本作を手がけるのは、2年前に読み切り「恋は盲目」でデビューを果たした藤本タツキ氏。今回が初の連載作品となるため、デビュー当時から藤本氏を知る方にとっては待望の幕開けでしたが、想像を上回る衝撃と反響による好スタートを切る形となりました。
作品紹介のテキストには「『氷の魔女』によって世界は雪と飢餓と狂気に覆われた。凍えた民は炎を求めた。主人公アグニに与えられた祝福は、希望か呪いか…」とあり、確かに本作に目を通すとその通りなのですが、公開された第1話に込められたインパクトやその大きさは、この紹介文だけでは残念ながら伝わりきっていません。
【ジャンプ+春の新連載】
— 少年ジャンプ+ (@shonenjump_plus) 2016年4月18日
鬼才藤本タツキによる奇跡を巡る巨弾ファンタジー『ファイアパンチ』登場!!
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雪と飢餓に覆われた世界で民は炎を求めた。
主人公アグニの祝福は呪いか希望か… pic.twitter.com/giSVU02OoJ
ここから先は多少ネタバレが含まれます。またネタバレの中には、暴力的な表現や日本の倫理観と相反するものがあるので、引き続きの閲覧には充分ご注意ください。
本作の世界には、生まれながら奇跡を使える人間「祝福者」という存在がおり、『氷の魔女』もそのひとり。彼女の力により雪に覆われた世界は厳しい環境と化しており、飢餓との戦いも強いられます。
そんな世界で生き延びている主人公とその妹は、再生の力を持つ「祝福者」。特に兄の再生能力は凄まじく、腕を切り落としても数秒で元通りになるほど。その能力を発揮し、自分たちを救ってくれた村人たちに、自らの「腕」を差し出して食料の足しにしてもらう・・・という衝撃的な展開は、わずか冒頭数ページの話。過酷な世界観と、生きることを諦めないためにあがく姿を一気に描き、本作への興味を一気に高める導入作りを行っています。
人肉を食す。この状況に嫌悪感を覚える方もいることでしょう。もちろんそれは、おかしな話ではありません。ここまで読んで不快になった方は、この作品と接点を持たない方がよいと思います。
倫理観や生理的な反応は当然の反応なので、無理をしてまで読むことはありません。ですが、あまりに危機的な状況において、「(いくらでも再生するので)人命が失われているわけではない人の肉」があるとすれば、どうでしょうか。このままでは餓死してしまう人を救う手段がそれしかない場合、留まることができるかどうか。それは人それぞれで答えが変わることと思いますが、筆者個人は主人公の行いを否定する気持ちにはなれませんでした。
そんな過酷な状況も、実に恐ろしいことに、ささやかな幕開けにしか過ぎません。ここから先はネタバレにも程がある内容になってしまうので、興味が湧いた方は直接閲覧することをお薦めします。ただ強いていえば、紹介文にある「アグニに与えられた祝福は、希望か呪いか…」の下りは、まさに1話を終えた主人公の立場をよく表した一文となっています。彼の歩み始める壮絶な一歩を目撃したい方は、こちらからご覧ください。
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