【hideのゲーム音楽伝道記】第32回:『Ever17』― 海洋テーマパークで繰り広げられる脱出劇を彩る音楽

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【hideのゲーム音楽伝道記】第32回:『Ever17』― 海洋テーマパークで繰り広げられる脱出劇を彩る音楽
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第32回目となる今回は、『Ever17 -the out of infinity-』(エバー・セブンティーン ジ・アウト・オブ・インフィニティ)をご紹介します。



『Ever17 -the out of infinity-』は、2002年8月29日にKIDよりドリームキャストとプレイステーション2で発売されたアドベンチャーゲームです。2005年にはPC(Windows)版、2009年にはPSP版が発売され、2011年にはXBOX360でリメイクされました。

本作の舞台は近未来の日本。海の中に建設された海洋テーマパーク「LeMU(レミュウ)」に閉じ込められてしまった男女たちが、互いに協力して脱出を目指すという作品です。

僕が『Ever17』に出会ったのは、数年前に僕の友人から「ひでさん、これ面白いからやってみて!」と強くおすすめされたのがきっかけでした。その友人があまりにも熱っぽく『Ever17』について語るので気になった僕はすぐに買ってプレイしてみたのですが、シナリオが斬新で、衝撃的な作品でした。本作を未プレイの方は、パッケージイラストをご覧になって、いわゆる「ギャルゲー」なのかな?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ところがどっこい、本作の内容はむしろ叙述モノの推理小説を紐解く感覚に近いです。ネタバレを避けるため詳しい説明は伏せますが、ゲームという媒体を活かした、“ゲームでしかできない仕掛け”をやってのけています。物語も、生きることについて考えさせられる、奥深い内容でした。

そして、本作の大きな魅力が音楽です。本作の音楽を担当したのは作曲家の阿保剛氏。『シュタインズ・ゲート』などの「科学アドベンチャー」シリーズ、本作『Ever17』を含めた『infinity』シリーズ、『Memories Off』シリーズなど多数の作品の音楽を手掛けた方です。また、オープニングおよびエンディングのボーカル楽曲は、作曲家・音楽プロデューサーの志倉千代丸氏が手掛けました。

本作では、LeMUに閉じ込められてしまった閉塞感や焦燥感を演出する音楽、じわじわと迫りくる恐怖感を煽る音楽、束の間のやすらぎに寄り添うような優しい音楽、哀しいシーンを痛切に盛り上げる音楽など、さまざまな楽曲群が用意されており、LeMUで繰り広げられる脱出劇や人間ドラマを盛り上げてくれます。また、本作は海中の施設が舞台ということで、音楽にも全体的に水の揺らめきをイメージしたようなふわふわ感や、幻想的な空気感があって、そういう点も好きですね。

それでは、本作で印象的な楽曲をピックアップしてご紹介していきます。

◆『Ever17』の世界を彩る音楽たち


●「karma」
個人的に本作の音楽の中で最も印象的な、ピアノの音楽です。この楽曲はタイトル画面のほか、とあるシナリオのエンディング部分で流れるのですが、身を裂かれるような悲壮感の中にも繊細な美しさがあって、胸にすーっと入ってくる名曲だと思います。『Ever17』の世界観にうまくマッチした深遠な楽曲で、非常に心に残る音楽でしたね。

僕は、知人に「ピアノのゲーム音楽で何かおすすめな曲ある?」と聞かれたら、真っ先にこの「karma」を挙げるくらい大好きですね。僕は『Ever17』をクリアしてだいぶ時間が経つのですが、今でも大のお気に入りで、よく聴いています。

●LeMU内部の楽曲群
本作の舞台となるLeMUには、各階層ごとにそれぞれ異なる楽曲が用意されています。これらの楽曲には共通のメロディが使われているのですが、雰囲気はそれぞれ違うものになっているのです。まずLeMUの入口、インゼル・ヌル(ゼロの島)で流れる「Insel null」は平和で楽しいイメージの楽曲で、地下1階のエルストボーデンで流れる「Ersteboden」も、日常的なほのぼのした楽曲です。しかし地下2階のツヴァイトシュトックで流れる「Zweitestock」ではだんだんと重苦しい雰囲気が出てきて、地下3階のドリットシュトックで流れる「Drittestock」では、重低音のベースをメインにした、不安をあおられるダークなサウンドになっています。

『Ever17』作曲者の阿保氏によると、LeMU内部の楽曲は、階層が深くなるにつれてだんだんと閉塞感が増していくように意識して作ったのだそうです。恐怖感や不安な心理といったものを、音楽でも演出しているわけですね。

●「Heilmittel」
作中、とある人物との”最後の会話“のシーンで流れるピアノの楽曲です。切なさにあふれていながらも、やさしさを帯びた美しい旋律がとても素敵ですよ。

●「Der Mond Das Meer」
作中の登場人物によって歌われる子守唄です。幻想的かつ穏やかな旋律が印象深いですね。聴いていると心が落ち着きます。この楽曲は「月と海の子守唄」と呼ばれており、深い意味が込められているのですが、ぜひゲームを最後までプレイして確認してみてほしいですね。意味を知ってから改めて子守唄を聴くと、グッと来るものがありますよ。

●「Je nach」
とあるエンディング及びスタッフロールで流れる楽曲です。神秘的な雰囲気と不穏さを合わせ持ったこの旋律が流れる中、誰もいない中央制御室のモニターに、ある“反応”が映し出される――。この演出にゾクッと寒気を覚えたのを強く覚えています。続いてスタッフロールになると曲調が一転。テクノ調で、アップテンポかつクールに展開する旋律が、格好良くてしびれました!

●「Drittes Auge」
とある登場人物の“真の姿”が明かされるシーンで流れる、エレキギターの楽曲です。それまでの楽曲とは全く趣が違うエレキギターの音色が非常にショッキングで、物語が大きく動く衝撃的なシーンを音楽で効果的に演出しているように感じました。僕はそのシーンにたどり着いた時、あまりの衝撃に言葉を失い、全身にぞわっと鳥肌が立ったのを強く覚えています。そのシーンで、「ゲーム中の人物」と「僕(プレイヤー側)」がシンクロしたかのような強い衝撃を感じたのは、仕掛け自体の巧妙さもさることながら、音楽による演出効果も大きかったように思いますね。

『Ever17』は、今回ご紹介した以外にも素敵な音楽ぞろいですので、プレイの際には、ぜひ阿保氏の紡ぐ楽曲群にじっくり耳を傾けて、堪能していただきたいです。

◆これから『Ever17』をプレイされる方へ


『Ever17』にご興味をお持ちになって、「プレイしてみようかな」と思われた方へ、ぜひお伝えしておきたいことがいくつかあります。

まず、全力でネタバレ回避することをおすすめします。『Ever17』にはゲーム全体に大きな仕掛けが施されていて、それを解き明かすことが本作の肝となり、一番の醍醐味になります。そのため極力予備知識を持たず、できるだけまっさらな状態でプレイすることを心からおすすめします。本作をクリアするまでは、インターネットで『Ever17』関連の記事は極力検索しないほうがよいでしょう。また、Wikipediaもクリアまでは閲覧しないことをおすすめします(ネタバレが多数含まれているため)。

次に、本作はゲーム冒頭に「俺(武編)」と「ぼく(少年編)」のどちらかのシナリオを選ぶ形になるのですが、「俺(武編)」のシナリオ2つをクリアしてから「ぼく(少年編)」をクリアする、という順序でゲームを進めていくのをおすすめします。そのほうがシナリオの全貌を理解しやすいと思いますので…!

最後に……本作は、人によってはシナリオの中盤に中だるみを感じる可能性があります。というのもこの作品の登場人物たちは、“海中の施設に閉じ込められている”という状況にもかかわらず、緊迫感や焦燥感があまり感じられず、のんびりしているところがあるのです。そのため、人によってはその中だるみに耐えられず、プレイを途中でやめてしまうかもしれません。

しかし、本作の一番の肝は最終シナリオにあります。このシナリオでは、それまで溜まりに溜まった謎が一気に明かされて色々と驚かされるとともに、目の前のモヤが一気に晴れていくような大きな爽快感がありますよ。もちろん強制はしませんが、できれば最後までプレイしてみてください!

本作のすべてを見届けたあと、タイトル画面で流れる「karma」を改めて聴いていると、本当に胸にじ~んと来るんですよ……。この感覚はぜひ、最後までプレイして味わってみてもらいたいですね。僕は今までたくさんの作品をプレイしてきましたが、「karma」という楽曲は、クリア後長い時間が経ってもずーっと心に残り続けていて、不思議な魅力にあふれているなぁと感じます。『Ever17』という作品に、そして「karma」という楽曲に出会えて良かったと心から思っていますね。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

……正直なことを言ってしまうと、『Ever17』のシナリオには科学的に少し無理があるように感じられる、細かいツッコミどころがいくつかあります。しかしそれ以上に、「よくこれだけの大がかりな仕掛けを含むシナリオを作ったなぁ」という素直な驚きのほうが強かったですね。細かいことは気にせず楽しむのが吉かと思います(笑)。

おそらく本作は、今後何十年経っても、アドベンチャーゲームというジャンルの歴史を語る上でほぼ間違いなく語り継がれてゆくであろう作品だと僕は思っています。本作には悲しいシーンやバッドエンドもあるのですが、「最後はハッピーエンドで終わる」というのがいいですね。「最後までたどり着けば、行動がちゃんと報われる」という後味の良さも含めて、僕は『Ever17』という作品が大好きです。

僕は本作をPS2でプレイしたのですが、それ以外にもドリームキャスト、PC、XBOX360、PSPと多くのハードで発売されていますので、ご興味をお持ちの方は、ぜひお手持ちのハードでプレイしてみてくださいね! なお、本作のPS2版・ドリームキャスト版・PC版については、CGなどが追加された「Premium Edition」版(改良版)が出ていますので、お求めの際はこちらを購入することをおすすめします。


なお、本作の音楽が収録されたサントラとしては、『Ever17 -the out of infinity- Sound Collection』が発売されています。また、ハイレゾ版のサントラ『High Resolution Soundtracks Ever17 -the out of infinity-』も配信されています(配信サイトはこちら。試聴も可能です)。ハイレゾ版については、作曲者の阿保氏自らが、Xbox360版でアレンジされた音源をベースに、96kHz/24bitのリマスターを施したものになります。ご興味をお持ちの方は聴いてみてくださいね!

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。最近「からだすこやか茶ぁ~」「ダブル~!」のCMが頭から離れてくれません(笑)。

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

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《hide/永芳英敬》

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