【オンラインゲーム一週間】大統領選とオンラインゲーム機

2008年も、もう11月。アメリカでは長かった大統領選も終わり、ネットやゲームと選挙の関わりについて様々な可能性が生まれました。

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2008年も、もう11月。アメリカでは長かった大統領選も終わり、ネットやゲームと選挙の関わりについて様々な可能性が生まれました。

米マイクロソフトは、若年層の投票率向上を目的としたNPO「Rock the Vote」と提携し、Xbox Live上で世論調査を行うと同時にオンラインでの選挙人登録を可能としました。この時の結果は43%の支持率を獲得したオバマ氏の圧勝。米マイクロソフトによると、10月の時点で5万5千人以上の人が選挙人登録の書類をダウンロードしたとのことです。

大統領選に勝利したオバマ氏陣営ですが、レースゲーム『バーンアウト パラダイス』内にゲーム内広告を出したのに加え、10月末には「ソファーに座っていては何も変えられない、Wiiリモコンは家に置いて、共に歴史を変えよう」と呼びかけるなど、ゲームを巧みにイメージ戦略に組み込んでいたのが印象的です。
大統領候補がゲーム内に広告を出すのは初の試みですし、娯楽の象徴としてTVのリモコンではなくWiiリモコンを持ってくるのも時代を掴んでいます。変革を旗印とするだけに、オバマ氏のイメージ戦略は実にきめ細かかったことが分かります。

これらの例を見ても分かるように、今やゲームは「若者が集う場所」の象徴となっています。これまで子供の娯楽とされてきたゲームが選挙に関係する日が来るとは誰が想像できたでしょうか。変化はもの凄い速度で進んでいるのです。
「シリアスゲーム」として教育や医療分野でのゲームの応用が試みられる昨今ですが、このような政治とゲームの関わりがもっともっと増えていくのではないでしょうか。

選挙とゲームが手を取り合った感のあるアメリカ大統領選ですが、日本でも解散総選挙が迫っています。日本では娯楽と選挙は切り離されて考えられるため、先に挙げたような試みはまず行われないでしょう。これは風土の違いなので、アメリカが進歩的で日本が後進的とは一概に言えない部分があります。ただ、現代のゲーム機はオンライン化されたことでメッセージを随時受信できるようになっています。これを選挙に活かさないというのは少々勿体ないのではないでしょうか。
アメリカと同様、日本も若年層の投票率が低下しています。
選挙権を持ちながら行使しないこれらの層を取り込むことができるのであれば、大きな力となるのではないでしょうか。
とはいえ、メッセージの送り方は大きな課題となります。
日本ではニコニコ動画に政党がチャンネルを作るといった試みが行われていますが、ゲーム機を選挙に取り込むのであれば、ゲーム機なりのやり方が必要になることでしょう。
ゲーム機をオンラインに繋ぐたびに、長ったらしくて重いムービーを見せられたりするのでは逆効果です。最も重要になるのは政策であり、「何に投票するのか」を明確にしなければなりません。
若年層の多くは、自分たちが蔑ろにされていると感じるからこそ選挙権を行使しないのです。そこを解決せぬままにゲーム機を使っても、それは「若者が集う場所」を侵す侵入者にしかならないでしょう。若年層を単純に票の集まりとしかみなさないのであれば、そうした意図は一瞬にして見破られ、政治不信は更に深くなることでしょう。
もしも将来、日本で選挙とゲーム機が関わるのであれば、一方的に投票のみを訴えるのではなく、「何に投票するのか」をスマートなやり方で伝える、そんな手法であることを切に望みたいところです。

《水口真》

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