最近ではコナミの小島監督との共同プロジェクトがキャンセルになったり、「パシフィック・リム2」の雲行きが怪しくなるなど、そのニュースはゲーム好きにも届いていることでしょう。
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そんな彼の最新作「ストレイン 沈黙のエクリプス」が日本に上陸します。本作はデル・トロ監督が放つ初のテレビシリーズで、吸血鬼×ゾンビ×エイリアンが融合した様な謎の生物を科学的に描くSFパニックアクション。日本では9月9日からデジタル配信もはじまり、11月6日には20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンからBlu-ray/DVDが発売します。
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そこで今回は「ストレイン 沈黙のエクリプス」の日本上陸を記念し、デル・トロ監督が「吸血鬼神話の現代版」と語る本作の魅力について迫っていきます。
旅客機の乗客206人が謎の死を遂げ、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の職員が調査に乗り出すところから物語はスタート。CDCの優秀な疫学者・エフ、同僚であるノーラとジムは、なぜ乗客の大半が死に至ったのか原因を究明すべく立ち上がります。しかし、すぐに事件は航空機側のミスであると片づけられ、チームは解散。納得のできないエフは独自に調査を続け、生き残った4人のうち1人と接触します。そこで目の当たりにしたのは、人をまるで吸血鬼のような化け物に変貌させてしまう謎の奇病でした。
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一方、乗客の死に混乱する空港から不思議な「棺」を運び出すよう依頼される青年・ガス、インターネットや電話回線を遮断するよう頼まれたハッカー集団の女性・ウェルダース、事件とは無関係そうに見えながら、いち早く街に起こった異変を察知する衛生局の職員・ヴァシリー。その背後にはドイツ人・アイヒホルストと、病に侵された大富豪・パーマーの存在が。奇病を巡る事件の中で登場人物たちは時に相反し、時に手を取り合いながら、複雑に絡み合う運命を辿っていきます。
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なかでも骨董店を営むセトラキアンは、物語の中でも特に重要な人物。事件が発生した直後にエフたちへ助言のような警告のような言葉を残すなど、吸血鬼と化してしまった人間への対処にも手慣れた様子をみせます。杖代わりに剣を携え、敵を一刀両断する姿は幾多の戦場を潜り抜けた老兵の貫禄を感じさせますね。
非情な判断も容赦なく下すのは、わずかな隙が深い後悔に繋がると知っているから。常に冷静そうに見えるセトラキアンも心の奥底には激しい感情を抱えており、その理由は少しずつ明らかになる彼の過去に大きく関係しています。
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セトラキアンは、吸血鬼のような謎の生命体を「ストリゴイ」と呼びます。さまざまな神話に伝わる吸血鬼の名称であり、『ファイナルファンタジー』シリーズや『ドラゴンズドグマ:ダークアリズン』などゲームのモンスターとしても見かけますね。
本作のストリゴイは私たちがよくイメージするような吸血鬼と同様、異常ともいえる筋力と、銃で撃たれる程度では倒れない回復力の持ち主。噛まれて血液を抜かれたら吸血鬼になってしまう、銀製の武器や紫外線(日光)に弱いなどの弱点もイメージ通りでしょう。
こうした「お約束」はそのままですが、「吸血鬼になった人はどうやって生きてるの?」「吸血鬼といえば昼間は棺桶で眠ってるけど、日中はどこにいるの?」といった部分には、現代的な理由付けが行われています。わずかな傷からも吸血鬼化が始まり、まるで伝染病のように広まっていく様についても「なるほど!」と思わされました。
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そんなストリゴイへの主な対抗策は頭と首の切断、脳の破壊、一定時間紫外線に当てるなど。当初こそ奇病の蔓延を食い止められず後追いするか、その場から脱出するのが精一杯だったエフたちも、セトラキアンの助力を得て少しずつ反撃に転じていきます。医療器具のUVライトを使った攻防に剣を振り回す豪快なアクション、銃に代わって活躍するネイルガンが多くのストリゴイを倒していく様は圧巻。「パシフィック・リム」や「バイオハザード」シリーズなどのVFXスタジオが手掛けた映像は見応え十分です。
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このような対抗策はあるものの、ストリゴイの生命力は人間の比ではなく、その命は「永遠」といっても過言ではありません。絶対的ともいえる力に魅了され、自ら進んで服従を選ぶ者も。もし、そんな力を手に入れるチャンスがあったら……ちょっと心が揺れてしまいますね。
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そしてストリゴイと化した人間は強烈な飢えに支配され、愛する者を探し、その身に食らいつくためさ迷います。両親、恋人、子供、友人が化け物になるかもしれない。もし吸血鬼と化したら、この手で殺さなくてはならないかもしれない。自分自身が大切な人を襲ってしまうかもしれない。奇病の蔓延をどうにか防ごうと奮闘する中、登場人物たちは最悪の結末に対する決断を迫られます。ミステリーやアクションだけでなく、彼らが抱える迷い、悩み、怒り、悲しみといった心理描写も見どころの1つとなっています。
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エフたちは奇病のもたらす真実に近づき、それに対処する方法や力を得ますが、根本的な部分は私たちと変わらないごく普通の人間。疫病からたくさんの人を守ってきたけれど、妻からは離婚を切り出され、最愛の息子とも離れ離れになる寸前のエフ。重い病にかかった妻を救うためなら、どんなことでもすると決めたジム。認知症の母親を抱えるノーラ。母親のために足を洗う決意をするも、なかなか裏の仕事から手を引けないガス。両親とすれ違ったままのヴァシリー。世間から認めてもらえないウェルダース。高潔な理想を掲げるわけでも、正義の味方でもない等身大の人間だからこそ、彼らの苦悩にも素直に共感できました。
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それはストリゴイになってしまった人々も例外ではありません。ごく普通に日々を過ごしていたのに、ある日突然異形の化け物になってしまった人たちばかりです。何よりも娘を愛する父、そんな父を愛していたがゆえに襲ってしまった娘。妻や子を守るため、理性の残っているうちに自分自身から遠ざけようとする夫。それでも夫の側を離れて生きる道を選べなかった妻。さまざまな形で訴えられる深い情愛には、悲しみ以上に強く心を動かされました。
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個人的には「あれ、もしかして今のって、さっき出てきた○○だっけ?!」と感じる瞬間がとても多かったので、ちょっとしたシーンからも目が離せないなと思いました。例えば少しだけ登場して「あの後どうなったのかな」という人物が急に現れたり、何気ない場所が後々になって重要な舞台になったりと、さりげない場面にも色々な仕掛けが含まれているのでお見逃しなく。すでにシーズン2の制作も発表されており、シーズン5まで制作が予定されている本作の結末を、ぜひその目で確かめてください。
「ストレイン 沈黙のエクリプス」は9月9日より先行デジタル配信中。Blu-ray BOXは3枚組で1万3000円(税別)、DVDコレクターズBOXは8枚組で1万400円(税別)で11月6日に発売予定です。
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