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「ローカライズを含めた大規模プロジェクトのフロー」をステップごとに見ていきます。
■本制作
この段階からは、多言語への対応が始まります。それを見越しインターフェイスの作成時は特に注意します。また、音声の吹き替えや字幕については長期的なスケジュールで臨みます。
■テキストの多言語対応
いわゆるテキストメッセージの対応です。ほとんどの場合はまず、日本語から英語に翻訳し、そこから他の言語へと翻訳します。つまり、英語への翻訳精度が、そのゲームの品質を左右することになります。「フローを明確にし、早い段階でチェックを開始できるよう、日割り週割りのスケジュールを組むべき」と簗瀬氏はいいます。
■公認用語多言語対応
当然ながら、ゲーム内で使用されるシステム系メッセージの用語も、対応します。マルチプラットフォーム展開するタイトルでは、それぞれ用語を変える必要がある場合があります。その際には、いずれかのプラットッフォームで対応し、異なる部分のみを別ファイルに記述。makeする際に上書きすると楽とのことです。
■シナリオ多言語対応
シナリオを翻訳に出す際には、「ニュアンスを伝えることが最重要」と簗瀬氏はいいます。NPCでも年齢や性別、生まれなどを決めておくと翻訳する側が楽になるとのことです。
また、翻訳に出すシナリオでは美しい日本語にこだわらず、特別な用語も極力作らないようにします。日本語部分は翻訳に出したあとでも修正できるので、意図を伝えることを優先するわけです。「ここは決めのゼリフにしたい」などとコメントしておくと、翻訳者もその地にあった言葉を考えてくれます。
■カットシーン多言語対応
キャラクターの会話などがあるカットシーンでは、どの言語をベースに多言語化するかで作業の順番が変わります。英語をベースにする場合、日本語の脚本をもとにVコンテを作成し、モーションキャプチャ。その後、プリプロを経て英語音声の収録。音声の尺に合わせてプリプロを修正し、リップシンク。その後、各国の言語でアフレコします。
エフェクトやサウンド、そしてシナリオの締め切りはここを基点に、遡ってスケジュールを組みます。
■音声多言語対応
納品された音声データが、指定した内容と合っているかチェックします。簗瀬氏の経験では、1000個のうち1~2個の割合でまちがいがあるといいます。(日本の)ディベロッパー側の担当者は、各国の基本的な発音法則だけでも勉強すべきとのこと。
ロシア語については、スクリプトで発音が近いアルファベットに変換することで、「ここには『ハラショー』と書いてある」と認識できるようになったといいます。
ゲームに組み込んでからその場面に適さない音声が見つかってしまったときは、収録済みの音声のなかから代替として使えそうなものを、提案してもらいます。
■インターフェイス多言語対応
文字が表示される画面すべてのスクリーンショットを撮り、翻訳者に渡しておくと良いと簗瀬氏。翻訳によって日本語より長くなりそうな言語では、最低限入れてほしい要素をコメントとして入れておきます。
さて、ここで3回目の「閑話休題」。
簗瀬氏はモーションキャプチャを日本で行うと、役者さんの演技やゼスチャーが日本人っぽくなってしまうのが悩みとのこと。ネイティブの社員に立ち会ってもらってチェックするものの、日本での滞在が長い人だと、わからなくなってしまうようだといいます。
「シェイクスピア劇の舞台役者さんや、留学経験のある役者さんにお願いすることも考えているが、イギリスあたりでキャプチャするのが理想」と簗瀬氏。
開発はいよいよ佳境です。
■デバッグ時
デバッグの段階では、翻訳者とファイルのやりとりをしている時間がないため、バグトラッキングシステムなどで、現地のデバッグ担当者と直接やりとりをします。
ここでテキストの新規追加が必要になった場合には、ネット上の翻訳サービスを使ってでも入れることになります。
■プロモーション素材
翻訳のための資料とデバッグ用の資料からプロモーション素材を作ることができるはずだが、クライアントのQAチームと広報とのあいだで連携が取れていない場合もあるので、注意が必要だといいます。
また、FacebookやMy Spaceをプロモーションに使う際には、「好きなテレビ番組」などといった項目は、現地の人に決めてもらうと良いとのことです。
これで、ローカライズを含めた開発の全貌が語られました。
「大切なことは3つ」と簗瀬氏はいいます。まず「(開発の)序盤からイメージを共有すること」。次に「長期的な作業を把握したうえで計画を立てること」。そしてクライアントに任せきりにせず、「チェックを行い、レスポンスを返す」ことです。