『ボクと魔王』音楽プロデューサー土井潤一にライブ後直撃インタビュー

土井氏の『ボクと魔王』に対する想いをはじめ、好きなキャラクター、思い入れのある1曲、エンディング曲「HigherBreath」の秘密についてなど、『ボクと魔王』ライブの終演後にお話をうかがえました。『ボクと魔王』ファンの皆さんはお見逃しなく!

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『ボクと魔王』音楽プロデューサー土井潤一にライブ後直撃インタビュー
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土井氏の『ボクと魔王』に対する想いをはじめ、好きなキャラクター、思い入れのある1曲、エンディング曲「HigherBreath」の秘密についてなど、『ボクと魔王』ライブの終演後にお話をうかがえました。『ボクと魔王』ファンの皆さんはお見逃しなく!

―― ライブお疲れさまでした! 今回のライブはファンのみなさんの署名活動によって実現しましたが、本当にみなさんの愛にあふれる応援の声がたくさんありましたね。

土井:ありがとうございます。本当にうれしかったですね。僕としては、みなさんの応援に、音楽を通して応えていけるものがあれば応えたかったという感じです。

―― このライブは、本業とはまた別に企画されたものになるのでしょうか。

土井:僕の事務所にもアーティストは所属してますので、ここ(会場の恵比寿天窓.switch)でうちのアーティストのライブをやったりもするんですよ。でも僕が出演者になるってことは基本ないので、そういった意味では確かに本業ではないですね。僕はプロデュース業や社長業をやってないと、会社が回っていきませんし(笑)。でも、何か音楽を通して応えていけるものがあれば応えていきたい、というのは僕のポリシーですね。

―― ファンの声に応えるといえば、『ボクと魔王』のサントラも、ファンの皆さんの声があったから発売されたんですよね。

土井:そうですね。まさにその通りです。実際、CDはある程度売れないと赤字ですけど、初のPS2作品で、しかも音楽と効果音をすべて任せていただいたタイトルってことで、僕たちの記念としても出しておきたいなというのもあったんですけどね。予想以上に皆さんに手に取っていただけたのでよかったです。事務所としても、作品がひとつ形になって残ったし、音楽を聴きたいとおっしゃってくれたユーザーの皆さんにも届いてよかったなと思っています。

―― サントラの時は直接ファンの人の顔が見えなかったですけど、こういうライブイベントですと、直接ファンの方の顔が見えますから、嬉しさもより一層大きかったのではないでしょうか?

土井:そうですね。やっぱり嬉しいです。あと、ライブでもお伝えしましたけど、自分の中では、お客さんの層がもうちょっと年齢上の男の人が多いのかなって思ってたんですよ。

―― 「思ったより若かった!」と驚かれていましたよね。

土井:ええ。あと、女性が多かったのにも驚きました。お客さんの層としては、40近いおじさんが多いのかな?って勝手に思ってて(笑)。意外と女性が多かったので、びっくりしましたね。別におじさんが来たらイヤだとかそんなことは全く無いんですけど(笑)。リアルタイムでゲームを遊んだことのない方も来ていただいていたのかもしれませんね。それがすごく嬉しかったです。

あとは、13年も前の作品なのに、当時リアルタイムで遊んでくれて、こうやってライブに足を運んでくれた方ももちろんいると思うので、そういった意味では両面嬉しかったですね。

―― ぜひお聞きしてみたかったのですが、土井さんが『ボクと魔王』の中で好きなキャラクターはいらっしゃいますか。

土井:僕はやっぱりスタンかな。魔王中の魔王だ!って言い張ってるのに、影で、そこから出られないっていう、そのギャップがたまらないっていうか。

―― スタンって悪いことをしようとするんですけど、やることは、家の中のマットを隠したりで(笑)。

土井:そうそう、憎めないキャラなんですよね(笑)。魔王って言っておきながらけっこうオチャメな感じがしてね。

―― そういうところが印象に残る作品なんでしょうね。ほかにも個性的なキャラクターが多いですし。

土井:みんな個性的ですよね。でも、自分の中で一番印象に残ってるのはスタンですね、やっぱり。僕は最初、『ボクと魔王』ってもうちょっと怖いRPGなのかなと思ってたんですよ。それがけっこうオチャメなやつが多くて。そのギャップが面白くて、印象に残ってます。

あと話がそれちゃいますけど、僕、ゲームが完成する前の記憶がけっこう多いんですよ。例えば、高原をルカが走ってたら、本来なら行けない壁の中をルカが突き抜けていっちゃったりとか(笑)。ダンジョンに行ったら、潜れないところに潜っていっちゃったりとか。そういう本編とは関係ないことをよく覚えてたりしますね。

―― 土井さんの中で、特に思い入れの深い『ボクと魔王』の楽曲はありますか?

土井:ハイランドの曲は、自分で作ってる時にけっこう悲しい気持ちになったのが記憶にありますね。どの曲が好きかっていうと、テイストも色々違いますし、すぐにこれとは言えないんですけど、一番記憶に残ってるのはハイランドですね。作ってる本人が、作りながら寂しい気持ちに入っていっちゃって……それは強く覚えてます。曲を作る時は、どの作曲家もそうだと思うんですけど地味な個人作業なんですよ。いいメロディできたな、でも悲しいメロディだな……と思いながら、どんどん悲しい気持ちに入っていっちゃったことをよく覚えてますね。

―― ずっと気になっていたのですが、エンディングの曲「HigherBreath」は何語なのでしょうか?造語なんでしょうか?

土井:あれはよく聞かれるんですよね。1回秘密を教えちゃおうかなと思ったことはあったんですけど、あれは……すいません、永遠の秘密にしておいたほうがいいかなと(笑)。

―― ええっ(笑)。

土井:でもひとつ言えるのは、ちゃんと意味があるんですよね。いわゆる単純に音だけ並べたわけじゃなくて、ある法則にのっとって聴くと、なにかメッセージは入ってるんです。

―― でもそれは永遠の秘密、と(笑)。

土井:はい(笑)。

―― メッセージを読み解いたら、答えていただけますか?

土井:もちろんです。でもまず読み解けないと思うんですよね。実は僕も、その「法則」にのっとって聞いてみたことが一度もないんですよ。先に歌詞を作って、それをどう表現しようかなと思って色々とフィルターにかけていったんです。でもそれは機械的にフィルターにかけたわけではなくて、僕の頭の中で「こうしてこうやったら結果こうなるよね」、という形なんです。

ただ、その結果を実際に、時間軸を戻して聞いたわけじゃないんです。「何かの言葉を逆さまに言ってるんじゃないか」ってよく言われたりもするんですけど、実際あれは逆さまにしてもメッセージらしいものは聞こえないと思うんです。……今のはちょっとヒントになるかもしれませんけど。実際何かを逆さまにしたものではないです。もし答えを解読できた人がいたとしても、答えが正しく聞こえるかどうかはわからないですね。

―― もしその法則が分かったとしても、分かった人は胸にそっとしまっておいてほしいですか?

土井:いえ、「きっとこういうこと言ってるんじゃないか」ってのはご自由に色々と妄想していただければと思います。逆に、答えを言わないほうが、『ボクと魔王』がずっと続くのかなと思ってるところがあって。ごめんなさい、ちょっと秘密にさせてください。

―― では、秘密ということで。ちなみにライブ中、「HigherBreath」は初めにデモ曲として出されたとおっしゃっていましたけど、その時から歌は入っていたんですか?

土井:いえ、最初は歌は乗ってなかったですね。曲だけです。

―― ゲームがある程度出来てきてから、このメッセージを入れてやろうと。

土井:そうです、その通りです。最初は人の声は入ってなかったんですよね。あそこを他の楽器でやってたんですよ。ちょっと無国籍っぽい……何て言ったらいいのかな。あれは、ラッパのような管楽器系の音と、実際に存在しないバグパイプと、3種類くらい混ぜて鳴らしてるんですよ。実際ああいう音は存在しないんですけどね。

あれは先ほどライブでもお伝えしたんですけど、プロデューサーから「中世ヨーロッパっぽいんだけど無国籍な感じ」って言われて、とりあえず自分の音楽性の中で許せるものは混ぜてしまおうと思って。これはどうでしょうと出してみて、プロデューサーの反応を見ようと思ったんですよ。自分としてはちょっと冒険した感じです。

最初のデモ曲を出す時って難しいんですよね。やりすぎなくらいで丁度いいか、全然違うって言われるのか、ケースバイケースなんですけど。あの時は、自分としては、「なんでこのリズムにこの楽器が入ってるの?」とか言われても別にいいやと思って。まず、中世ヨーロッパに無国籍って、オーダーの時点ですごかったですからね(笑)。じゃあ自分もそういう方向で返してみようかなと。ちょっと余談になっちゃいますけど、デモ曲を出す時は自分の中の解釈だけじゃダメだと思ったので、他のクリエイターにも1曲ずつ書かせて、どうでしょうと提案してみた感じですね。

―― ありがとうございます。では最後に、『ボクと魔王』ファンのみなさんにメッセージをお願いいたします。

土井:本当に、13年経った今も、『ボクと魔王』の音楽を愛してくれている、温かく聴き続けてくださっているというのは、言葉では言い表せないくらい、作った者としては嬉しいですね。『ボクと魔王』という作品にも恵まれたのかもしれないですけど、きっと『ボクと魔王』を気に入ってくれるお客さんというのは、あたたかい人が多いんだろうなと思います。それを今日、すごく感じました。僕のつたないトークもうんうんって言いながら聞いていただけて、本当に嬉しいなあと思って。音楽を作っていた当時には、まさかこういう日が来るとは全く思っていなくて……。13年も経ってライブが実現するとは思ってなかったですよ。

僕は、最初は音楽を気に入ってくれた方の声に応えたいなというところが一番大きかったんですけど、実際ライブをやってみて、『ボクと魔王』の曲をピアノアレンジするとこういう風になるんだ、っていう驚きがあったんですよ。野崎さんからデモができあがってきて、こんなにかっこよくなるんだ!こんなイメージになるんだ!っていろんな発見があったんです。

なので僕としては、ファンの皆さんのためにやっただけではなくて、自分のこれからの音楽にすごくフィードバックしてくれる、そういうライブになったかなと思います。そういった意味でも、今回こういう場を作ってくれたファンの皆さんに感謝していますね。こういうライブが実現できて、本当にうれしかったです。ありがとうございます。

―― こちらこそ、今日は本当にありがとうございました。

《hide/永芳英敬》

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