イベントでは、「サワディ野田」ことKADOKAWAの野田稔氏による開会挨拶を皮切りに、「全国学校対抗GAMEツクール大会(仮)」などの構想を発表。サンプルゲームを制作したツクラーのtachiさん、花姫パパさん、アイムシアンさんも登壇し、ツクラーや実況者も招かれた懇親会では、さまざまな交流がみられました。
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『RPGツクール』はプログラム不要で簡単に自作RPGが制作できるソフトで、第一弾は1990年にMSX2向けに発売された『RPGコンストラクションツール Dante』にさかのぼります。いわば今年は『RPG』ツクールにとって25周年となるメモリアルイヤー。特に近年は、ニコニコ動画での実況プレイなどと結び付き、実写映画化もされた『青鬼』をはじめ、大ヒット作が登場しています。
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KADOKAWA 野田稔氏
また『RPGツクールXP』(2004)以降は海外販売も行われており、『XP』『VX』『VX Ace』の累計販売本数は海外で61万5千本、国内で8万本のセールスを記録。JRPG向けのゲーム開発フレームワークとして、静かなブームを巻き起こしています。精神科医となってクライアントの深層心理を探索する『To the moon』など、海外インディーズによる名作も登場しています。
野田氏は2013年の夏頃から、「グラフィックの美麗化」「マルチデバイス対応」をコンセプトに構想を始めたと説明。また、川上量生氏(カドカワ代表取締役社長、ドワンゴ代表取締役会長)に「ツクールは遊べる人が少ない」という指摘を受け、HTML5対応にすることで、ブラウザベースでプレイできるものをめざしたと語りました。
『MV』の最大の特徴ともいえるのが、野田氏がコンセプトに掲げたツクール史上初となるマルチデバイス対応です。特に基本エンジンをHTML5+JavaScriptベースとしたことで、スマホやタブレットのブラウザ上でもプレイすることが可能になりました。自作ゲームのURLをTwitterで配信し、ワンクリックでゲームを始めることもできます。これによってユーザー数の劇的な拡大が可能になるとのことです。
続いてスパイク・チュンソフトの飯塚康宏氏、KADOKAWAの一ノ瀬裕之氏、ドワンゴの斉藤大地氏、KADOKAWAの田村幸一氏らが登壇し、『MV』の特徴や周辺施策などについて語りました。
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スパイク・チュンソフト 飯塚康宏氏
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KADOKAWA 一ノ瀬裕之氏
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以下、主なものを箇条書き形式でご紹介。
- ●バンダイナムコエンターテインメント、アクワイア、スパイク・チュンソフト、KADOKAWAが所有するIPとのコラボで、『パックマン』『ダンガンロンパ』『シレン』といった人気キャラクターを活用したRPG制作が可能に
- ●海外向けパブリッシャー「Degica」とのコラボによる、海外プラグイン(日本語化対応済み)54種類を無償提供
- ●「RPGツクールMV GAME OF THE YEAR」構想の発表
- ●アカデミックパックの提供(2本以上で30%オフ、10本以上で50%オフ)
- ●全国学校対抗GAMEツクール大会(仮)構想
- ●RPGツクールMV製ゲーム投稿サイトの開設予定(2016年春予定)
- ●勉強会・交流会の実施、ニコニコ生放送での番組配信
- ●コミック・小説・映画化などへのメディア展開支援、「ニコニコ自作ゲームフェスフェス」「超会議」「闘会議」などのイベント出展支援、ニコニコゲームマガジンへのサイト掲載、海外パブリッシング支援(英語版『Hero & Daughter』をSteamで今冬発売予定)
- ●2016年のアップデートスケジュール発表(第一弾・2月初旬、第二弾・4月初旬)で公式タッチUIプラグイン、不要素材削除ツール、画像&音声の簡易暗号化ツールなどを提供
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左から、tachiさん、花姫パパさん、アイムシアンさん、一ノ瀬氏
イベント終盤ではサンプルゲーム『シーピラート』を制作したtachiさん、『ファンタジックレヴェリエ』を制作したアイムシアンさん、サンプルマップを制作した花姫パパさんも登壇し、制作のふり返りなどを行いました。
tachiさんは「マップの読み込みやメニューのスクロールなどが、より快適になった」と評価。花姫パパさんは「レイヤー機能の改善で制作の自由度が広がった」。それまで『RPGツクール2000』を愛用していたというアイムシアンさんは「解像度が一気に拡大したし、スクリプトも使えるようになった」と進化ぶりに驚いていました。
また、次回作について聞かれると、「ゾンビゲームが作りたいですね。これまで3回くらい頓挫しているので、今度こそリベンジしたいです」(tachi)。「『VX Ace』で制作中のゲームを早く仕上げて、それから『MV』に移行したいです」(花姫パパ)。「死ぬほど怖いホラーゲームで、世界で通用するようなものを作りたいです」(アイムシアン)と抱負を語りました。
これに対して開発プロデューサーの一ノ瀬氏は「サンプルゲームを作っていただいたツクラーの皆様には感謝の言葉しかありません」とコメント。クロースドβを通して、サンプルゲーム制作者からさまざまな意見や要望をいただくことができ、それを元に新機能がどんどん実装されていったので、一緒に作っている感じがあったと振り返りました。そして、今後も一緒になって『MV』を育てていきたいと語りました。
『RPGツクールMV』は、12月17日発売です。