【特集】AC『チュウニズム』はコアユーザー向けだが優しい音ゲー?ディレクターとmaimaiちゃんにその魅力を訊いた

タッチやタップだけでなく、スライドも認識するデバイスや、手を宙に浮かせるプレイを実現させたセンサーなどを搭載した、セガのアーケード向け“直感型”音楽ゲーム『CHUNITHM-チュウニズム-』。開発は「洗濯機」とも呼ばれる『maimai』を生み出したチームです。

その他 アーケード
【特集】AC『チュウニズム』はコアユーザー向けだが優しい音ゲー?ディレクターとmaimaiちゃんにその魅力を訊いた
【特集】AC『チュウニズム』はコアユーザー向けだが優しい音ゲー?ディレクターとmaimaiちゃんにその魅力を訊いた 全 16 枚 拡大写真
タッチやタップだけでなく、スライドも認識するデバイスや、手を宙に浮かせるプレイを実現させたセンサーなどを搭載した、セガのアーケード向け“直感型”音楽ゲーム『CHUNITHM-チュウニズム-』。開発は「洗濯機」とも呼ばれる『maimai』を生み出したチームです。


今回インサイドでは、この『CHUNITHM-チュウニズム-』を特集。その前編となる本稿では、『maimai』『CHUNITHM-チュウニズム-』総合ディレクターのコハD、『CHUNITHM-チュウニズム-』サウンドディレクターのアッキー氏、広報担当のmaimaiちゃんにインタビューを実施し、本作はいったいどのように生まれたのか、また今後の展開はどうなるのかを聞いてきました。

なお、本稿とは別に用意している後編の記事では、独自コンテンツである「イロドリミドリ」の話題をたっぷり聞いているので、そちらの記事もぜひご覧ください。

◆『maimai』から一歩踏み出し、よりコアな音楽ゲームユーザーへ


左からmaimaiちゃん、謎の野菜たち(詳しくは後編で)、コハD

――まずは『CHUNITHM-チュウニズム-』が生まれたきっかけを教えてください。

コハD:私はアーケードゲーム『maimai』という音楽ゲームも担当しておりまして、そこで得たノウハウを活かして、もう一歩本格的な音楽ゲームにチャレンジしてみたいという思いから企画がはじまりました。『maimai』と違ってターゲットの中心にはコアな音楽ゲームユーザーさんを据えています。

――企画が大きく前進した出来事はありますか。

コハD:アッキーとの出会いですね。当時彼は「東京ジョイポリス」の振り子型アトラクション『ハーフパイプ トーキョー』の担当をしていました。

アッキー :『ハーフパイプ トーキョー』をリニューアルする際に映像と音楽をフィーチャリングしたものを作った経緯がありまして、『maimai』ともコラボをして『ハーフパイプ トーキョー』の映像と音楽を提供したんです。



コハD:映像・音楽の両面から見ても『ハーフパイプ トーキョー』のクオリティーはものすごく高くて驚きました。「クリエイターは誰だ」と問い合わせて、その時に初めてアッキーと会いました。非常に音楽ゲームと親和性の高いアーティスト様を集めた作品だったこともあって、コラボの結果、『maimai』は音楽ゲームユーザーをしっかり掴むことができました。ですので『CHUNITHM-チュウニズム-』で音楽ゲームユーザーの心を掴みたいと思った時に彼の顔が真っ先に浮かび、参加してもらいました。



――開発で苦労された点はどこでしょうか。

コハD:いくつかありますが、やはりデバイスでしょうか。従来の音楽ゲームですと、画面に現れる指示とプレイヤーが押すボタンの位置が離れていることで人によっては慣れが必要でした。つまり手前のボタンを押すと、画面にある向こうのバーが反応する。そこに違和感を覚える人もいるので、「そういった人たちはどうやったらプレイしてくれるか」というのを念頭に置きながら、誰もが遊べる直感的なデバイスを作れないか模索しながら制作をしました。『maimai』では、出来るだけボタンの位置とタイミングエリアを近づけたのですが、その際にも同じように直感的に遊んでいただくことを目指していました。



――先行筐体である『maimai』との差別化というのはどのように図られているのでしょうか。

コハD:『maimai』はオープンなデザインを取り入れていますが、中には「見えすぎてしまって恥ずかしい」という方もいらっしゃいまして、そのあたりの意見も取り入れて、『CHUNITHM-チュウニズム-』はクローズドなデザインにしています。人によっては手元が隠れる『CHUNITHM-チュウニズム-』の筐体を「ATM」と読んだりしていますけどね(笑)。余談ですが、『maimai』は洗濯機と呼ばれていまして、今のゲームセンターにはゲームとはおよそ遠い姿を持つ二つの機械が並んでいる姿を見ることができます(笑)。

◆さまざまな音を表現し、空間を斬り裂くデバイス



――開発に苦労されたというデバイスはかなりおもしろい作りになっていますね。

コハD:我々が「グランドスライダー」と呼んでいるデバイスですが、こちらのデバイスでは“タッチする・なぞる・ピアノのように弾く・太鼓のように叩く”など、様々な動きをすることが出来ます。ですので、音楽の持ついろいろな音の魅力を表現しうるデバイスだと言えますね。

――空中に手のひらを浮かせたプレイも感知する点には驚かされました。

コハD:「エアー」という動作ですね。音楽ゲームのユーザーさんはリズムに合わせて、体のいろんな箇所を動かして音楽に乗ることで、強い没入感を感じていると考えているのですが、この没入感をシステムとして取り入れたのがこの「エアー」というアクションです。没入感という点以外にも、音楽マンガでピアニストの主人公が「ターンッ!」と鍵盤を叩いて手を宙に浮かせるキメのシーンなどがあったりしますが、そういった「かっこつける」行為がゲーム上で肯定される遊びを作りたいというコンセプトもありました。(タイトル名の如く、中二っぽいアクションですよね)

――宙に浮いている手に対する反応もいいんですよね。



コハD:触感がないものなので、達成感を覚えてもらうためにエフェクトや音を試行錯誤しました。センサーに関しても複雑な動きを取れるものもある中で、あえて音楽のレスポンスに最適なセンサーを搭載しています。「エアー」は、持ち上げが足りないと「上げてください」と注意が出るんですが、慣れていくと今度は腕を上げすぎてしまって「下げてください」と出たりして(笑)色々と苦労はしましたが、皆さんに「気持ちいい」と言って頂けるものにはなったかなと思っています。

――近年スマートフォン向けのリズムゲームが多くリリースされていますが、その辺りのゲームを意識はしたのでしょうか。

コハD:意識はしていませんでしたね。たまたま業界で同じような意識が広がっていたのかなあという印象が強いです。

――本作をプレイした時に、スマートフォン向けリズムゲームに慣れた人は、すごく入りやすいし、ゲームセンターに足を運びやすくなるだろうな、という印象を受けました。

コハD:僕らとしてはむしろ、「タッチパネルを使わないようにしよう」といった差別化をはかなり意識していました。独自のデバイスと直感的な操作を目指したところ、結果的にスマートフォンの持つ親しみやすさとアーケードならではのデバイス性が両立できたというのはよかったと思います。スマートフォンと真逆のアプローチをしていたつもりだったのですが、結果的にスマートフォンと共通点が生まれ、とっつきやすさに繋がる状況が生まれたのはうれしい誤算でしたね。

◆『CHUNITHM-チュウニズム-』はやさしい




――収録している音楽の見せ方、聞かせ方に関しても話をうかがえますか。

コハD:『CHUNITHM-チュウニズム-』のオリジナル楽曲には一曲に付き必ずキャラクターがついてきます。曲のコンセプトをキャラクターに託すことで、ユーザーがどういう曲なのかを想像しやすいような工夫をしているんです。キャラクターから入っていただいて、曲をより知っていただいたり、曲からキャラクターを知って行くなど、両方から魅力を伝えられるように考えました。

――アニメの楽曲も数多くプレイ可能ですね。

コハD:「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」や『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』なども同じ考えです。やはりキャラクターがいると曲が伝わりやすい。『CHUNITHM-チュウニズム-』ではアニメ楽曲に関してもサービス精神が多めで、他の音楽ゲームより、収録時間を少し長くしています。そこは意識して設定しているところですね。

maimaiちゃん:あと、どんなにミスをしても最後までプレイできるんです。音楽はちょっと長いし、キャラクターもいる。いろんな音ゲーマーさんから「『CHUNITHM-チュウニズム」-「『CHUNITHM-チュウニズム-』はやさしい」という声をいただいたりしています。

コハD:オリジナル曲についてはそうやってアニメ楽曲で興味を持ったユーザーさんの心も掴めるような楽曲も用意していて、その一つがこの後お話しするオリジナルコンテンツの「イロドリミドリ」です。

◆maimaiちゃんとは何者なのか?




――「イロドリミドリ」の話へ行く前にmaimaiちゃんのお話を聞かせてください。ズバリ、いったい何者なのでしょうか。

maimaiちゃん:もともとは『maimai』の立ち上げの時に「Twitterをやってみよう」ということで見切り発車的に私が担当したのがはじまりで、次に『maimai』についている映像撮影機能で「公式の告知動画を撮ろう」という話になり、どういうわけかは忘れてしまったのですが、生身よりもかぶり物をした方がいいということで雑なイラスト(笑)を元に手作りしたのが、今のmaimaiちゃんのかぶり物になります。親しみのある雑さを大事にしています(笑)。公開生放送や地方でイベントがあるときは被って出演しています。

――maimaiちゃん(のかぶり物)は代替わりなどするのでしょうか。

maimaiちゃん:いえ、今のところずっと同じものです。三年くらいになりますね。

――ユーザー交流にはかなり力を入れられているようですね。

maimaiちゃん:そもそも『maimai』はユーザーさんと一緒に育っていったという感覚があるんです。スタッフにも音ゲーが好きな人が多く、いろいろな意見をもらうんですが、プレイヤーからの意見というのはすごく大事なんですよね。だからなるべく積極的にTwitterでも対面でもいろいろ言ってもらおうと意識しています。

――三年やられていかがですか。

maimaiちゃん:今まで前に出ることはなかったので戸惑いもありましたが、だんだん楽しくなって来ました(笑)。人の顔って覚えづらいと思うんですけど、このかぶり物のおかげで、地方でフラッと立ち寄ったゲームセンターでも「maimaiちゃんだ」って声をかけていただけたりもします。『maimai』で知り合ってカップルになったり、結婚する方たちもいて実際お祝いに行ったこともあるんですよ。『maimai』は出会えて結婚できるゲームです(笑)。といった風にmaimaiちゃんという窓口のおかげで、みなさんが報告してくれていますね。

――maimaiちゃんの他にもキャラクターはいるんですよね。

maimaiちゃん:“チュウニペンギン”と犬の“はっぴーちゃん”がいます。彼らは音ゲーもかなり上手いのでイベントに出ると沸くんですよ。私は宣伝担当なので、そういう意味では立ち位置がすこし違いますね。

――全体的につっこめるキャラクターなのがいいですね。

コハD:そうですね。ドワンゴさんといっしょにやっている番組「maimaiチャンネル」ではニコニコ動画ならではのコメント機能もあるので、つっこんでいただけるような隙を作ることは大事にしてますね。

maimaiちゃん:突っ込んでもらえるかな~って考えながら動画を作るのもたのしいんですよ。

コハD:ニコニコ動画を見てるとユーザーさんのコメントも含めて一つの作品になってるのかなという印象を受けますよね。

後編へ続

《yohei hosokawa》

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]

特集

関連ニュース