基本無料ではなく完全無料!? 『Unreal Tournament』シリーズ最新作の挑戦

"基本"無料ではなく、完全に無料!? オイシイ話すぎて、思わず自分の目と耳を疑いたくなってしまう『Unreal Tournament』シリーズ最新作。そのビジネスモデルの秘密に迫ります。

ゲームビジネス 開発
Epic GamesによるUnreal Engine 4の使用例。『Unreal Tournament』最新作はこのエンジンを元に制作が進められています
Epic GamesによるUnreal Engine 4の使用例。『Unreal Tournament』最新作はこのエンジンを元に制作が進められています 全 2 枚 拡大写真
いまやすっかり浸透したF2P(基本無料)モデル。多くのプレイヤーが無課金・小額課金で遊べるのは「一部の高額課金プレイヤーが他の多数のプレイヤーを支えているから」というのがカラクリなわけですが、なんと「Not free to play, just free.("基本"無料ではなく、まさに無料)」を謳うゲームが出てきました。プレイヤーには夢のような話ですが、メーカーはどのように利益を得るのでしょうか。その仕組みに迫ってみましょう。

◆無料のカラクリ1:ゲーム制作エンジンを有料で提供


その夢のようなゲームの正体は、先日発表されたEpic GamesによるPC/Mac/Linux対応のスポーツ系FPS『Unreal Tournament』シリーズの最新作です。余談ですが、FPSは「スポーツ系」と「リアル系」に分類することができ、スポーツ系はアクション性が高い・テンポが速い・マルチプレイ重視、リアル系は銃の性能や人間の身体能力などをリアルに再現・操作が難しめ・1人用のキャンペーンモードも充実……などの特徴が挙げられ、『Unreal Tournament』はスポーツ系の代表格といえるタイトルです。

閑話休題。そんな『Unreal Tournament』最新作無料の秘密は、同作の制作にも使われるEpic Games自社製のエンジン「Unreal Engine 4」にあります。Unreal Engine 4は月額サブスクリプションモデルがあり、月額19ドルを支払うことで誰でも自由に使うことができます。それに加えてこのゲームに関するすべてのコードとコンテンツ、最新情報をあますことなくオープンにすることで、ユーザーやファンたちと一緒に最新作を作ろう、というめずらしい制作体制が取られているのです。こうしてできたゲームが、無料で提供されるというわけですね。「自分の好きなゲームの最新作に深いところから関われるならお金を出してもいい」と考える熱心なファンも大勢いるでしょうから、そういう意味ではこのビジネスモデルも「一部のユーザーが多数のユーザーを支える」ことで成り立っているといえます。

◆無料のカラクリ2:ユーザー制作による有料MODの利益を折半


そしてもう1つの収益源が「MODの販売」です。MODとはModificationの略で、ゲームの内容に変更を加えたり、新たな要素を加えたりするファイルやプログラムのこと。PCゲームではFPSのみならず様々なジャンルでユーザー発によるMODが盛んで、MOD導入可能なゲームになにも適用していないことを「バニラ」と呼ぶほどです。ゲームをプレーンなアイスになぞらえ、MODを「ゲームをさらに魅力的に(自分好みに)するトッピング」と捉えているわけですね。そんなMODの一部を有料で販売するマーケットを用意し、売り上げを制作者と折半することを予定しているようです。

これら2点を収益源とすることで、できあがったゲームを遊べればいいファンたちは無料で遊べる……というビジネスモデルになっているようです。ゲームとして形になるのはまだまだ先の話ですが、多くのユーザーの意見を取り入れ、技術を持ったユーザーがそれを形にしていくビジネスモデルは、ゲーム制作クラウドソーシングの好例となるのか、投げっぱなしの悪例となってしまうのか。ゲーム自体のデキはもちろん、Epic Gamesの挑戦からも目が離せません。

(C) 2004-2014, Epic Games, Inc. All rights reserved. Unreal and its logo are Epic’s trademarks or registered trademarks in the US and elsewhere.

《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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