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ファミコンの時代から家庭用ゲーム機を牽引し続けてきたロールプレイングゲーム。アクションやFPSにどっぷり浸かっている昨今のユーザーも、一度や二度くらいは世界を救う為に魔王をやっつけた経験があることでしょう。今回ご紹介する『チャイルド オブ ライト(Child of Light)』は、日本で生まれたRPGに強い影響を受けたゲームクリエイターによる、海外産「JRPG」とも言える作品なのです。
■懐かしさがこみ上げる王道的展開、深い物語性を持ったキャラクター
『チャイルド オブ ライト』の主人公は、純粋な心を持った若きプリンセス「オーロラ」。闇の女王によって呪われた王国「レムリア」を救う為、「太陽」「月」「星」の三つの光を集める旅に出ることになります。古き良き国産RPGを彷彿とさせる王道のシナリオは、海外ゲームにも関わらず我々日本人ゲーマーに懐かしみを感じさせてくれることでしょう。
オーロラは、自分の身長を超える大剣を振るって凶暴なモンスターやドラゴンと戦います。ゲーム序盤では幼い少女として世界を駆け回る彼女ですが、シナリオが進むにつれて大人の女性へと成長していく姿も見られます。画面に浮かぶ光の球のようなものは、物語序盤からお供として現れるホタル「イグニキュラス」。その存在は謎に包まれており、様々な方法でオーロラをサポートしてくれます。
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他にもサーカス団からはぐれてしまった「最高のヴォーカリスト」を自称するピエロや「ガーデンドワーフ」と呼ばれる魔法使いの妖精といった、個性的な仲間たちが登場します。どのキャラクターも「苦しみ」と呼ばれるクエストアイテムを持っており、オーロラ達は彼らの悩みを解決しながら旅を続けていくことになります。
■世界に没入できるインタラクティブ性、協力プレイにも対応
シナリオのみならずゲームシステム面でも国産RPGを意識している本作。戦闘には、おなじみの「シンボルエンカウント」や「リアルタイムバトルシステム」が採用されています。戦闘中はキャラクターのコマンド入力を行うだけでなく、イグニキュラスを操作して敵モンスターを妨害したり、回復アイテムである「光」を集めたりと、飽きさせない工夫がなされています。
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マップ上の敵にぶつかる前にイグニキュラスの光で強く照らせば、眩しがっている敵相手に先手を取ることも可能。戦闘のみならずマップ上でもインタラクティブなギミックがふんだんに詰め込まれており、光を使ったパズルやアクション要素のおかげでファンタジックな世界観に没入できます。また、2P側のコントローラーでイグニキュラスの操作を割り当てられるので、友人や家族といっしょに冒険するのも良いでしょう。
■JRPGを愛するモントリオールスタジオの敏腕クリエイター陣
『チャイルド オブ ライト』の開発元ユービーアイソフト モントリオールスタジオのスタッフは、クリエイティブディレクターのパトリック・プルーデ氏を筆頭に、世界的にヒットしたオープンワールドFPS『ファークライ3』の開発チームとしても知られます。「過激なFPSのクリエイターが、なぜファンタジーRPGを?」と疑問を抱くかもしれませんが、プルーデ氏は以前からJRPGの熱烈なファンであることを自負しており、『グランディアII』や『ファイナルファンタジータクティクス』など数々の名作から影響を受けたことを明らかにしています。こうした開発陣のリスペクトやこだわりは、実際に本作をプレイすることできっと感じとれるはずです。
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■水彩画のようなタッチで描かれ、壮大なBGMで演出される美しい世界観
温かみを感じさせる水彩画調のグラフィックも本作の特徴のひとつで、それらがいきいきとアニメーションする様は、まるで動く妖精物語の絵本を見ているかのよう。画面内を飛んだり跳ねたり駆けまわるオーロラはとにかくキュートで、怪しいダンジョンを照らすイグニキュラスの照明効果やギミックをクリアした際の音響演出は、本作のRPGとしての魅力を最大限にまで引き出してくれます。
■PS4からWii Uまで様々な機種で発売、価格は手頃な1000円台
『チャイルド オブ ライト』は、PlayStation 4、PlayStation 3、Xbox 360、Wii U向けに販売が開始されています。PS3とPS4は初回生産限定パッケージ版も用意されており、世界観を堪能出来るアートブックやダウンロードコンテンツのほか、日本を代表するイラストレーター天野喜孝氏による描きおろしポスターも含まれています。価格はパッケージ/ダウンロード版共に1,480円(税抜)、初回限定パッケージ版は1,980円(税抜)となっています。なお、PS3とPS4版は、パッケージ版でもダウンロード版でも同一アカウントであれば両方の本体で遊べるクロスバイ仕様となっています。その他、UplayやSteamにてWindows用ダウンロード版が配信中です。
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■まとめ
JRPGへのリスペクトだけに留まらない魅力を持った本作は、ゲームとしての楽しみはもちろんのこと日本人ゲーマーに対して強いメッセージ性を持った作品とも言えます。どこか懐かしい世界観を十分に楽しめるインタラクティブなシステムも、単なる「JRPGへの懐古」ではない斬新さを感じさせてくれるでしょう。
インサイドとGame*Spark編集スタッフによる連載型ショートレビューも掲載しているので、あわせてご覧ください。
【Child of Light連載型ショートレビュー】
・「初めてなのにどこか懐かしいRPG」 by 河井律子(Game*Spark編集)
・「当分ご無沙汰なRPGを遊んでみました」 by 土本学(インサイド編集長)
・「日本人ゲーマーの心をくすぐる、お姫様の冒険譚」 by ハヤカワ(ライター)
・「Ubisoftモントリオールが夢見た理想のJRPG」 by 今井普(ライター)