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各楽曲を紹介する前に、まずは『カリギュラ』の世界観からおさらいしておきましょう。本作は現代をモチーフとしたRPGで、自我を持ったバーチャルアイドルμが作り出した仮想世界「メビウス」を舞台に展開。
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メビウス
この世界の住人はμの楽曲に共感し、彼女に導かれた者ばかりで、“現実世界で大きな悩みを抱えている”という共通点を持ちます。そのため住人たちは“自身の理想とする姿”になっており、現実世界では味わえなかった理想的な学生生活をおくっています。
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帰宅部メンバー
ところが、ふとしたきっかけで「メビウス」が現実でないと気づき、それぞれの意志で“現実”への帰還を試みようとする住人が現れます。その住人達が主人公を含めた帰宅部です。現実世界へ戻るためにμと対立することを選んだ帰宅部ですが、そんな彼らの前にμに仕える楽士達が立ちふさがります。
各楽曲を聞くことができる
楽士はμの楽曲を手がける「メビウス」の幹部的存在で、本作の魅力の一つがこの楽士にあるといえます。面白いのは各楽士にはそれぞれ異なるアーティストたちが楽曲を提供していることで、強烈な個性とバックボーンを元に、多数の有名ボカロPの面々が楽曲制作を担当。各ボカロPの持っている魅力と各楽士の個性がぶつかり合って楽曲内でスパークする様も、『カリギュラ』の音楽的な聴き所と言ってよいでしょう。
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バーチャルアイドル「μ」
ではその楽曲とは一体どんな曲なのでしょうか?前述した登場人物の抱える症候群が生み出す歌詞世界、そして内面に持つ精神性がサウンドに変換され、楽曲自体が楽士の纏うアイデンティティともいえる存在として鳴り響いているのです。まさに楽士と楽曲は『カリギュラ』において特に密接な関係を築いているのです。
それでは『カリギュラ』で最も注目すべこれらの楽曲を収録した特典CDを紹介します。なお、主題歌はミレイ(CV:中村繪里子)×スイートP(CV:新田恵海)×ソーン(CV:大坪由佳)が担当しており、その他の楽曲はμ(CV:上田麗奈)が歌っています。
1曲目は『カリギュラ』主題歌の「idolatry」からスタート。作曲と編曲はElements Gardenの岩橋星実さん。女性ゲーマーなら『うたの☆プリンスさまっ♪』でも素敵な楽曲を作られていた方としてご存知でしょう。ボーカルはゲーム内でもキャストの声を担当している中村繪里子さん、新田恵海さん、大坪由佳さんのユニットRePLiCAが担当しています。
それにしてもこの曲、主題歌と聞くと耳を疑ってしまうのが冒頭部分。まるでゲーム後半の盛り上がるシーンで流れそうなコーラスに思わず耳を奪われます。そしてボーカルパートが入ってからの疾走感と力強いメロディで主題歌らしさを発揮。ボーカリスト3人それぞれの個性がソロパートで生かされているのはユニット曲の魅力ですね。ところでタイトルの「idolatry」(アイドラトリィ)を訳すと“偶像崇拝”。“疑心暗鬼に生きてないで 美しい楽園へ”という甘い歌詞に誘われそうになります。
2曲目はカギPの楽曲「peterpan」。楽曲作曲者の40mPさんはイナメトオル名義でシンガーソングライターとしても活動されています。
40mPらしい歌メロを大事にしたふんわり緩やかな耳触りのポップミュージックに仕上がっており、軽く歪ませて弾いているギターの音色とピアノを絡めたアレンジも聴いていて心地よいです。
また、“peterpan”というタイトル通り心の叫びがそのまま歌詞になり、悲痛な叫びにも聴こえるサビメロが強烈に胸に刺さります。誰にでも大人になりたくないという気持ちは持っていると思いますが、まるで自分自身の胸の内を代弁されているような1曲で、聴いていて辛くもあるのですが、その優しい曲調から次第にそれを受け入れてしまうという、不思議な1曲です。
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3曲目はスイートPの曲「トキメキ*リベリエ」。作曲は1人ユニットでもあるOSTERprojectさんで、ボカロシ-ンに多大な影響を与えた「恋スルVOC@LOID」の作者としても有名なボカロPです。
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オシャレな渋谷系ポップスを思わせる軽快なサウンドとキュートなボーカルとの相性が抜群な1曲で、アルバム中で最も愛らしくて可愛い曲です。曲全体から“可愛い女の子になりたい”という願望が聴こえてきそうな上に、“私は可愛いのよ”と主張してくる歌詞もインパクト大。女の子なら誰でも持つ“かわいくなりたい”という思い──「トキメキ*リベリエ」はそんな憧れが具現化した1曲です。
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4曲目は作曲は同人音楽サークルとしても活動しているPolyphonicBranchさんの「独創性インシデント」。少年ドールの楽曲です。
全体的にテクノポップのアレンジながら、イントロでロックミュージックをよく使われるギターリフを挟んだり、間奏で聴ける速弾きギターソロはギタリストでもあるPolyphonicBranchさんらしさが出ています。
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歌のほうも高音域に伸びていく女性ボーカルが乗ったスピード感あふれる展開が魅力。孤独な青年による痛々しいネガティブ思考を元にした歌詞も重いです。そうした青年が持つ内に秘めた凶暴性をそのまま楽曲にぶつけたかのような尖った1曲です。
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5曲目はピアノロックが得意なボカロPである蝶々Pさんの「Sadistic Queen」。ミレイの楽曲です。エレガントかつアグレッシブなピアノフレーズで始まるこの曲はピアノサウンドを前面に出すことを得意とする蝶々Pらしさが全開です。そして可愛さと美しさを交えた力強いボーカルワークを前面に出したピアノロックに仕上がっています。
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自虐にも思える強気な歌詞が深く突き刺さる “サディストな女王”を描いているのも注目したいところ。強気の中にも苛つきに似た感情や、感情の不安定さが見え隠れするような気がしてくるのも見逃せない1曲です。