リッチコンテンツ時代にどう対応するか?オートデスク・ユニティ・グリーそれぞれの回答

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吉崎哲郎氏
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オートデスク、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、グリーは10月18日、合同で「これからのモバイルゲームはこう創る! 新次元ゲーム開発セミナー」を開催しました。キーノートセッションではiPhone5時代に向けたモバイルゲーム開発のあり方について、三者三様の分析とビジョンについて語りました。

トップバッターをつとめたオートデスク・メディア&エンターテインメント本部長の吉崎哲郎氏は、市場の現状分析から切り出しました。

あえて数字で示すまでもなく、家庭用ゲーム機(携帯ゲーム機含む)と比べて、スマートフォンやタブレットは、普及台数やゲームソフト数において(質はともかく)、圧倒的な差をつけています。それに伴いメインプレイヤーも様変わりし、ジンガやグリーが時価総額で任天堂に接近。吉崎氏は「依然コンソールゲーム機が売上を牽引する」としつつも、市場の需要はカジュアルゲームにシフト。コンソールゲームの開発費は爆発的に増加し、リスクがさらに高まると予測します。

一方モバイルゲーム市場もApp Storeがスタートした2008年と今では、大きく様変わりしました。ひとことでいえば「競争が激化してきた」ということです。そして、その競争は今後も加速していきます。端末スペックの上昇により、リッチコンテンツによる差別化や効率的な開発パイプラインの整備、マルチプラットフォーム、そしてグローバル対応と、コンソールゲーム機と同じ道を辿ろうとしているかのようにも見えます。

もっとも、吉崎氏は全てが3Dの大作ゲームになるわけではない、と補足しました。コンソールゲームとモバイルゲームではプレイスタイルもユーザーも異なるからです。タワーディフェンスの先駆けともいえる『Fieldrunnners』は、3Dのグラフィックデータを用いた2Dゲームの好例でしょう。物理エンジンを用いたパズルゲーム『Tinkerbox』も、この系譜に属するカジュアルゲームです。吉崎氏はこうしたタイトルの開発においても、オートデスク製品は有効だと語ります。

ただし、モバイルゲームといえども、3Dのリッチコンテンツを求めるユーザーも存在します。コアゲーマーからカジュアルゲーマーまで、家庭用ゲーム以上に多種多様なユーザーが、モバイルゲームには存在するのです。その際もScaleformを使用すれば、『Frontline Commando』のように、FlashでリッチなUIを創ることができます。また忘れてはいけないのが、Scaleformを用いればフルFlashのカジュアルゲームを手軽にUnity上で実行させられる点。『Twin Spin』はこのようにして創られたタイトルです。

最後に吉崎氏は補足として「Autodesk 123D Catch」テクノロジーについて紹介しました。これはデジカメでフィギュアなどの立体物を撮影すれば、自動的にテクスチャ付きの3Dモデリングデータを作成してくれる、無料のクラウドサービスです。作成したデータはMayaなどのモデルデータとして使用でき、頂点数をリダクションすれば、モバイル向けのデータにも転用可能。もちろん、計上によってはそれなりの修正も必要にはなりますが、ゼロから作るよりはるかに少ない時間と手間でモデルを作成できると説明されました。

■環境が変わった今、ゼロベースで考えてみよう!
続いて登壇したのはユニティの大前広樹氏です。大前氏はiPhone4からiPhone5でCPUが4倍、グラフィック性能委は14倍に上昇し、「モバイルハードのスペックがゲーム専用機に追いついてしまった」と説明。その上で市場で成功するためには、たんに見た目がリッチなだけではなく、モバイルゲーム独自の文法にのっとったゲームを開発する必要があるとしました。また先日発表された『METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS』のように、コンソールゲームのノウハウを投入したモバイルソーシャルの本格的な登場が始まったとしました。

このように技術的にも市場的にもさらなる競争が見込まれるなか、ゲーム開発者は何を考えるべきか・・・。大前氏は「ゼロベースで考えること」の重要性を強調します。端末性能が上がり、開発環境が整備される中で、今までと同じ考え方や作り方は再考されるべき。中でも技術的なチャレンジとして、今はキャラクター表現(フェイシャル・モーションキャプチャ・ビヘイビア制御)に注目するべきではないか、と分析しました。

▽ハード性能の向上で、ハイメッシュのアニメーションやスキンシェーダーがモバイルでも現実的になってきた▽キネクトによるモーションキャプチャーシステムの価格破壊▽Mecanim(Unity4で搭載される新アニメーションシステム)でリッチなキャラクタービヘイビア制御が可能に--機は熟しつつある、というわけです。「今まさにコスト対効果がドカンとあがった領域」だと大前氏は強調します。

最後に大前氏は開発中のUnity4上でMecanimのデモを行い、GUIベースで手軽にキャラクターアニメーションが作れる様子を紹介しました。複数のアニメーションにまたがるキャラクター制御を簡単に作り込め、キャプチャーしたモーションを自動的に修正してくれ、ボーンの構造に関係なくアニメーションが共有可能。そして何より超高速で、モバイルでも使用できると言います。このように環境が整備されていく中で、何を作るべきか、再度ゼロベースで考えてみようと強調され、講演が締めくくられました。

■3×3×6でリッチ化を戦略的に捉える
最後に登壇したグリーの芳賀洋行氏は、リッチコンテンツが進むモバイルゲーム開発において、(DCCツールやゲームエンジンの)ユーザーの立場から、グラフィック選択の指針について説明しました。

はじめに芳賀氏は「3×3×6」という数式を紹介しました。これはモバイルゲームのグラフィックデータは3種類(UI・ゲーム空間・シネマ)、コンテンツも3種類(背景・モノ・効果)、そしてコンテンツパイプラインが6種類(画像・動画・再生エンジン用に、2Dと3Dでそれぞれ)あるという意味です。

ゲームグラフィックスを構成する3要素(UI・ゲーム空間・シネマ(カットシーン、ムービーなど))については自明でしょう。そして個々の要素は背景とモノ(キャラクターなど)、そして効果(エフェクトなど)に分類できます。つまりグラフィックコンテンツは3×3の9種類のマトリックスに分類できます。

一方グラフィックデータを作るパイプラインはツールに関係するように見えます。2Dの静止画データならPhotoshopやIllustrator、2DムービーならAfterEffectやPremiere、コーディング(再生エンジン用データ作成)にはFlashといった具合です。これが3DならMayaやUnityなどが大活躍することになるでしょう(もっとも、環境と共にクリエイターもあわせて編成する必要がありますが・・・)。

そして、この「3×3×6」の組み合わせは、ユーザーそしてコンテンツによって変わってきます。そのゲームで、ユーザーにどんな気持ちになってもらいたいのか、はじめにゴールを明確にして、優先順位を付けよう・・・。芳賀氏はこのように語ります。そのうえで、どこをどのくらい変化させるか、そしてどのようなパイプラインを用いて開発するかが重要だというわけです。

一例としてブラウザゲームの『聖戦ケルベロス』では、UIとゲーム空間の一部は画像データで作られ、残りのゲーム空間とシネマはFlashでオーサリングされています。これが『Manteka Hero』では、UIとゲーム空間の一部は画像データで作られていますが、残りのゲーム空間とシネマはDCCツールが用いられ、最終的にUnity上で再生されています。

一方、同じくUnity上で実行されている『どうぶつフレンズ』においては、ほぼすべてのグラフィックデータがFlashで作成されている、といった具合です。もっともFlashをUnity上で動作させるために、自社ツールの「Lightwaght SWF」でデータコンバートされています。余談ながら本ツールは後の講演中にフリー公開されました。

リッチコンテンツへの圧力が高まるからといって、何でもかんでもリッチにすればいいわけではない。まずお客様のことを考えて、その上で明確な指針をもって開発にあたる・・・。芳賀氏の講演をまるっとまとめると、このようになるでしょう。モバイル市場の巨人として、実に地に足の着いた講演のように感じられました。

《小野憲史》

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