5番目の作品が描いた現代日本の意味深さとは ― 『SHORT PEACE 月極蘭子のいちばん長い日』プレイレポート
近年、ゲームと映画をセットにして販売するケースが増えてきました。昨日1月16日に発売された『SHORT PEACE 月極蘭子のいちばん長い日』もそのひとつです。
ソニー
PS3
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元々「SHORT PEACE」は、大友克洋監督作品「火要鎮」、森田修平監督作品「九十九」、安藤裕章監督作品「GAMBO」、カトキハジメ監督作品「武器よさらば」のショートアニメ4本を1本の映画とした作品でした。
そしてプロジェクト第5番目の作品、グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏とクリスピーズの片岡陽平氏による『月極蘭子のいちばん長い日』を加えたのが、『SHORT PEACE 月極蘭子のいちばん長い日』であり、その共通点は日本が舞台であるということです。
■各作品の日本
・GAMBO:16世紀末
・九十九:18世紀
・火要鎮:18世紀
・月極蘭子のいちばん長い日:現代
・武器よさらば:近未来
また、良くも悪くもあっという間に終わってしまうため、ある程度は自分の中で「あれはこういうことなのだろうか…」と考える必要があります。ですのでマニア向けというか、好き嫌いが分かれる作品群と言えるでしょう。
それは『月極蘭子のいちばん長い日』も例外ではありません。ゲームのさまざまな要素がハイスピード・ハイテンションでぐいぐいと来るので、突っ込みが追いつかない間にクリアしてしまいます。ただ、純粋にゲームとしては面白く、横スクールで「エフェクトで敵を倒す」というシステムや、「VS デイ&ナイト」「マスク剥ぎ取りデスマッチ」といった一風変わったステージは程よい難易度でした。また、たった2人の声優で10人以上のキャラクターに声を当てている演技力と、次々と作風が変わるムービーパートも必見です。
全ての作品を見るのにそう時間は掛からなかったため、発売当日に全てを見ましたが、正直スッキリとした気持ちにはならず、かなりモヤモヤしています。「結局はあれはどうゆうことなの?」と作った方に聞きたいです。
そんなことを考えていると、「どの作品にも富士山の描写があった」事に気がつきました。その共通点がヒントとなり、「各時代の日本で起こっていたかもしれない出来事が描かれている」という個人的な解釈に。
そう考えた場合、16世紀末の日本では「旅人がモノノケの館に迷い込んでいた」かもしれず、近未来の日本では「廃墟と化した街で、人間が無人兵器と戦う」かもしれず、現代の日本では「お嬢様な女子高生が変身してヒットマンをしている」かもしれません。
だとすれば、『月極蘭子のいちばん長い日』が描いた「現代日本」は、ある意味で忠実で、実に今時な内容なのではないでしょうか。
《栗本 浩大》
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