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東京ゲームショウ2013において、ゲーム周辺機器メーカーのMad Catzは、所属のプロゲーマーが参加する格闘ゲームの大会を開催しました。中でも今年でプロ契約3年目になる梅原大吾氏に関しては、先日、9月13日に自伝的漫画が出版されました。
『ウメハラ To live is to game』(PHP出版)と題された本作では、中学生時代の知られざるエピソードや当時のゲームセンターの雰囲気が描かれています。
今回、本作の出版に際して梅原氏にプロゲーマーとしての3年間を振り返ってもらうとともに、プロゲーマーの役割や若いゲーマーへのメッセージなどを語っていただきました。
――新書『勝ち続ける意志力』に続けて、漫画の出版ということで、梅原さんはすでに格闘ゲーム界のスターにとどまらず、一人のプロフェッショナルとして社会から認められつつあると思います。
梅原:そうですね。予想外の売れ行きで驚いています。いわゆるゲーマーの方以外にも読んでいただけているようです。
――2010年にMad Catzとプロ契約を結び、3年経ちますが、振り返ってどうだったでしょうか?
梅原:やはり最初にプロになる時は、勇気が入りました。誰もやったことがなく、年齢もそんなに若くなかったので、迷うこともありました。最初の一年間は海外の大会に出場することがメインで、今後、どう続けていくか不安なこともありました。
しかしながら、最近はこういった本の出版や講演を行う機会もあり、年々、活動の幅は広がっています。漫画や新書を通して格闘ゲームの世界が広がっていくことは、Mad Catzにとっても、他のプロゲーマーにとってもプラスだと思っています。
自分一人だけではなく、取り巻く環境全体に貢献できることには非常にやりがいを感じています。とはいえ、「自分はプレイヤーである」という意識は常に忘れないようにしています。
――今回は中学生時代の梅原さんをテーマにした漫画ということなのですが、どういった経緯で本企画が持ち上がったのでしょうか?
梅原:タイトーステーションでイベントを行ったときに、PHPの編集の方からお声をかけていただいたのがきっかけです。最初は漫画になることは決まっていなかったのですが、次に何か本を出すのだったら漫画の方がいいなと思っていたのです。
というのも、漫画でしか表せないエピソードや当時のゲームセンターの雰囲気があると思うのです。また最初は自伝的内容ではなく、有名な大会のエピソードを振り返るような物語だったのですが、せっかくだったら誰も知らないエピソードを題材にしようと思い、主に中学生時代を振り返る内容になっています。
――梅原さんの中学時代というのは90年代ですよね。そのころのゲームセンターの雰囲気などへの思い入れはありますか?
梅原:当時のゲームセンター自体が面白かったということも確かにありますが、やっぱり自分自身にとって一番、重要な時代であることが大きいですよね。中学生の頃は、一番何かにのめり込む時期だと思います。今回の漫画は、そういった世代にも読んでもらえるといいですね。
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――梅原さんから見て、今の若い世代のゲーマーはどう映っていますか?
梅原:ゲーム自体はみんな上手くて、全体のレベルは上がってきていると思います。しかしながら、プロゲーマーの世界はあくまでもエンターテインメントの世界であり、ただゲームが上手いだけでは通用しません。ゲームの攻略自体はみんな上手いんですが、それにプラスアルファがないと、この世界では通用しないのです。
――日本ではプロゲーマーやeスポーツはまだまだ普及しているとは言いがたいですよね。今後、それらが盛り上がるためには何が必要だと思いますか?
梅原:とても難しい質問ですね。ただ一つこれは間違いないだろうと思っていることがあります。というのは、僕としては当然、格闘ゲームは面白いものだと思っているのですが、ゲームが面白いからといって、プロゲーマーやeスポーツの人気が出るというわけではないのです。
やはりプレイヤーが魅力的だからこそ、ファンを惹きつけ、自分でもやってみようと思うのです。つまり、どんなにゲームが面白いからといっても、プロゲーマーと呼ばれる人たちに魅力がなかったら、普及したり人気がでたりすることはないでしょう。
――その点はやはりスポーツと同じですね。
梅原:そうですね。なので、一番大事なのは、ただゲームが上手いプレイヤーがたくさん登場するのではなく、「自分たちが何をやっているのか」、「自分たちがどういう人間なのか」、そういったことを上手くアピールすることです。たとえ素晴らしいプレイがあったとしても、格闘ゲームを知らない人には、なかなか伝わりません。他のジャンルや領域の人にも、ゲームプレイの素晴らしさを伝えるような努力が必要だと思います。
――格闘ゲームのようなアクション性の強いゲームは言語化しにくい部分がありますよね。その点、今回の漫画みたいな形式だと伝えやすいかもしれないですね。
梅原:そうですね。理解されにくい世界だけに、伝える努力はもっと必要です。若いプレイヤーにもベテランにも「俺はこうなんだ!俺はこうやっているんだ!」といった一般の人を巻き込むような主張を行ってほしいと考えています。
――同じくMad Catz所属のときどさんがプロになる時に相談したというエピソードがありますが、プロを目指す若いゲーマーにもアドバイスすることもありますか?
梅原:もし聞かれれば、自分の経験の範囲でアドバイスするようにしています。ただそこからは自分の判断で決めてほしい。僕の周りの人間は、ゲームを本気でやっていくことに対する抵抗感はもう少なく、20代後半くらいからこういう生き方もありかなと思えるようになっていきました。ですが、若い人にとっては、ゲームをやり続けるということに対する迷いは大きいでしょうし、仕事にするとなると、当然、不安だと思います。そういった方には、自分の経験からこれだけは確実だよというアドバイスはできますよ。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りしております。