【hideのゲーム音楽伝道記】第14回:『大神』負ける気がしないラストバトル曲「太陽は昇る」など熱い名曲の宝庫

ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第14回目となる今回は、『大神』についてご紹介したいと思います。

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【hideのゲーム音楽伝道記】第14回:『大神』負ける気がしないラストバトル曲「太陽は昇る」など熱い名曲の宝庫
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第14回目となる今回は、『大神』についてご紹介したいと思います。


『大神』は、2006年4月20日にプレイステーション2でカプコンから発売された作品です(開発はクローバースタジオが担当)。2009年にはWii版、2012年にはプレイステーション3で『大神 絶景版』と銘打たれたHDリマスター版が発売されました。

むかしむかし、人と自然が共存して平和に暮らしていた時代。自然に囲まれた平和な国「ナカツクニ」に、太古の昔に封印された怪物・ヤマタノオロチが復活してしまいます。神木に宿る精霊・サクヤ姫は、ナカツクニを救うべく、その昔、ヤマタノオロチとの戦いで勝利したものの、傷ついて実体を失ってしまった大神・アマテラスを、復活の儀によって現世に呼び戻します。アマテラスは、ヤマタノオロチを倒し、ナカツクニの平和を取り戻すため、さすらいの絵師・イッスンと共に旅に出る……という物語です。


アマテラスとイッスン


『大神』の物語は日本の神話や昔話をモチーフにしており、グラフィックは墨絵タッチで描かれた和風の世界観になっています。そして音楽は三味線、尺八などの和楽器がふんだんに使われており、全体的に和風のサウンドになっています。ゲーム音楽でここまでたくさん和楽器が使われているのは、非常に珍しいと思いますね。

本作の音楽は、メインコンポーザーを務めた上田雅美氏をはじめ、山口裕史氏、グローベス明里(海田明里)氏、近藤嶺氏が担当しており、曲数は200曲近い大ボリュームになっています。サウンドトラックは5枚組という代物です!

本作には印象的な楽曲が多数あるのですが、特にラストバトルからエンディングにかけての音楽は、演出面も含めて非常に素晴らしく、感動的なのです。今回は、僕が『大神』で特におすすめな楽曲をいくつかピックアップしてご紹介していきたいと思います。

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■妖怪退治(作曲:上田雅美氏)


アマテラスが妖怪と戦う際に流れる、通常戦闘曲です。祭り囃子のようなイントロから始まり、続いて妖気が漂うような、おどろおどろしい旋律。ドンドコドンドコという和太鼓のリズム、吹き鳴らされる笛の音といった、非常に凛とした格好良い和風サウンドが堪能できますよ。さらには「いよおおおーーーーッ!」という歌舞伎のような掛け声も入ります! このテンションの高さはたまらないものがありますね。楽曲の後半には再び祭り囃子が入ってくるのですが、戦っているというよりは、アマテラスが妖怪と戯れているような印象になります。何度も聴けば聴くほど、味わい深くなってゆく楽曲です。

■神州平原 其の一/神州平原 其の二(作曲:上田雅美氏)


序盤に訪れるフィールド「神州平原」で流れる楽曲です。ここを最初に訪れた時には、神州平原は呪われていて音楽も悲しげなのですが(「呪われた神州平原」という楽曲が流れます)、呪いを解いた後は明るく華やかで、雄大な楽曲になります。この楽曲を聴きながら平原を駆け回るのが楽しいです!

なお、本作のフィールド曲は、ゲーム中の時間帯によって、楽器が増えるという仕掛けがあります。「神州平原 其の二」では打楽器や鈴などの楽器が増えて、より華やかな音色が楽しめますよ。

■両島原 其の一/両島原 其の二(作曲:山口裕史氏)

ゲーム中盤に訪れる、広い大海原をのぞむフィールド「両島原」で流れる楽曲です。長く旅を続けてきて、様々な苦難を体験しながらも、使命感を持って前に進もうとする――。そんなアマテラスの雄姿を表すかのような力強さが、勇ましい金管楽器と和楽器の音色で奏でられます。僕がこの楽曲を初めて聴いた時には、その美しさに心が震え、しばらく鳥肌がおさまりませんでした。『大神』のフィールド曲の中では特に印象深い1曲です。

■Reset ~ありがとうバージョン~(編曲:山口裕史氏)

本作のエンディングテーマ「Reset」(詳細は後述)のアレンジバージョン。ラストバトル前のイベントで流れます。ラスボスの攻撃によってアマテラスはピンチに陥ってしまうのですが、とある出来事によってアマテラスは力を得て、再び立ち上がる……という、感動的なイベントになっていますよ。この楽曲が流れるイベントは、音楽のクオリティはもちろん、演出面も含めて本当に素晴らしいと思います。ぜひゲームをプレイして聴いてみてもらいたいです。

なお、この楽曲の編曲者・山口裕史氏のインタビュー記事によると、山口氏はこの楽曲を作りながら涙を流していたそうで、締め切りが間近だったにもかかわらず、感極まってなかなか手が動かせなかったのだそうです。山口氏の想いがたくさん詰まっているからこそ、これほど素晴らしい楽曲になったのでしょうね。

■太陽は昇る(作曲:近藤嶺氏)

本作のラストバトル曲です。この楽曲なくして『大神』は語れません! 先ほどの「Reset~ありがとうバージョン~」が流れる感動的なイベントの直後にこの楽曲が流れはじめるのですが、イントロから非常に熱く、まさに太陽を思わせるようなアマテラスの神々しさ、勇ましさが完璧に表現されています。とにかく熱く躍動感あふれるサウンドで、聴いていると血がたぎります。完全にアマテラス優位なイメージなので、ラスボスに負ける気がまったくしませんね!(笑) この楽曲を初めて聴いた時の興奮、胸の高鳴りは忘れられません。ここまで主人公側に寄った、負ける気がしない楽曲というのは、古今東西のゲーム音楽を見渡してみてもそうそう無いんじゃないかなという気がしますね。ゲーム音楽の歴史に残る珠玉の名曲だと思います。

ちなみに「太陽は昇る」は、上田雅美氏作曲の「サクヤ姫のテーマ」をアレンジしたものになっています。「太陽は昇る」があまりにも有名なのでそれ単体で語られがちなのですが、「サクヤ姫のテーマ」も、優しく美しい印象の穏やかな楽曲で、お気に入りの1曲です。

■「Reset」(作詞:TAK&BABY氏、作曲:JUN氏、編曲:竹下欣伸氏)

平原綾香氏が歌う、本作のエンディングテーマです。CMソングとしても使用されました。 「Reset」は本作のためだけに作られた書き下ろし楽曲で、平原氏は 『大神』のイラストやシナリオに目を通し、かつゲームをプレイして、作品の世界観をきちんと把握したうえで楽曲を制作したのだそうです。その甲斐あってか、『大神』の世界観に非常にマッチした素敵な楽曲になっています。

この歌は、“桜” をイメージした、せつなくも力強い想いが、しっとり美しく歌いあげられています。一聴するとせつない歌なのですが、僕はこの歌にはとても前向きなメッセージが込められているように感じています。僕はゲームを初めてクリアした当時、スタッフロールを見ながらこの歌を聴いて、心地よさと切なさが混じりあったような、不思議な充実感を味わうことができました。とても大好きで、今でもよく聴いている1曲です。

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『大神』には、和風の美しい世界観、個性的なキャラクターの数々、筆を走らせることで様々な奇跡を起こすことができる「筆しらべ」などなど数多くの魅力がありますが、その中でもゲームの魅力を最大限に引き立てている重要な要素が音楽だと思います。『大神』を未プレイの方は、ぜひゲームとあわせて音楽を堪能してもらいたいです。

また、『大神』は、イッスンとアマテラスのコミカルなやりとりに笑ったり、様々な登場人物たちと触れ合ったり、美しい自然を堪能したり、アマテラスの可愛らしい仕草に癒されたり……とっても楽しくて、あたたかみのあふれる作品です。そして、ゲームの最後には非常に感動的な展開が待っています。この作品をプレイし終えた時には、きっとあなたの心の中にも、素敵な思い出が残るのではないかと思います。ご興味をお持ちの方は、ぜひ大神・アマテラスとなって、イッスンとともにナカツクニを駆け巡ってみてくださいね。



なお、PS3版の『大神 絶景版』は現在サマーセール実施中で、ダウンロード版が1,384円(税込)と約半額になっており、お得に購入することができます。セール実施期間は2015年9月1日(火)までとなっていますので、この機会をお見逃しなく!

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【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。最近スマホに変えたので『ねこあつめ』をプレイ中。ボールを持ってごろんごろんするネコちゃんが可愛すぎてたまらんです(笑)。

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

《hide/永芳英敬》

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