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そして放送から3年。単発エピソードのOVAを経て、待望のシリーズ最新作『ガールズ&パンツァー 劇場版』が完成した。本作はデジタル表現を駆使することで、これまでスポットの当たらなかった「戦車」という存在を縦横無尽に活躍させ、新しい画面づくりに成功している。そのエポックと言っても過言ではない仕事を担った3D監督の柳野啓一郎さんに、引き続き劇場版の制作エピソードを伺った。
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――劇場版はアクションの連続で白熱しましたが、戦車は当然3Dになるわけですよね。物量的に相当大変だったんじゃないですか。
柳野:実はキャラクターモデルも結構な数をつくってまして、カットによっては本当にフル3Dアニメーションなんですよ。最後のほうは『楽園追放』とやってることが変わらなかったです(笑)。
――それは気づきませんでした(笑)。
柳野:逆にわからないように目指していましたから。たとえば、作画のキャラが映ったカットの次に3Dのキャラを挟んでまた作画に戻したりとか、顔だけ作画になってたりとか、ぐちゃぐちゃに混ぜているんです。適材適所に混ぜてしまえば、3Dだ作画だというレッテルはどうでもいいことだとわかっていただけるんじゃないかと。
――3Dをやるときに意外と難所なのがモデリングだと言います。時間や予算の関係でモデルが仕込めなくて大変という話を聞きますが、そこはいかがですか。
柳野:難しいのが随時交渉という制作状況でした。劇場版は戦車を10輛増やしたいという話から入ったんですが、ほかにもいろんなオーダーがありまして。(戦車の)上に乗せるキャラクターモデルも最初は十数体欲しいという話があったのですが、そこで数を減らしたりとか。あとはBGモデル(※背景に置く3Dの建物)ですか。主観のカットで使う素材だったり、後半の遊園地では大量のアトラクションモデルが発生しますし、とにかくコンテが届くたびにどうしましょうと(笑)。
――新しい戦車のモデルも数多く登場しますが、特にカール自走臼砲が印象的ですね。
柳野:いままでのTVシリーズではオープントップ、つまり人が外に露出する戦車というのは「戦車道」的にNGだったんです。カールを出すにあたって、本物は何十人も揃った上で弾を装填して発砲するというシステムなので、まずそこを自動化するというウソをつくところから始めました(笑)。
監修の田村(尚也/軍事ライター)さんとかなり細かく話し合いまして、たとえば弾の種類や装填方法がどうだとか、どこに人が乗っているかとか、一つひとつのハンドルの回し方だったり、実際映像になってないところまで考えてます。そこまで詰めて大ウソをついてる感じが、作業的におもしろかったですね。