作者の得能正太郎氏は、かつてゲーム会社に勤務した経歴も持ち、その実体験に基づいた描写も人気を呼ぶひとつの理由となっています。また、一見大雑把でパンツ姿で寝泊まりしてしまうキャラクターデザイナー「八神コウ」が後輩の育成に厳しい一面を見せたり、アートディレクターを務めているしっかり者の「遠山りん」が、社内でも遠山を「コウちゃん」と愛称で呼ぶなど、型通りではないキャラクター造形も見逃せないポイントと言えるでしょう。
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そんな本作の第2巻が、本日3月27日に待望の発売日を迎えました。また同時に「コミックシーモア」にて電子書籍版も発売されているので、現物派の方は書店や通販を活用し、デジタル派の人は電子版の購入を検討してはいかがでしょうか。
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今回は記念すべき2巻の発行を祝い、「NEW GAME!」の魅力や見どころ、そして今後の展開などを得能氏に伺う直撃インタビューを行いました。「NEW GAME!」ファンはもちろんのこと、気になっていたもののまだ読んだことがないという人も、このインタビューを通して「NEW GAME!」が持つ魅力の一端に触れてみてください。
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──本日はよろしくお願いします。「NEW GAME!」は、かつてゲーム会社に勤務していた経験が元になっていると伺いましたが、その経験を活かして描こうと思った経緯やきっかけを教えてください。
得能氏:会社ものにしようと思ったのは、最初の芳文社の担当さんとの打ち合わせでその話で盛り上がったことと、前作でファンタジーものを描いていて、その時に世界観設定やちょっとした辻褄合わせなどが重荷に感じていて、実際に自分が経験した舞台でなら順当に描いていけばそのまま全体の辻褄が合うので、お話作りの難易度が数段減ってラクだから、というのがありました。
──方向性を変えたい気持ちがあったんですね。
得能氏:あと、一週間差で先に別の出版社から依頼がきていて、実はそちらの方をメインに据えるつもりでした。なのであくまで自分が気晴らしに楽しく描ければいいやという位置づけで始めた漫画で、それで学園ものやアイドルものなどの売れ線のテーマから外れていたというのもあります。その別の漫画の方は、先方とそりがあわずお蔵入りになってしまったのですが、まさか「NEW GAME!」がこんな形で盛り上がるとは思っていませんでした。
──もう一方の話があったからこそ生まれた「NEW GAME!」だったんですね。ちなみにゲーム会社に在籍していた頃は、どのようなお仕事をされていましたか?
得能氏:先述の理由から、辻褄合わせがラクなので今のところほぼほぼ青葉と同じ仕事ですね。キャラ班だったので、最初の一週間で3Dを覚えさせられて、あとは上司の作った3Dモデルの仕様と合わせてNPCを作り続けていました。色変えも結構やりましたが、作中では触れていませんね。
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後半は脇役、作中で言うところの重要NPCを自分でデザインして自分でモデリングするという個人作業みたいな感じになっていました
──青葉のポジションも、実体験に基づくからこそなんですね! では、現在の漫画家という仕事をするにあたって、当時教わったことが活きている面などはありますか。
得能氏:今に活きている点は、スケジュール管理と、あとどうしてもリテイクをたくさん受けるのが会社じゃないですか。ですので、そこでリテイク慣れしたことですかね。商品として表に出るまでは完成ではないという意識がついたので。カッコよくシャシャっと完成させられればそれが理想ではあるんですが、右往左往してでも、最終的にクオリティが目標値に達していればそれが正しいという意識があります。
あとはそれを通すための人間関係がすごくめんどくさい、ということですね。集団制作は本当に大変だと思います。現役の方は尊敬します。
──ゲーム会社へ就職しようと決めたきっかけとなったゲームなどはあったのでしょうか?
得能氏:これも青葉と同じく好きだったゲームを作っていた会社に入社したので、ここでは伏せさせてください(笑)。ただ当時は、ゲームが好きというよりも、絵が好きという理由が大きかったので、グラフィックのテイストが好きで入社したという感じでした。どちらかというと、入社後の方がゲームをたくさんやりましたね。
──ちなみに、得能さんが注目されているゲームクリエイターの方はいますか?
得能氏:海外のクリエイターですが、『ギアーズオブウォー』シリーズのクリフB氏の新作はまだかなとずっと期待している状況です。
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──「今日も一日がんばるぞい」という1シーンが話題となりましたが、どのような心境でしょうか。
得能氏:嬉しいような、嬉しくないような複雑な心境ではありましたが、一旦ブームが過ぎた今思うこととしては、いかにお客さんに覚えてもらえるように変なタイトルにしたりして試行錯誤しているこの業界の中で、「ぞい」といえば「ああ、あの作品かな」と、少なくとも内容は知らなくてもあのコマを思い浮かべる人は多いと思うので、期せずして共通の認識がとれたことは、運がよかったですね。
──青葉をはじめとする「NEW GAME!」のキャラクターの面々はすんなりと生まれましたか? また手こずったキャラなどはいましたか?
得能氏:ビジュアルはまぁ、漫画の女の子の外見なんてどの作品も十分可愛いですし、性格がしっかり立っていれば、ビジュアルはあとからついてくるもの、という認識でいるので、デザインはわりとすんなりやってしまいます。ただその性格作りは、連載中の今でもずっと試行錯誤の連続ですね。
僕自身の作品の好みとして、キャラクターが好きになれればその作品も好きになれるので、1番重点に置いているのが性格作りで、ほんとうにどうすれば読者にわかってもらえるのか、その前に自分がそのキャラのことをわかって好きになれるのか、ずっと考えています。人気のないキャラの方がてこずっていますね。そういう意味で読者との認識の共通はとれているかなと安心はしていますが、みんな好きになってもらいたいですね。
──「好きになる、なってもらえるようにする」というのは、確かに重要な視点ですよね。では得能さんが、「NEW GAME!」全体を描く際に気をつけているポイントはどのようなものでしょうか。
得能氏:社会人ものですが、読者の方にそのリアルなつらいことを思い出させないようにとはいつも心がけています。会社帰りの読者さんに、毎月雑誌を買ってもらって、ほっと一息つける漫画、というのが想定していたテーマとターゲット層でした。
──疲れた時に、「楽しい」や「可愛い」というのは特効薬になりますよね。そんな魅力が詰まっている「NEW GAME!」ですが、その中でも得能さんが個人的に気に入ってる話や場面などを教えてください。
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得能氏:コウとりんの掛け合いは完全に僕の趣味なので、楽しいです。2巻ではあまりその場をつくれませんでしたが、今後増やしていきたいですね。