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Upper One GamesとE-Line Mediaが共同開発する『Never Alone』は、極寒の地アラスカを舞台とした美しいパズルプラットフォーマーです。E3 2014では、Xbox Oneのインディーデベロッパー向けプログラムID@Xboxのブースにて、本作のプレイアブルのデモが展示されました。
今回はそのインプレッションと共にE-Line MediaのLarry Goldberg氏のインタビューをお届けしたいと思います。
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アラスカのネイティブ、Inupiatの人々の民話の調査を行い、アンカレッジに設立されたUpper One Gamesと共同開発を行ったという本作。美しいビジュアルにまず目を引かれますが、本作の背景やキャラクターなどはすべて民話に基づいたものとのこと。操作はジャンプとキャラクターのスイッチを行うだけというシンプルなもので、少女と狐を交代させながらステージを進んでいくのが目的です。
プレイアブルデモでは、全部で3つのシーンで構成されています。最初がチュートリアルらしい村のシーン、次はブリザードが激しい極寒の地、最後はオーロラが輝く美しいシーンです。谷間をジャンプしたり、ロープにぶら下がったりするアクション部分は『Limbo』を彷彿させるデザインながらも、うまく2つのキャラクターを使い分けて進んでいくのが本作の最大の特徴です。
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ブリザードのステージは、ときおり吹き荒れる突風が少女たちの邪魔をします。オーロラのステージには、「空の民」が登場して少女をさらっていきます。彼らはオーロラと共に現れる神話上のキャラクターで、子供たちに夜の間、外に出ないように注意するために使われるそうです。
プレイアブルデモは非常に短いものでしたが、丁寧に作られたパズルと美しい背景はやりごたえのあるものでした。さらにInupiatのネイティブによるボイスナレーションが挿入されることで、民話に基づいた物語が浮かび上がってきます。Larry Goldberg氏によると、全体は8つのステージになる予定で、ボリュームは十分なものになっているそうです。
本作は今年の秋にXbox OneとPlayStation 4、さらにPCでリリースする予定。ダウンロード販売のみで価格は14.99ドルになる予定となっています。
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――まずは経歴を教えていただけますか?
Larry Goldberg:
E-Line Mediaはゲームを通した学習ソフトやサービスを販売している会社だ。これまでは子供向けのゲームデザイン学習プログラム『Gamestar Mechanic』、起業家になるために『Talkers and Doers』などを開発しきたが、本作は初のコンシューマ向けのゲームとなる。
我々のスタッフは、様々なゲーム産業で働いてきた経歴がある。私はActivisionで10年間、その後も様々なスタジオで働いてきた。共同設立者のAlan GershenfeldもActivision出身、また若手のSean VesceはActivision、Microsoft、Eidosといった会社でデザイナーを務めてきた。彼は『Mech Warrior 2』、『Interstate '76』、『Tomb Raider: Anniversary』に携わった幅広い経歴の持ち主だ。またSOCOMシリーズのリードアーティストも在籍している。『Never Alone』には、これらのスタッフの25人以上がUpper One Gamesと共同制作する形で参加している。
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――本作のテーマについてお聞かせください。
Larry Goldberg:
他の領域のエンターテイメントには、多様な文化を扱ったジャンルがある。例えば、音楽にはワールドミュージックがあり、映画にも様々なドキュメンタリーや文化を扱った作品が多く存在する。だが、ゲームではそれらを扱ったものがない。そこで我々はワールドミュージックという言葉にちなんで、本作を「ワールドゲーム」と呼んでいる。ワールドゲームはゲームの力を通して、世界の様々な文化を物語るものである。例えば、アマゾン、アゼルバイジャンやハワイのコミュニティなどもその視野のうちに入っている。
それぞれの文化には、世代を超えて伝えられる物語がある。それらは口承伝承で伝えられたり、紙によって書くことで伝えられたりしてきたが、現代の子供たちは他のテクノロジーに囲まれて暮らしている。そのため、伝統的な物語を楽しむにも、テクノロジーを使う必要があるのだ。つまり、テクノロジーの発達によって、物語や家族から離れていってしまった子供たちを、我々は再び取り戻すというわけだ。ゲームによって年長者と若者の間の溝を埋めることができると我々は考えている。
でも、一番重要なのは面白いゲームを作ることであり、何よりもストーリーテリングに焦点を当て、家族で共有できるゲームを作ることだ。その結果として、これまでのゲームとは異なった経験を与えたい。特に今回はアラスカン・ネイティブの人々とその正統な文化を理解することが目的だ。
そのため、ゲームの開発過程も本物の共同作業であり、プロジェクトは時間をかけたエスノグラフィーから始まっている。我々はInupiatの長老の元に足を運び、博物館を調査して、語り部や子供たちと何度も話し合ってきた。そして、本作の共同開発者であり、パブリッシャーであるUpper One Gamesも、アラスカのアンカレッジのネイティブが所有している企業だ。
ゲームを作る過程で我々は多くの時間をアラスカで費やした。Inupiatの長老やコミュニティのメンバーと話し合い、彼らがどういった物語を作り上げてきたかを明らかにしていったのだ。そして、我々は彼らの最も有名な物語である「Kunuuksaayuka」を選択した。それはブリザードによって永遠に支配された世界を舞台にした少女と狐の物語だ。
以上のように本作は面白いゲームであると同時に、非常に深い背景を持った作品になっている。アラスカの人々、文化、物語といったものを真剣に取り扱っている。本物の物語であり、彼らの文化そのものなのだ。
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――では今回は、どうしてアラスカン・ネイティブの文化を取り上げたのですか?そしてまた2Dプラットフォームというゲームジャンルを選んだのはなぜですか?
Larry Goldberg:
それにはいくつかの理由がある。そもそも我々はアラスカの文化を表現したかった。さらに彼らのストーリーがビデオゲームと完璧にマッチしていた。素晴らしいストーリーとそれに横たわるテーマである柔軟性や相互関係、人間と自然の信頼関係。我々はこれらはすべての文化が持っている普遍的なテーマだと考えている。
そして、ホッキョクグマや氷山の裂け目、厳しい気候、ボスキャラクターにふさわしいブリザードマンといった登場キャラクターたちも、すべて伝統的なビデオゲームで馴染みのあるものばかりだ。それらのキャラクターとストーリーに加えて、自然環境に焦点を当てるために、我々はプラットフォームというジャンルを選んだのだ。
――どういったゲームに影響を受けているのですか?
Larry Goldberg:
現代的なプラットフォームゲームに影響を受けている。例えば、『Limbo』、『Braid』、 『Journey』といった丁寧に作りこまれたパズルと美しいビジュアルを兼ね備えたインディーゲームのファンには、ぜひともプレイしてもらいたい。また『ICO』のようなゲームプレイと共に物語を感じられるようなゲームの影響もある。
――次のゲームでは、他の地域の文化を扱っていくのですか?
Larry Goldberg:
まずは本作を成功させたい。そして、続編やモバイルの移植といったことも検討している。今のところは、アラスカの文化をさらに深く掘っていきたいが、その後に他の文化も扱っていきたい。先ほど話した通り、我々はとても大きなスタジオで働いていたので、そういった風に1つのタイトルを展開していくことは慣れている。
――日本に向けたローカライズの予定はありますか?
Larry Goldberg:
イエス!このゲームはネイティブのボイスと同時に英語の字幕が表示されるようになっている。英語のテキストは簡単にローカライズできるため、ぜひとも日本語バージョンは作りたい。