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満員の会場 | ピーター・モリニュー氏 |
大きな拍手で迎えられたモリニュー氏は「ライオンヘッドはイノベーションのための会社で、それを望む開発者が集まっている」と切り出し、「ゲームユーザーもイノベーションを望んでいて、それが成功のカギになる」と話しました。しかし、イノベーションは非常にリスキーです。『BLACK & WHITE』の頃は30人程度のチームで、革新的なアイデアに挑戦するのはまだ比較的容易でした。しかし、近年モリニュー氏が手がけた『FABLE』のような100人を超えるようなプロジェクトでは、それは非常に困難なこととなります。
そこでライオンヘッドが行っているのは「Experiments」という手法です。これは1〜12週程度のごく短期間のプロジェクトで、1〜5人程度の少人数で、革新的なアイデアに挑戦するものです。大体はプロジェクトを終わってフリーになったゲームデザイナーが始めます。イノベーションへの挑戦をゲームの本制作の過程から切り離し、小規模かつ短期に行うことで、リスクを低減する手法と言えます。
「Experiments」はどのメンバーも提案可能で、必ずサポートしてくれるシニアメンバーを見つける必要があります。シニアメンバーはクリエイティブボードに提案し承認を受ける必要があります。そして通常のプロジェクトと同様にスケジュールがあり、適宜マイルストーンやチェックポイントを設定する必要があります。開発コストは社内のCenter Technology Groupと呼ばれるグループが持ち、過去のプロジェクトの利益から捻出されるようです(「たとえば『FABLE』の、、、いやあれは使いすぎてもう残ってないんだっけ」との下りに会場は笑いが起きてました)。
このような実験的なプロジェクトでは過去のアセットを使い回して効率的に行うことが重要で、ライオンヘッドでは非常に使いやすいプロトタイプ用のゲームエンジンが用意されているほか、過去のゲームのエンジンを流用する場合もあるようです。「コンクリート」というフレームワークがあり、過去のゲームのアセットから使い回せる仕組みがあるようです。
「Experiments」が上手くいけばゲームに導入されたり、それに基づいたゲームの開発へと進む方向があります。最後のモリニュー氏は「Experiments」から生まれた幾つかの興味深いアイデアを紹介してくれました。
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「Prodog」は『Fable 2』に導入された例 | リアルです | 多数のキャラの表現 |
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ビジュアル表現のデモ | 1つのボタンで遊べる格闘ゲームのアイデア | 部屋でUCG的体験のできる「THE ROOM」 |
近年のゲーム開発は肥大化していて、その一方で求められるものは多くなっています。モリニュー氏が紹介したライオンヘッドの取り組みは、奇しくも先日の基調講演で岩田氏が明らかにした宮本茂氏がごく小規模なメンバーで様々な実験を行い、そこで成功したものを本制作のステージに上げていくという手法をシステム化したもののように思えました。社内の活気を保ち、イノベーションを持続していく一つの手法と言えそうです。