公開されたのは、『洞窟物語』制作期間における最後の一年間に行われたブラッシュアップ作業のログで、デバッグやゲームバランス調整、そして物語展開や演出についてなど、実にさまざまな要素に対し、5名の間で意見が交わされています。
当時のログをほとんどそのまま公開しているので、かなり長く内容も多岐にわたります。天谷氏は、この作品がどのように良くなっていったかを知りたい方に、そしてゲームを制作している方・制作を志している方のために公開したとのことです。
「洞窟物語ブラッシュアップ対話記録(1年分) 」を掲載しました。ゲーム制作のヒントになれば幸いです。 http://t.co/gYhx2sKr28 pic.twitter.com/z5IobWqcQ4
Daisuke Amaya (@amaya_pixel) 2014, 5月 12
なお、この記録は一番下から上に読んでいく形式になっています。また、天谷氏は記録内ではPixel名義になっています。
この記録においては、やはりバグや誤字脱字の指摘、それぞれの環境でうまく動作するかなどの話もあるのですが、ゲームのバランス調整や物語などにも、かなり深く突っ込んで話されていることに注目すべきでしょう。
たとえば、『洞窟物語』には武器レベルというものがあり、「ダメージを受けるたびに武器ゲージが減り、一定以下になるとレベルが下がる」というルールなのですが、当初はダメージを受けたら即レベルダウンしていたそうです。これは理不尽すぎたので、ナオク氏のアイデアを元に、バランスを練っていったようです。
更に、クリア後の高難易度ステージである「聖域」も、くろいひと氏の提案から発展していったとのこと。そして、「聖域」の名前も物語設定も皆からのアイデアを発展させ作られています。「聖域」は『洞窟物語』の重要な要素のひとつなわけで、この意見がなければ今と印象が大きく違っていたことでしょう。
また、道中に出てくる犬の名前などもアイデアを出しあったりと、参加者がさまざまな意見を出し、天谷氏がうまくまとめる形で、手をとりあって作られていたことがわかります。
物語にも、驚くべき箇所はあります。当初は、登場人物がバタバタと死んでいくストーリーだったそうですが、途中からは島が崩壊してしまう方向性になったりと、紆余曲折ありつつマルチエンドの形に落ち着いています。
時には開発が難航し、気分が落ち込んでいるような様子を見せる書き込みもありますが、それを励まし合ったり、あるいは天谷氏の子供が生まれて皆で喜んでいたりと、開発現場の空気をそのまま感じ取ることができるような記録になっています。読むのにやや苦労するかもしれませんが、実に見応えのある記録となっています。
また、今になって読んでみると、印象的な書き込みがいくつもあります。特に、テスト版が一般公開された後の天谷氏の書き込みには、感慨深いものがあります。
Pixel (2004/12/02-20:54
思っていたより好評で本当によかった。
いっそこのまま一人歩きしてどこまでも行って欲しい気分~。
『洞窟物語』が世界にまで進出していったのは、こういった努力もあったからなのでしょう。