![]() | ![]() |
宮本茂氏の話を聞きに会場は超満員 | DSを模した特別なステージが用意されました |
まず単独でステージに上がった宮本氏は何かを作る楽しさというのは何も特別な場所にあるものではないと言いました。一例に挙げたのはパワーポイント(主に企画書を作るためのパソコンソフト)。「この完成度を高めていって、人に凄いと言われるのは楽しくないですか?」何もかしこまったクリエイティブだけに楽しさがあるというわけではないということです。
身近な作る楽しさに任天堂は長くチャレンジしてきました。過去に振り返ると、スーパーファミコンの『マリオペイント』ではマウスで気軽に絵を描けました。ゲームキューブの『タレントスタジオ』では自分の顔を取りこんでキャラが作れました。DSiのカメラにはエディット機能が付いていて、ちょっとした加工で楽しむ事が出来ます。Wiiの『似顔絵チャンネル』で作れるMiiも、それ使って何かをするという以前に、作る事自体が遊びになっています。
ここで話題はDSiウェアで配布されている『うごくメモ帳』に移ります。これは誰でもパラパラ漫画が描けるというソフトで、昨年マリオ25周年で投稿コンテストを行ったところ1800通もの応募があったそうです。その中から宮本氏が二十数作品を表彰に選んだのですが、それらの作者に実際に会ってみると「何か動画を作った経験があるという人は少なかった」そうです。宮本氏は「きっかけがあって作り始めると病みつきになるんだ」という風に感じたそうです。
![]() | ![]() | ![]() |
うごくメモ帳 | I's me Marioの絵描き歌は世界8カ国語に翻訳 | 一番良かったのはフランス語版だとか(ちなみに欧州で一番マリオが人気のある国だそうです)。 |
「ヨーロッパ企画」は京都を拠点に活動する劇団で、一部の演目は映画化されるなど人気を集めます。今回のPAOでは「面白い人が『うごメモ』を使ったらどうなるか?」という宮本氏のリクエストで実現したそうです。ここから上田誠氏と角田貴志氏も加わって対話形式で進んでいきます。
まずは3人のバックグラウンドから話はスタートします。宮本氏が得た最初の作ることへの反応は小学校の先生から絵を褒められた事だそうです。そこから人形劇の人形や腹話術のパペットを作ったり、家にやってきたカメラでジオラマの写真を撮ったりしたそうです。次第に漫画を描くようになり、ガリ版で印刷もするようになり、中学校では漫画クラブを作ったそうです。
上田氏も作る事には小さな頃から関心が強かったそうで、小学校の壁新聞を作ったり、両親に買ってもらったワープロを使ってマメ新聞を友達に売ったりしていたそうです。その後は中学校ではマイコンを手にしてゲームを作ったり、楽器で曲を作ったり、といった感じだったそう。角田氏の方も絵が好きで、それが飾られて皆が見る様子などを楽しんでいたとか。
![]() | ![]() |
ヨーロッパ企画の二人 | 対話形式で進んで行きました |
偶然にも今の仕事に就くというのは宮本氏も上田氏も自分から求めたわけではないそうです。宮本氏が元々は工業デザインを先攻し、任天堂でも当初は業務用の筺体デザインなどを手掛けていました。しかし空前のビデオゲームブームが宮本氏の背中を押すことになります。一方の上田氏も演劇の道に入ったのは「高校の頃に演劇の脚本を書いてくれと言われたこと」がきっかけだそうです。二人とも偶然が求めたようです。
「でも仕事になると納期というのが突然現れて(笑)」と宮本氏は笑います。しかしこの「納期」と「完成」というのは密接に関わってくるようです。「『うごメモ』で入賞した人たちも今までは完成させられなかったという人が多かったんです」(宮本氏)。コンテストには期限があり、それに合わせようとして、完成、もしくはある程度満足できたところで制作を終わらせる決断、ができたのです。「僕も作るのが遅いんですけど、製品にしなきゃいけないから、会社に入ったおかげでモノを完成させられるようになったんです」(宮本氏)
上田氏も「あるタイミングで"作り終えた!"という決断はとてもハードルが高いんです」とこの意見に賛成のよう。「舞台は本番の日が決まっているので、間に合わせないといけないので完成するようになってます(笑)」
■競争をしない