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テレビゲームの世界は、新しいデバイスや技術の普及によって、その形は大きく進化している一方、楽しさを追い求める姿は変わりません。変わるものと、変わらないもの。過去と未来。そして我々が宿命的に背負う日本という存在。なかなか考える余裕のない現代ですが、少しだけ立ち止まって一緒に見つめてみませんか? 毎月1回、「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」ゆるーくお届けします。
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谷理央(以下 谷): 安田さん、今月は『スターリーガールズ』がリリースされましたね。プレイヤーとして楽しませてもらっています。
安田善巳(以下 安田): サービス開始時に運営トラブルがあり、皆さんにご迷惑やご不便をおかけしました。開発ディレクターとして、ユーザーの皆さんのしっかりと意見を受け止め、着実にゲーム全体の引き上げを行ってまいりますので、これからもご愛顧のほどよろしくお願いします。
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谷: 『スターリーガールズ』のバトルシーンはすごく迫力がありますね。いつも使っているiPhoneには、こんな描画性能があったのか、と驚くほどです。例に出すゲームが古いかもしれませんが『フロントミッション』をはじめて遊んだときの視覚的なインパクトがありました。
平林久和(以下 平林): いやいや、谷さん、私はもっと古くて『ファミコンウォーズ』を思い出しました。ストラテジーゲームの戦闘は、ともすれば数字の増減を見るだけになりがちです。それを映像で見せてもらえると想像が広がります。
安田: あのバトルシーンは何度も手を入れて作り込みました。こだわりすぎたのではないか、と心配していたのですがおふたりに楽しんでもらえて安心しました。
谷: さて、2016年最後のオールゲームニッポンです。今年はどんな一年だったか感想を聞かせてください。
平林: ゲームからちょっと外れますが『シン・ゴジラ』と『君の名は。』が印象に残ります。『ポケモンGO』も世界的にヒットして、リオデジャネイロ五輪ではいわゆる「安倍マリオ」のパフォーマンスもありました。日本発のポップカルチャーが超元気だった2016年ではないでしょうか。
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(C) Getty Images
安田: ピコ太郎の大ブレイクというのもありましたね。
平林: そうでした! 世界標準とは別の路線を行く日本独自のコンテンツが目立ちました。
谷: 安田さんはどんな感想をお持ちですか?
安田: 年末といえば総括の季節ですが、あえてまとめないで……カオスの時代とでも言うのでしょうか。そこに現象は起きているけど、背景がわからないことが多かった気がします。
平林: たとえばどんな現象ですか?
安田: ゲームの世界で言えば『マインクラフト』ですね。冷静に考えるとマイクラはけっこう難しいゲームで、ゲームマニアの間で流行するというのならば理解できるんです。ところが、小学生の間でマイクラが流行しています。しかも、中学生くらいになると自分で動画を編集してYouTubeで公開する、なんて現象が起きていますよね。こうした現象については知っているのですが、その背景を理解するのは難しいですね。「かつてのレゴ・ブロックが現代ではマイクラなのだ」という説明がよくされますけど、それが本質をついているのかどうか。なぜ、小学生の間でマイクラは流行したのか? もっと深い背景があるような気がします。
平林: なるほど。
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安田: あと、最近の若い人たちはGoogleで検索しないという話を聞いて驚きました。言葉(テキスト)はTwitterで検索して、画像はInstagramで検索する人が増えているみたいですね。僕らはインターネットといえば検索エンジンを使うのが当たり前、またそれがすこぶる便利だという認識だったのですが、SNSを検索に使う現象が起きているんですね。これも背景を理解するのが難しい一例です。
平林: もはや「Google先生」ではないんですね。
谷: 確かにそういう現象は起きていて、Googleで検索する世代とSNSで検索する世代に分かれてきている気がします。検索エンジン特有のページランク。多くの人に見られるサイトが最優先で示されるしくみを、逆に不便と思っている人が増えてきているのかもしれませんね。話は変わりまして、来年の展望はいかがでしょうか?
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安田: そういえば、谷さんと平林さんは今月、福岡(情報技術サミット)で未来のゲームについて語って来られたんですよね。
谷: はい、行ってまいりました。「ゲームとITは未来にどう変化を与えてくれるのか?」。このセッションで平林さんが来年を予測しました。
平林: まずは今年のゲーム業界を素直に振り返ると『ポケモンGO』とVRゲームははずせない動向だと思います。で、位置情報の『ポケモンGO』とヘッドマウントディスプレイを使ったVRゲームには共通点があって、それは四角い画面や筐体という枠を飛び出していることです。同じようなことがITの世界でも起きました。象徴的な例を挙げれば、今年はアマゾンダッシュボタンというサービスがはじまりました。PCやスマホで注文できるのに、わざわざボタンを製造して販売したわけです。こんな事例を取り上げて、今のゲームとITは箱から飛び出す力が働いているのだ! そんな話をさせてもらいました。
谷: いわゆるアウト・オブ・ボックス(Out of the box)をキーワードにしたセッションでしたね。
平林: はい。従来のアウト・オブ・ボックスのボックスは「常識」とか「固定概念」とか。比喩として使われてきましたが、もっと直接的な意味での「箱の外側」に注目しました。具体的な製品名になりますが、タカラトミーの『ダブルカメラドクターイエロー』。車両にふたつのカメラを搭載。車窓からの映像をスマホに再現するプラレールの新作ですね。また、今月発表されたスマートフォンとカードゲームをつなげて遊ぶ新しいプラットフォーム。ソニーの「プロジェクトフィールド」などを事例として紹介しました。ざっくりと言ってしまうと、デジタルとアナログのハイブリッド型のゲームが来年のトレンドになるかも。そんなお話をしました。
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谷: そんな平林さんの事例紹介のあとに、マイクロソフトのエバンジェリスト、増渕大輔さんが「女子高校生AIりんな」とMRデバイス「ホロレンズ(HoloLens)」を紹介されました。
平林: 増渕さんから「りんなちゃんは生産性を無視して感性重視」と聞いてから、俄然興味が湧いていろいろと話しかけています。イジワルして「いま何時?」と訊くと、絶対に本当のことを言わないで「一大事~~」などの答えが返ってきて、見事にからかわれています(笑)。
谷: MR(Mixed Reality)=複合現実のデモンストレーションもおもしろかったですね。
平林: 「ホロレンズ」は単なるヘッドマウントディスプレイではない。ディスプレイではなくOSが入ったPCのような装置ですよね。その装置で環境をセンシングして現実を取り込んでゲームにする技術は、気が早いですが「VRの次世代」を感じさせてくれます。
安田: 今回は残念ながら、僕は参加できませんでしたが中身が濃い話だったですね。
谷: 今、例に挙がった以外で注目している動向はありますか?
平林: まだ未体験で、正月にじっくりと遊ぶ予定ですが『マンション・オブ・マッドネス』というボードゲーム。これもアプリと連動するボードゲームということで注目しています。
安田: アウト・オブ・ボックスの真逆の動きもありますよね。来年は楽天などの企業がハードウェアに依存しない、スマホ+ブラウザのプラットフォームに参入する年になりそうです。そんな動向もあるので、業界内での人材の動きが盛んになるのではないでしょうか。あとは中国のWeChatではラッキーマネーというシステムがあります。あの発展形。おひねりやチップのように少額、かつ払う側が価格を決めるような課金のしくみが生まれるかもしれないですね。
谷: 私は月並みかもしれませんが『ポケモンGO』の影響を受けたAR型のアプリ、来年は次のヒット作が何か出そう、と予測しておきます。ということで、一気に2016年を振り返り、2017年を予測するオールゲームニッポンでしたが、ありがとうございました。
平林: こちらこそ、ありがとうございました。
安田: では皆さん、良いお年をお迎えください。