【特集】マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡、エヴァと杉田智和との出会いが人生を変えた

 

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【特集】マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡、エヴァと杉田智和との出会いが人生を変えた
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◆大切なのはやること。そしてやりきること。


――“マフィア梶田にしか書けない記事”というのを自覚したのはいつ頃になるのでしょうか。

マフィア梶田:ラジオに出るようになってからでしょうか……「マフィア梶田っぽい記事だと思って読んでたら、やっぱりマフィア梶田だった」という感想をネットで見かけるようになりまして。自覚はしていなかったんですが、自分の文章には特有の読み心地というか、クセがあったみたいです。

それが明確に表面化したのは『ラブプラス』ですね。当時、この素晴らしいゲームに注目している人は少なかったんですよ。俺は4Gamerからプレイレポートを依頼されて発売前にプレイしていたんですが、その内容に衝撃を受けて「これは恋愛ゲームの歴史が変わるぞ」と本気で思いました。そして感性の赴くままに記事を書いた結果、それが「ガチすぎる」と評価されてゲームと一緒に大ヒットしたんです。

――その辺りからマフィア梶田というライターの個性が固まっていったんですね。

マフィア梶田:そうですね。先述したラジオとの相乗効果もあり、「マフィア梶田って『ラブプラス』の記事書いた人でしょ?」となったわけです。元々自分の得意ジャンルは洋ゲーなどで、恋愛ゲームの記事を書いたのはそれが初めてだったんですけれども、不思議なもんですね……。

――さらに最近はメーカー公式の番組などにも出演されていますよね。

マフィア梶田:有り難いことです。杉田さんが現場で鍛えてくれたおかげで、ラジオパーソナリティとしても着実にキャリアを積み重ねることができました。執筆もトークも、本質的には同じことを求められているんですよ。自分の中にある知識や、作品への愛情を分かりやすくアウトプットして共感を得ること。言葉か文字かの違いってだけで、番組をやる際にも「ライターとしての自分」が前面に出てきますね。

――“新しいライターの姿”が今のマフィア梶田さんなのかもしれません。

マフィア梶田:いやいや、そんなに大それたものではなく……。自分は常に刺激がなければ退屈してしまう性質ですし、その欲求と環境が上手く噛み合った結果なんだと思います。ただ、ライターに限らずフリーランスは常に「やれる仕事」を増やしていくことを意識すべきなのは間違いないですね。

――そしてその行動力は本当に凄いと思います。

マフィア梶田:専門学校時代、講師から「“できない”とは言うな。ハッタリでもいいから“できる”と言え」と教わっていたのですが、それが俺の根本を形作ってます。やったことのないこと、できないと思うことでも、結果的にできてしまえばOKなんですよ。

まずは挑戦しなければチャンスもないわけで、できなければ負け、やりきれば勝ち。とてもシンプルで男らしい生き様だと感じました。それをずっと実践していて、驚くような依頼が来ても「できない」とは言ったことがありません。そして、一度でもやりきった仕事は「ラジオパーソナリティ」や「イベントMC」のように肩書きに組み込んでしまいます。そうすることで、また同じような仕事が舞い込んでくる。自信と覚悟さえあれば、なんとでも名乗れるのがこの仕事の面白いところです。

◆好きは仕事になる



――そこのギャップも魅力ですよね。ライターなのに役者、役者なのにイベントMCみたいな。では表現する上でのポリシーなどがあれば教えてください。

マフィア梶田:全てを通して、自分がまず“オタク”である事。必ず愛をもって、作品へのリスペクトを欠かさないようにしています。番組などを観ている皆様に「こいつ仕事で仕方なくやってんな」と思われないように気を付けています。たまにあるじゃないですか、作品に興味がない、オタクでもない人がイベントMCやってたり。芸能人が話題性だけで起用されて、ゲームの話はまったくできないとか。そういうのって、作品のファンはとても残念な気持ちになるんです。

俺自身、アニメやゲームの存在がこの世界で生きる意味そのものでして、もはや「好き」という言葉で片付けられるものではない。いわば神や悪魔への狂信に近い。だからこそ、人一倍そういうことには敏感なんです。

――その話もう少しお伺いしたいです。

マフィア梶田:アイデンティティの話になりますね……昔から両親の都合で日本と中国を行き来していたのですが、そのせいで日本では中国人として、中国では日本人として扱われて常に自分は“異物”でした。そのため国家に対する帰属意識が薄く、「自分は何者なのか」という漠然とした不安だけがあったんです。そんな中、先述した高校時代の体験が自分に“二次元”という身の置き所を示してくれました。国や民族なんて関係ない、くだらない、長年の葛藤が取るに足らないものになるくらい、オタクの世界は懐が深かった。

――梶田さんの仕事はオタクを広める事かもしれませんね。

マフィア梶田:そこまで高尚な想いがあるわけではありません。好きなものだけに関わって生きたいからやっている、凄く利己的で自分勝手な仕事です。実際、オタクが住み良い世の中のためならば他の何が犠牲になってもいいと考えるくらいには狂信的です。

――私も好きで編集者の仕事をやってるので、非常に共感できます。

マフィア梶田:自分の仕事が結果的にオタク業界の活性化に繋がっているのであれば、それはとても嬉しいことなんですけどね。また一歩、自分が生きやすい世の中に近付いたということですから(笑)。

――最後に好きを仕事にする楽しさや、好きを仕事にしたいと思ってる方々へメッセージをお願いします。

マフィア梶田:「趣味は仕事にしないほうがいい」って言葉、よく聞きますよね。あれ言っている人は、きっと「そんなに好きじゃない」んですよ。ホントに好きなこと、他の何を犠牲にしてでもやりたいと思えることなら、仕事にしたほうがいいに決まっています。なんせ人生の大半は仕事をしなければいけないわけで、その人生の大半を好きなモノに捧げるのと、趣味で付き合うのとでは「関わることのできる時間」が大きく変わってきます。

また、この業界はとても狭く、チャンスに溢れています。「憧れのクリエイターや役者さんと仕事がしたい」なんて夢は、きっと現実的なレベルで叶ってしまいます。なので、常に“目標”は更新し続けてください。それが“好き”であることを続ける秘訣です。

……ただし、どこまでいってもこれは狂信者の言い分です。自らの人生を“それ”に捧げる覚悟が無いのであれば、オススメできません。自分にとって“好き”のレベルがどの程度のものなのか、よく考えたうえで決めてください!

――本日はありがとうございました。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

今回の記事は他媒体で活躍されているライターを取り上げるという珍しい企画になっていますが、その話はとても面白く、インサイドが掲げる「人生にゲームをプラスするメディア」というテーマにマッチしたものだと実感しています。この生き方に共感する方も多いのではないでしょうか。


また今回は、特別に「84」というお店にご協力頂きました。同店は完全会員制の飲食店となっており、場所や営業時間などの情報は非公開。元任天堂社員で、現在はゲームのバランス調整などを行う猿楽庁の橋本徹氏が店長を務められているお店です。店内には宮本茂氏、近藤浩治氏、青沼英二氏、増田順一氏、堀井雄二氏らのサインや、様々なゲームグッズが飾れており、限られた業界人しかその場所を知らない事から、「任天堂の聖地」や「ゲームクリエイターの聖地」などと呼ばれています。


橋本氏と梶田氏

インタビューの中で梶田氏も言われていましたが、この業界は非常に狭く、あわよくば……という事が現実的なレベルで起こる世界です。今回ご協力頂いた「84」もその例外ではないので、この業界に飛び込んで仕事をしていれば、聖地と呼ばれる「84」の会員になれるかもしれませんね。
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《栗本 浩大》

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