【レポート】「4star2015」FINAL公演! 4star Primal Orchestra Special Concert

2015年5月3~5日の3日間、4年に1度のゲーム音楽フェス『4starオーケストラ2015』が東京都八王子市で開催されました。本稿では、5月5日にオリンパスホール八王子で行われた、「4star2015 THE FINAL 4star Primal Orchestra Special Concert」公演の模様をお届けします。

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【レポート】「4star2015」FINAL公演! 4star Primal Orchestra Special Concert
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2015年5月3~5日の3日間、4年に1度のゲーム音楽フェス『4starオーケストラ2015』が東京都八王子市で開催されました。本稿では、5月5日にオリンパスホール八王子で行われた、「4star2015 THE FINAL 4star Primal Orchestra Special Concert」公演の模様をお届けします。

この公演では、楽曲のレコーディングや、ゲームメーカー公式のコンサートにも参加しているミュージシャンを中心に結成されたオーケストラ「4star Primal Orchestra」による演奏が披露され、『4starオーケストラ2015』の締めくくりとなるステージが展開されました。また本公演はニコニコ生放送での中継が行われ、多数の視聴者が中継を通じてコンサートを楽しみました。


(左から)4star2015プロデューサー 斉藤健二氏、岩垂徳行氏、古代祐三氏、下村陽子氏、植松伸夫氏、郡正夫氏


■出演者(敬称略)
植松伸夫(ゲストMC)、下村陽子(ゲストMC)、岩垂徳行(ゲストMC、一部指揮)、古代祐三(ゲストMC)、平田志穂子(ゲストボーカル)、志村健一(指揮)、郡正夫(MC)



【4star Primal Orchestra(オーケストラ演奏)】
[Trumpet] 中山浩佑、野口勇介、田中一徳
[Trombone] 島田直道、桐山絵里子、沼尻卓也
[Sax&Woodwind] 近藤淳也(FIRE HORNS)、渡邊恭一、渡辺将也
[Percussion]中村雅哉、加藤大輝
[Drums] 宮本“ブータン”知聡(BLU-SWING, 16-BIT Generator)
[Bass] 蓮池真治(BLU-SWING, 16-BIT Generator)
[Piano / Keyboard] 安保 一平
[Guitar] 宮崎大介
[Chorus]CHiCO(ACE)、霜月はるか、SAK.
[Violin] Yui(コンサートミストレス)
水谷美月、天野恵、谷崎舞、阿部志織、皆川真里奈、ユキナ、新井理穂、荒井桃子、西原梨央
[Viola] 田中詩織、上津原早紀
[Cello] 吉良都、島津由美
(Strings by 東京ヴァイオリン)
[Arrangement] 岩垂徳行、成田勤、渡辺将也、穴沢弘慶、松林徹


指揮者・志村健一氏

最初に演奏されたのは『ファイナルファンタジー』(以下『FF』)シリーズの「プレリュード」。美しいコーラスからはじまり、ハープやドラム、ストリングスも入って演奏が盛り上がっていきます。続いて『FFVI』の「街角の子供達」がストリングスで美しく響いたと思いきや、一転してサックスが高らかに響く、華やかなジャズアレンジに! これは意外性があって格好いいアレンジでした。

ここで司会の郡正夫氏と、作曲家の植松伸夫氏、古代祐三氏が登場します。植松氏は「『FF』のプレリュードはあちこちで演奏されますけど、「街角の子供達」にはびっくりしましたね。こういうアレンジで演奏してもらったのは初めてだったけど、とても良かったです」と話します。なお、郡氏によると、この公演当日(2015年5月5日)は『FF』1作目の発売日(1987年12月18日)から数えてちょうど10000日なのだそうです!植松氏は「10000日ってすごいね!」と驚きを見せていました。

また、郡氏からは「植松さんと古代さんが並んで立つと、どうしてもあの話が出てきますよね」と、古代氏が音楽を担当した『アクトレイザー』(1990年にスーパーファミコンで発売)の話題に。郡氏が「植松さんは、『アクトレイザー』の音楽に驚いて、翌年(1991年)発売の『FFIV』の音色を作り直したそうですね」と話すと、植松氏は「はい。当時のスクウェアって、他のメーカーさんのソフトを色々買ってきて研究していたんですよ。『アクトレイザー』も買ってきて、スタッフ何十人かでプレイ画面を見ていたんだけど、僕は何よりも音楽に驚いてね。ショックでしたよ。スーファミでこんな音が出せるんだ!と。『FFIV』の音楽を作り直そうかなとも思ったんですけど、発売までそんなに日が無いから、作曲をし直すこともできなくて。とりあえず音色だけでももっと良くしようと思って、翌朝から朝6時に出社して、がんばって音色を作り直しましたよ」と当時の思い出を語りました。郡氏から「古代さんは、この話をお聞きになっていたんですか?」と尋ねられると、「はい、噂には聞いていました」と古代氏は答え、すかさず植松氏は「でも、本人の目の前で言うのは初めてですね!」と笑って話します。

「そもそもお2人がステージに並んで立つというのも、なかなか無いですよね」と郡氏が言うと、「たしかに、すごいレアケースですよね」と古代氏は笑って答えます。古代氏によると、実は植松氏よりも古代氏のほうがゲーム業界で仕事をしている期間が長いのだそうです。植松氏が「僕がこの仕事を始める時、すでに古代さんのお名前を知っていましたよ。当時からすでに有名な作曲家さんで、飛ぶ鳥を落とす勢いでしたからね」と話すと、古代氏は「いえいえ、とんでもないです!」と謙遜していました。

MC後には『世界樹の迷宮』シリーズの楽曲から、IVの「戦場 疾風 ~街景 宵闇は温き安らぎ」、IIIの「街景 日輪照らす水面」、IIの「桜ノ立橋」、IVの「戦乱 散るもかなり ~ 戦乱 吹き荒ぶ熱風の果て」が披露されます。熱い戦いが目に浮かぶような疾走感のあるバトル曲「戦場 疾風」や、サックスをメインにゆったり心地よく奏でられる町の音楽「街景 宵闇は温き安らぎ」などの演奏が繰り広げられました。


岩垂徳行氏

続いては岩垂徳行氏の作曲した『グランディア』から、「グランディアのテーマ」「スー走る」「パームの街」「うみねこ亭リリィ」「ニューパーム~わが心のフロンティア」「ガンボの砂浜」がメドレー形式で演奏されます。ここでは作曲者である岩垂氏自らが指揮を担当しました。


『グランディア』の主人公・ジャスティンが暮らしている炭鉱の街の楽曲「パームの街」の演奏では、岩垂氏が帽子をかぶり、ハンマーを使って、アンビル(金属をきたえる際に使う、鉄製の台)を演奏のリズムにあわせて叩くというユニークな演出も入りました。

続いては『逆転裁判3』の「ゴドー ~珈琲は闇色(やみいろ)の薫り」が、しっとり艶やかなサックスの音色をメインにした演奏で響きます。さらに次の『逆転裁判5』の「終幕」では、高らかに鳴り響くリズミカルなサックスに加え、コーラスも入って盛り上がりを見せ、観客からは自然と手拍子が入りました!


平田志穂子氏

続いてはゲストボーカルの平田志穂子氏が参加して、『ペルソナ4』の楽曲が披露されます。爽やかでクールな「Signs Of Love」、元気でポップなナンバー「Your Affection」、そして通常戦闘曲「Reach Out To The Truth」がアップテンポに披露されます。平田氏の魅力あふれる爽やかな歌声が会場に響き渡りました。

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休憩をはさんで、第2部の最初に披露されたのは『キングダムハーツ』の楽曲です。まずはシリーズでおなじみのタイトル曲「Dearly Beloved」が、ピアノで美しくしっとり奏でられます。続く「Traverse Town」はクラリネットをメインにゆったりとした音色で奏でられ、最後の「Hand in Hand」は元気で勢いのある演奏が繰り広げられました。

続いては『聖剣伝説 Legend of Mana』(以下『聖剣伝説LoM』)より、「夢想う遠き日々~セイレーンの歌~」が演奏されます。この楽曲では、ACEのCHiCO氏によるハイトーンボイスの歌唱が披露されました。まさにセイレーンを思わせるような、高く澄みわたる歌声がすばらしかったです。続いて「港町 ポルポタ」が、軽快で元気あふれる演奏で響き渡ります。

ここで『キングダムハーツ』『聖剣伝説LoM』作曲者の下村陽子氏と、次に演奏される『魔界塔士 Sa・Ga』作曲者の植松氏が登場します。郡氏から「演奏をお聴きになっていかがでしたか?」と尋ねられた下村氏は、「『聖剣伝説LoM』は、なんとレアな選曲なんだろうと思いましたね。すごく高い歌声でしたけど、当時はこのように生演奏されるとは思わずに作ったので、歌う人のことをまったく考えていなかったんですよ(笑)。でも、生で聴けてすごく感動しました」と笑顔で話しました。

続いては、『魔界塔士 Sa・Ga』の話題に。植松氏は本作について、「この作品は、8時間でクリアできるように作ったんですよ。なぜかというと、当時スクウェアでは海外旅行をしていたのですが、成田空港からハワイに行くまでの間にクリアできるようにするためです」と裏話を披露します。郡氏が「ということは、時間調整のためにチェーンソー(ラスボスを一撃で倒せる武器)を入れたんですね?」と聞き、植松氏が「そういうこと!」と答えると、会場は爆笑に包まれました。

MC後には『魔界塔士 Sa・Ga』の楽曲が披露されます。勇ましい金管とヴァイオリンのイントロが印象的な「プロローグ」の後、「街のテーマ」が金管の音色でゆったり奏でられます。鳴り響く金管が勇ましい「禁断の塔」、アップテンポで高らかな金管と打ち鳴らされるドラムが熱い「怒闘」と続き、最後の「エピローグ」ではしっとりした木管とストリングスで奏でられたあとに、金管で勇ましく締めくくられました。

続いて、『FFVII』の「ティファのテーマ」と「エアリスのテーマ」が演奏されます。「ティファのテーマ」は、ピアノと鉄琴、木管をメインにやさしく穏やかに奏でられ、ティファらしい可愛らしさと繊細さが表現されていました。「エアリスのテーマ」はストリングスの壮大な響きで美しく、せつなく奏でられます。

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ここで、次に演奏される楽曲を手掛けた岩垂氏、下村氏、植松氏が登壇します。郡氏から、4starオーケストラ2015を振り返ってみていかがでしたかという質問がされ、それぞれが感想を話しました。
岩垂氏「僕は2日目の4star ensuite Orchestraのほうにも半年前からずっと携わらせていただいていたのですが、もう終わってしまうのか、という寂しさでいっぱいです。とてもいい体験をさせていただきましたし、僕自身も本当に楽しませていただきました」
下村氏「こういう音楽祭のようなイベントに参加させていただいて、私も楽しませていただきました。こういう素敵なイベントが今後もどんどん続いていくように、今後も応援をよろしくお願いいたします!」
植松氏「これまで作ってきた音楽が、これだけたくさんの方々に愛されているのがとても光栄に思います。もし今日の演奏を聴いて、僕もステージに上がってみたい、作曲家になってみたい、こういうイベントを企画してみたいと思う人は、ぜひどんどん盛り上げていってほしいですね。4starのようなゲーム音楽イベントがずっと続いていくことを望んでいます。これからもよろしくお願いします!」

最後は、ゲームの終盤で流れるバトル曲を中心にした楽曲が連続して披露されます。『FFIV』の「巨人のダンジョン ~ 最後の闘い」が疾走感のある演奏で繰り広げられた後、『ライブ・ア・ライブ』の「MEGALOMANIA」が披露されます。この楽曲では、途中に宮本“ブータン”知聡氏による華麗な熱いドラムプレイが入り、観客からは拍手が送られます。さらに、アップテンポで鳴り響く金管とドラムが心地いい『グランディア』の「戦闘3」が演奏され、『ペルソナ3』のラストバトル曲「全ての人の魂の戦い」が披露されます。リズミカルに入るピアノとドラム、ストリングスのかけあいがとても心地よく、さらにコーラスも入って熱い演奏が繰り広げられました。


(左から)CHiCO氏、SAK.氏、霜月はるか氏

続いて披露されたのは、『FFIX』の主題歌「Melodies Of Life」です。しっとり美しい演奏とともに、CHiCO氏、SAK.氏、霜月はるか氏、3名のコーラス陣が情感たっぷりに美しく歌い上げます。演奏が終わると、会場は大きな拍手に包まれました。

観客の声援に応えて、アンコールに突入します。まずは平田志穂子氏が再登場して、『ペルソナ4』のエンディングテーマ「Never More」。平田氏の美しいボーカルが響きわたります。続いては岩垂氏が登場し、『ルナ シルバースターストーリー』から「風のノクターン Lunar's Boat Song」の英語バーションが披露されます。岩垂氏の指揮による演奏と、コーラスが織り重なっての美しいハーモニーが観客に贈られました。


神永大輔氏

ここで、尺八奏者の神永大輔氏がサプライズで登場! 『聖剣伝説LoM』の「Song of Mana ~Opening Theme~」が、神永氏による爽やかな尺八の音色と、美しいコーラスをメインにした演奏で響きました。続いて、『FF』でおなじみの「チョコボのテーマ」が、ビッグバンドのような賑やかなジャズアレンジで明るく楽しく響き、会場はより一層大きな盛り上がりを見せます。

そして最後は、『ファイナルファンタジー ヴォーカルコレクションズ』の「Pray」が、原曲と同じ日本語歌詞で歌われます。CHiCO氏、SAK.氏、霜月はるか氏による美しいボーカルと熱い演奏で美しく壮大に締めくくられると、会場からは割れんばかりの拍手と大歓声が贈られました。


最後に、会場全体を写しての記念撮影が行われ、大盛り上がりの中「4star2015 THE FINAL 4star Primal Orchestra Special Concert」公演は幕を閉じました。

3日間にわたって開催された『4starオーケストラ2015』。筆者は3日間ともに参加させていただきましたが、本当に盛りだくさんのイベントで楽しかったです。アイリッシュ、バンド、オーケストラ、吹奏楽など様々なコンセプトによる多数のタイトルのゲーム音楽が披露され、また、多くの作曲家やアーティストの皆さんが参加し、まさに「お祭り」と呼ぶにふさわしい楽しさにあふれていました。

次回の4starオーケストラは、4年後の2019年開催とだいぶ先のことになりますが、なんと2年後の2017年には「Return To 4star」(仮称)というイベントが開催予定とのことです。次の4starには少し早めに会うことができそうですね。いちゲーム音楽好きとして、楽しみにしています。

なお、本稿でご紹介しました「4star2015 THE FINAL 4star Primal Orchestra Special Concert」公演は、ニコニコ生放送での視聴が可能です。有料となりますが、実力派アーティストの皆さんによる素敵なゲーム音楽の演奏が楽しめますので、ご興味をお持ちの方は、ぜひご覧になってみてください。チケット購入は2015年5月31日まで、視聴は2015年6月30日までとなっています。

[ニコニコ生放送URL]
http://live.nicovideo.jp/watch/lv218502792

(C)Yutaka NAKAMURA

《hide/永芳英敬》

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