──本日はよろしくお願いします。まずは、森さん自身に関してお聞かせください。森さんがゲーム業界を目指そうとしたきっかけや経緯などは何だったのでしょうか。
森氏:あれは確か小学校6年生の頃、校庭を歩いていたら変な光がパーッと……(笑)。
──えっ!?(笑)
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森氏:なんで笑うんですか。僕は今、真剣な話をしているんですよ。それで……七色の光がピカピカとですね(笑)。
──七色の!(笑)
森氏:あははっ。いや正直に言いますと、ゲーム業界に入ろうと思ったきっかけは『ドラクエIII』です。高校時代に遊んだんですが、その時に「あ、ゲームが作りたい」と思ったんですよ。
──『ドラクエIII』が、初めてのゲーム体験だったんでしょうか?
森氏:いえ、ゲームはずっとやってたんですよ。娯楽的なものとして、ずっと遊んでました。ゲーム機をいっぱい持ってる友達と仲が良かったんですよ。で、友達同士の(ソフトの)貸し借りとかはあまりしなくて、誰かの家に遊びに行くことが多かったんですよね。
──遊びを求めて渡り歩く、みたいな。
森氏:そうですね。毎日違うヤツの家に行ってゲームするか、野球したりサッカーしたり。損な少年時代でした。あと、友達の家の近くに空き地があったんですが、そこでよくドロケイ(鬼ごっこの一種)やカンケリを、自分たちだけのオリジナルルールで遊んでましたね。その頃から、ルールを作るのが好きだったのかもしれません。だんだん無茶にもなっていきましたしね(笑)。
──どんなルールで遊んでいたんですか?
森氏:一番キツかったのは、ジャンケン帰宅かな。7~8人くらいで、校門を出た辺りでジャンケンを始めるんです。で、勝ったヤツの家の方向にしかいけないんですよ。それを繰り返して、誰かの家にたどり着くまで続ける遊びなんですけど、学校を出るのが3時過ぎなんですが家に着くのは7時とか8時でしたね(笑)。
──相当過酷ですね!?
森氏:みんな帰る方向バラバラなので、ホント苦労しましたね(笑)。そんな感じで、昔から遊びを考えるのが好きでした。そして高校に上がって『ドラクエIII』と出会ったんですよ。あのストーリー性の強さに感銘を受けて、こういうものを作ってみたいなと思いました。
そこから紆余曲折ありまして、最初は普通に就職したんですがどうしても諦めきれず、そこで稼いだお金を使ってゲームの専門学校へ通いました。当時、バンタンと代アニとアミューズのどこに行くか悩んだんですが、当時私は千葉麗子さんにどハマリしてまして(笑)。
──千葉麗子さん! ゲーム方面では『サムライスピリッツ』などに関わってましたよね。
森氏:ナコルルのコスプレとか、すごい好きでしたね。で、アミューズのパンフレットに千葉麗子さんが「特別聴講生」として出ていたんですよ(笑)。
──それが、選択の決め手になったと(笑)。
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森氏:結局一度も会えなかったんですけどね。「騙された!」って思いましたよ(笑)。でもアミューズに入ったおかけで、山崎理さんや西井正典さんといった方々とお知り合いになれました。あ、石渡太輔もそうですね。
──一度就職しても諦めきれなかった想いの原点は、『ドラクエIII』だったんですね。では、最初はRPGを作りたいという気持ちが強かったのでしょうか。
森氏:RPGもそうですし、格闘ゲームも好きだったのでアクションゲームも作ってみたかったですね。といっても当時は、普通の格闘ゲームではなく、『バーチャロン』みたいなものを作りたかったですね。
──対戦アクション、という感じのものでしょうか。
森氏:そうですね。円形のステージを舞台にしてとか、こういう風に遊んでもらおうとか、色々ノートに書きました。プレイヤーの視点をどこに持っていこうかとかも書いてあって、当時の自分を振り返って「あ、こいつ考えてるじゃねーか」って思いましたね。……自画自賛ですみません(笑)。
──ルールを考えるのが好きという本質は、小さい頃からずっと変わらなかったんですね。その他にも、昔から変わらないスタイルや考え方などはありますか?
森氏:自分で確かめないと気が済まない、というのもありますね。小さい頃から、人の言ったことを鵜呑みにしないようにしてるんです。例えば、「噂の真相」とかって気になるじゃないですか(笑)。
──確かに気になります(笑)。
森氏:全部が全部確認できるとまでは思っていませんが、自分が確認できる範疇のものであれば自分の目で確かめたいなと。それがクリエイターの在り方だと考えています。
──なるほど。
森氏:あと、「(それを表現するには)映画や漫画でもいいんじゃないか」とよく言われることなんですが、僕は「自分の作った世界を遊んで欲しい」んですよ。世界の中に入って楽しんで欲しいんです。この辺りの考え方は、RPGに強く影響を受けた部分なのかなって思いますね。作った世界の上で、色んな人に遊んで欲しいですね。
ゲームなのでルールはありますし欠かせないものでもありますが、そのルールに対してどう感じるか、楽しむかというのは受け取り側の感性であり自由かなと。なので、好きな人だけ残ってくれればいいと思っています。
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──世界を遊んで欲しいという理念があり、その世界を楽しいと思う人に提供していきたいわけですね。
森氏:嫌いなものを無理矢理押しつけられても、無理なものは無理なんですよ(笑)。なので、自分の感性を面白いと思ってくれるかもしれない人たちに向けて、「こういう風に考えてみましたが、皆さんいかがでしょうか」という提案をする努力をしています。
──それが、森さんなりのアプローチの形なんですね。確かに、好き嫌いはとても大事な要素です。
森氏:大事だからこそ、今のオタク業界の風潮はちょっと酷いなと思うんですよね。嫌いなものをやたらとディスるじゃないですか。嫌いなものをいちいち「嫌い」って宣言するよりも、好きなものをもっと好きって言おうよって思うんですよね。
──嫌いと感じるのは、相性の問題もありますから仕方のない話ですが、「嫌い」に立ち止まるより「好き」へ進んだ方が、やっぱり楽しいですよね。個人的にも同感です。
森氏:たまに、構って欲しいのかって感じるくらい延々と「嫌い」を発信する人とかいますよね。嫌いなものは嫌いなまま、無視していればいいと思うんですよ。(それよりも)もっとポジティブになって、好きなものを好きだって押し出した方が本人も周りも楽しめるんじゃないかなって、最近よく感じます。