っており、折れた木の枝から新しい枝が生えてくるようなオートジェネレーションを焦点に当てるといったことも可能だそうです。

ゲーム開発の仕組みがプロシージャルによってどう変わるかという部分では、今までマンパワーとツールを介してデータを作成していた部分が、自動生成で補えるとうい流れもあり、プロシージャルはゲームにおいてデータ生成とデータを駆動する力を与えてくれ、かつコストダウンが可能になっているという利点があるそうです。

三宅氏は例として実際に使われている作品を紹介した中には、「Far Cry2」のCryEngine 2.0や、UbisoftのDunia Engine、次世代「Battlefield」エンジンのfrostbiteなどが挙げられていました。



CryEngine 2.0は、EAから発売されている「Crysis」で使用されており、植物などのアニメーションをプロシージャルのアニメーション技術により自動生成しています。

Dunia Engineは、Ubiから2008年発売予定の「FAR CRY2」で使用されており、登場するステージには50km四方のマップが用意されていますが、これらをデザイナーたちがマンパワーで作成すると膨大な量になるため、プロシージャル技術を利用して生成しているそうです。

また、ハードウェアから見たプロシージャルでは、CPUベンダーであるAMDやIntelも行っており、彼らからは次のコンピューティングの観点ではプロシージャルを捉えているといった内容が語られました。

AI部分での話題では、一体のAIを操作する場合は、それぞれの動作を手動で設定するほうが早いといったこともありますが、昨今の肥大化するゲーム世界の中で、たとえば20体のAIを動かすといった場合は、プロシージャルを利用したほうがよいそうです。

三宅氏の話では、プロシージャル技術はゲーム開発技術を根底からゆっくり変えてきているとのことで、最近北米などではトレンドになりつつあるといった内容も語られていました。

ゲームには、明示的なルールと暗黙的なルールのふたつがあり、明示的なルールはボタンを押せばジャンプするといった説明書に記載されているもので、暗黙的なルールにはジャンプすれば落下もするといったものです。

プロシージャルはこの暗黙的なルールが多く、ゲームには物理法則などが導入されてきたが、これらもまたプロシージャルであったり、オンラインゲームにおける経済や社会法則などもプロシージャルであるといいます。また、これらはゲームの中の世界をより豊かにしていくことが可能だということです。



プロシージャルをどこに利用するかといった部分で、三宅氏は今後発生するであろう膨大になったレベルデザインや、AI、ユーザーアクション、ユーザーアクションを補完する機能としての利用や、ゲームの進行状況などを判断させるといった方法などプロシージャル技術なしではありえなかったユーザー体験を提供できるといった提案をしています。

例としてプロシージャルを使ったアニメーション部分に焦点が当てられ『Crysis』では、樹木が例に挙げられており、樹木に対していくつかの風源の効果を足し、風力によるベクトル計算を行って木を曲げるといったことが行われているそうです。

また、状態空間というという部分であれば、たとえば将棋は10の171乗の状態空間が発生するといった内容もあり、なぜ将棋や囲碁のAIをどう作るかといったが研究の対象になっているのかといった内容も紹介されています。

また、ゲーム部分でのレベルデザインのスケールは年々拡大しており、同時に状態空間も格段に増しているといった内容が挙げられていました。



たとえば、ゲーム世界に適応したAIを作りたいといった場合、物を売るといったイベントに対応した行動をするAIを作るのは簡単ですが、さらに強盗に襲われた時の対処など、今世代機からはこのような状態数の爆発的に増大しており、すべての状態空間に伴いプロシージャルというアプローチがあるのではないかといった話がされています。

スケーリングが大きくなった状態空間に対して、プロシージャルによって起こった状況に対して行動を生成するといった方法がトレンドになりそうです。

ユーザーアクションに対応している例として、先日発売された『Spore』が挙げられており、プロシージャル・ユーザー・アクションの例として、「Spore Creature Creater」による解説が行われました。

ユーザーから見た『Creature Creater』は、パーツをドラッグ&ドロップして、クリーチャーを生成していきますが、パーツごとの接点を結合させていくというシンプルなものになっています。

内部的な処理の話になりますが、各パーツには制御ポイントと呼ばれるものが、あらかじめデザイナーにより設定されており、テクスチャを選択すると自分のモデルに応じたテクスチャをモデリングしてくれるといったことや、モデルを作成した後、様々なアニメーションを行うといった動作については、パーツごとに設定されたアニメーションと作成されたクリーチャーのモデルをマッチングさせて行っているとのことで、これらのミキシングにより、違和感なくアニメーションが設定されていくといった内容が説明され、ユーザーから見れば少ない労力で、膨大なデータを作成できるプロシージャル技術が使われているといった内容が語られていました。

こういった苦労をして作ったプロシージャル技術は、ユーザーから意識されずに使われているため、少しの動作で高度なデータを作成できる部分がSporeの高度な部分だという話もされています。

またセッションの中では、AIを集団として進化させ、遺伝子を設定し、この中から優良種を掛け合わせ進化した次世代を生成、このサイクルを繰り返す世代を進めて望ましい集団を生み出していくといったものや、シューティングゲームに同技術を用いて、地形のテクスチャや敵キャラクターの自動生成を行ったデモプログラムが公開されました。

「これらの技術をゲームにどう応用していくかは、ゲーム開発者やゲームをよく知った人材がプロシージャル技術を繋いでくれると思います」と語っています。

最期に三宅氏は、「プロシージャル技術というのは大企業がお金をかけて作っているゲームから、4人くらいで作成したインディーズゲームなどでも広い範囲で使用されています。各企業ごとにそれぞれに合ったプロシージャル技術を使用するチャンスもありますし、動的なダイナミックス、ゲームに命を吹き込むことも可能です。様々なプロシージャル技術を検討して新しいゲームを作ってくれればと思います。」といった結論で講演を終了しました。

《鬼頭世浪》

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