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佐賀県とスクウェア・エニックスは異色コラボ『ロマンシング 佐賀 LOUNGE』の最終日となった16日、「ロマンシング 佐賀 プレミアムナイト」を開催しました。
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招待されたのはスクエニ メンバーズの応募で当選した100名の『サガ』ファン。壇上にあがった『サガ』シリーズのエグゼクティブプロデューサー、河津秋敏氏は「ここには『サガ』ファンしかいないので安心して喋れます(笑)」と落ち着いたご様子。「25周年にふさわしいイベントができました。プレイヤーのみなさんは北極星のようなもの。これからも導いてください」と感謝の言葉を述べました。
続いて佐賀県知事・古川康氏の挨拶。こういうイベントではオープニングで話すことが多いと古川知事。クロージングを迎え、「イメージしたものより大きいイベントになりました。当初は5000人くらい集まってくれればと思っていましたが、7000人もの方にご来場いただきました」と感謝の言葉を述べました。
『サガ』と佐賀県のコラボの経緯については発表会レポートでもお伝えしましたが、今回改めて古川知事の口から「20年前、スクウェア・エニックス側からコラボの話がありましたが実現しませんでいた。そして私が知事になった12年前に職員を挨拶に行かせてたのですが、なにやらお忙しかったようでやっぱりコラボは実現しなかったんです(笑)」とその経緯が語られました。
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続いて佐賀県「FACTORY SAGA」の金子暖プロジェクトリーダー、スクウェア・エニックスの市川雅統プロジェクトリーダーが登場。
イベントを終えて「こんなに大きくなるとは思わずびっくりしています」と市川氏。金子氏は「(市川氏から)電話をいただいたその日に企画書を書いて翌日には会っていました」と当時のことを振り返りました。古川知事はコラボの話を聞いたとき、「あの企画まだ生きていたのか」と懐かしい気持ちになったのだとか。河津氏は「ロマンシングという言葉が佐賀県の観光PRに使っていただけたらラッキーだと思っていました。25周年という節目に心残りがないようにしたかったので、この企画も市川にムチャ振りをしました」と笑いながら話していました。
ゲームと自治体の異色コラボをするにあたり、「お互いを知ってからが本番でした」と金子氏。お互いを知るための会議は昨年の8月~12月という長い期間をかけたとのこと。「(森美術館で開催中の)アンディ・ウォーホルの絵と小林智美さんの絵が並んでいるのを見たとき、やった!と感じました。もし実現していたとして20年前のコラボと今のコラボでは違うものになっていたと思います」と市川氏。プロジェクトリーダーとしての大役を果たした市川氏、金子氏の両者は感無量といったご様子でした。
コラボメニューやコラボ商品について、「原作ファンが喜ぶものを第一に」企画を練っていったと市川氏。コラボメニュー一番人気は「さがいちご」をふんだんに使ったスイーツ「シュライク(『サガ フロンティア』)」だったそうです。古川知事がオススメする「さがいちご」の食べ方は、ヘタ側から食べる事。ぜひ実践してみてください。
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続いて登場したのは『サガ』シリーズのイラストレーター・小林智美さん。今回のコラボで小林さんは、有田焼の大皿に直筆で『ロマンシング サ・ガ2』の最終皇帝の絵付けを行いました。
トークに入る前に小林さんから河津さんに25周年を祝して花束贈呈が行われました。こちらの花束は『ロマンシング サ・ガ』のナイトハルトをイメージして自ら花屋で選んだものなのだとか。粋な計らいです。
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「昨年8月に市川さんにお会いした時にはお酒のラベルを描き下ろすという話だったのですが、年が明けたら大皿の絵付けということになっていたんです(笑)」と当時を振り返る小林さん。絵付けは慣れない作業で苦戦したようですが、元々アナログで絵を描かれているのですぐに慣れ、個人的にも絵付けしていくほどハマってしまったそうです。
大皿に描いた絵のタイトルは『明けの明星 -いつか旅するものへ-』。「明けの明星」は小林さんが個人的に最終皇帝をそう呼んでいるのだとか。「ともに遠くへ行こう、というイメージで描きました」と小林さん。
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有限会社しん窯の絵付け職人・橋口博之氏もイベントに駆けつけており、大皿の模様について説明しました。絵の周りの模様は有田焼の伝統的な「菊唐草」というものだそうで、小林さんの絵の足をひっぱらないようなデザインを考えた結果たどり着いたものなのだそうです。
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コラボグッズの有田焼丸型小皿や「ベルサイユシリーズ(有田焼)」×「サガ」シリーズ、「色絵山水シリーズ(有田焼)」×「サガ」シリーズを手がけた徳永陶磁器株式会社の徳永社長も会場に駆けつけていました。徳永社長も『サガ』の大ファンなのだとか。「主にドット絵を使った有田焼を手がけました。 色絵山水シリーズはゲーム中に登場するエスニックな国をイメージして、 ベルサイユシリーズはヨーロピアンなイメージなので女性キャラクターのドットをデザインしました」とそのこだわりを語りました。
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ここで作曲家・伊藤賢治氏が登場。伊藤氏は1990年の『Sa・Ga2 秘宝伝説』から『サガ』シリーズに携わり、その後『ロマサガ』シリーズ、『サガ フロンティア』など多くのシリーズ作品のBGMを担当。『サガ』シリーズを語る上で欠かせない人物です。
挨拶を終えると、さっそくピアノ生演奏にて「オーバーチュア(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)」を披露。会場に集まったファンは美しい音色にしばし耳を傾けました。
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トークでは開発当時の話が飛び交い、どのように曲を仕上げるのか?という質問に対して、「『サガ』はフリーシナリオなので他のゲームのように細かいシナリオがあるわけではなく、箇条書きで指示がくるんです。最初は戸惑いましたがだんだん慣れました」と伊藤氏。河津氏は基本的に曲を好きに書いてもらうスタンスを取っていたそうで、「どんな返しがあるか期待していました」とのこと。リテイクはなかったそうですが、当初のイメージと違うところで楽曲を使うこともしばしばあったそうです。
市川氏は伊藤氏の音楽に対して、「私はGBの世代なのですが、当時はウォークマンもまだ主流ではありませんでしたから、外で音楽を聴くという体験自体が初だったんです。なので『Sa・Ga2 秘宝伝説』のバトル曲には特に思い入れがあります」と語りました。
今回のコラボの企画段階では吉野ヶ里遺跡や佐賀城やバルーンフェスタで伊藤氏のライブをやろう!という話もあがっていたらしく、そのことを市川氏が語ると「初耳ですよ!」と伊藤氏。金子氏は「佐賀県の県庁ではお昼に流れる曲があるのですが、これをぜひ伊藤さんに作曲して欲しいです」とラブコール。「オファーがあればぜひ」と伊藤氏も乗り気のようでした。
来場者からの質問を受けるコーナーでは、『サガ』シリーズだけではなく、今回のコラボについての質問も寄せられました。
「新作でこっそり入れたい佐賀県ネタは?」という質問には「こっそりどころか、大胆に入れますよ。ワラスボは外せないでしょう!」と河津氏。ちなみにワラスボはイベント来場者に配られた「エンペラーズ サガ」オリジナル特製コラボカード「SCR七英雄ロックブーケ【ワラスボ】」にて既にコラボ済みです。
「コラボの今後の展開」については「サガという言葉には明るい響きがあります。また、世界中で通用する言葉でもあるので、世界中のサガともコラボしていきたい」と古川知事。金子氏は「ゲームの中でもコラボを続けていきたい」と答えました。
「デザインされた中で最も思い入れのあるキャラクターは?」という質問に小林さんは、「全て思い入れがありますが、リテイクをくらうと頭にこびりつくのでそういう意味ではヒューズ(『サガフロンティア』)です」と回答。ナイトハルト(『ロマンシング サ・ガ』)もお気に入りなのだとか。河津氏は「ヒューズは苦労しましたね。かっこいいキャラクターが出てきたのでもうちょっと崩してとお願いしたら崩れすぎちゃって。自分の中でイメージが固まっているキャラクターには妥協しませんでした」と当時を振り返りました。
「バトル曲は苦手とお聞きしましたが苦手な曲を求められるのはプレッシャーですか?」との質問に「プレッシャーです」ときっぱり答える伊藤氏。また、気分転換の方法はバライティ番組を見まくるそうで、最近のお気に入りは「水曜どうでしょう」なのだとか。
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トークの最後にはうれしい告知が。4月24日発売予定の『シアトリズム ファイナルファンタジー カーテンコール』のDLCにて、『サガ』シリーズの楽曲配信が決定しました。今回発表になったのは『ロマンシング サ・ガ』の「下水道」と『ロマンシング サ・ガ3』の「四魔貴族バトル1」の2曲。他にも提供予定とのことなので、今後の情報に注目です。
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イベントのラストは再び伊藤氏のピアノ生演奏が披露されました。「最終日に初めて会場に来たのですが、スタッフの方の熱い話を聞いて、もう1曲やる気持ちになりました」と伊藤氏。『ロマンシング サ・ガ3』のポドールイを、続いて『ロマサガ』シリーズの「オープニングタイトル」を披露しました。最後はやはりこの曲。プレイ当時の思い出が蘇りじんわりと目頭が熱くなる瞬間でした。
古川知事は「県のPRはすることは簡単なのですが、いかにして人の心にひっかりを作るかが悩み。『サガ』シリーズとのコラボはそのひっかかりをつくるフックになったのではと思います」と今回のコラボに大満足のご様子でした。
最後は来場者と登壇者による記念撮影。「ロマンシング」という掛け声からの「サガ!」でいっせいにコブシを振り上げ、イベントを締めくくりました。