■宮本氏の開発手法の秘密とは
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宮本茂 専務取締役 情報開発本部長 |
宮本氏の最も優れているのは「他人が分からない機会を探れる、その機会を最大化できる」点であると岩田氏は述べます。宮本氏は多くの人から人気を集めているものを常に観察し、その中で、何が本質的に面白くて人々を魅了するのかを絶えず思考しているそうです。
そうした中から、宮本氏も実践し、趣味としながらゲームになった事例は、言わずと知れた『ピクミン』(庭いじりから)、『Nintendogs』(犬を飼い始めた)、『Wii Fit』(健康に気をつかうようになった)といったもので、岩田氏は宮本氏がインタビューを受ける際には「趣味や最近気になる話題には触れないように注意する」と話して会場の笑いを誘っていました。ちなみに今、宮本氏が気にしているのは「24」のシーズン7だということです。
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宮本氏の趣味がゲームに |
宮本氏の秘密はここからです。宮本氏の「正のスパイラル」はこうです。
・アイデアはどこにでもある
・個人的な(限られた)コミュニケーション
・プロトタイプステージ
・小規模チーム
・複数のプロジェクト
・トライアル&エラー
・本制作ステージ
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宮本氏の手法とは |
宮本氏の開発手法として特徴的なのは、アイデアをごく小規模なチームで試作し、それを複数同時並行的に動かして、コアな楽しさを固められたものを、実際の制作ステージに持っていくというものです。実験的なチームは多くが1人や2人といった規模ですが、期間は切られず、中にはプロトタイプ作りで2年にも及ぶ場合もあるそうです。当然、お蔵入りになるものも数多くありますが、宮本氏は必ずいつかは引っ張り出してきてまたトライするそうです。そうして実際のゲームになったものも多くあり、岩田氏は「宮本氏がチームの皆から尊敬される一つの理由ではないか」と話していました。
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『Wii Sports』ボクシングの試作画面 |
この手法の良い点は、実際の制作段階に入る前にゲームプレイの楽しさを明確に固めているので、最終的なプロダクトが想像しやすいのと、開発期間が読みやすい点です。発売延期が減ったのもこうした理由が考えられます。大所帯で試行錯誤する必要がないので開発コストの削減にも繋がります。
逆に宮本氏の構想の段階から、最後の製品が完成するまでの期間が読めず「社長としては精神的につらい」と岩田氏は笑っていました。『Nintendogs』はDSの、『マリオギャラクシー』はWiiのロンチに欲しかったという話もありました。
次のスライドに会場は爆笑でした。
■宮本氏、人をさらう