ちなみにオランダ人の関係者に聞いても、ゲーミフィケーションはそれほど盛り上がっていないとのこと。すでにシリアスゲームが根付いている地域では、ゲーミフィケーションとの違いがピンと来にくいのかもしれません。またシリアスゲームの多くがB2Bビジネスであることから、クライアント企業が現状で満足しており、ゲーミフィケーションに対して投資を控える傾向にある、という話も聞かれました。
一般にシリアスゲームでネックとなるのが効果測定と企業担当者への導入訓練ですが、産学官の連携が日本より進んでいる点も背景にありそうです。一方でゲーミフィケーションをマーケティング分野に用いる場合、効果測定を売上などの客観データに求めやすい点も、企業の導入に拍車をかけている部分があります。
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ゲーミフィケーションについて語るキトル氏 | CCCPのクリエイティブディレクター、クェンティン氏 | ポール・イマージュのシャイウ氏 |
学校向けシリアスゲーム開発の大手パラスクールのミリアム・カレン氏は、全国400校以上の大学と200校以上の高校で自社のiPad向け学習教材が採用されていると語りました。
分野はフランス語・英語・歴史・地理・数学・化学・物理などです。中には幼稚園からPCやタブレットを教材として用いるところもあり、フランスでほとんどの生徒は授業でシリアスゲームに触れた経験があるとのこと。もっとも、以前はフランスでも中高年層にゲームアレルギーがありましたが、ここ数年で大きく状況が変化したと言います。
この変化は何に起因するのでしょうか。ハッキリした解答は得られませんでしたが、関係者に聞いて回ったところ、▽ニンテンドーDSのタッチジェネレーション▽iPhone、iPadの登場▽高い出生率(2010年で2.01人)に支えられたデジタル教育への需要--という3つの背景が浮かび上がってきました。ポール・イマージュでディレクターを務めるクリストフ・シャイウ氏曰く、「年寄りは頭が固いが、孫とタブレットなどで遊ぶうちに、デジタル機器やゲームに対するアレルギーが薄れていく」というわけです。
このようにe-virtuosesや、シリアスゲーム企業への取材を通して、日本とフランスのゲームの社会的活用を巡る違いが、次第に明確になってきました。シリアスゲームが産業化する前にゲーミフィケーションの波を受けた日本と、シリアスゲームが政府や地方自治体の産業育成政策の一環として立ち上がったフランス。Wii Fitや脳トレなどB2C市場が中心の日本と、B2B市場が中心のフランス。共に学び合う点は多そうです。