本稿では、スマートフォン用オンラインRPG『禍つヴァールハイト』のクリエイター陣によるインタビューをお届けします。ステージに登壇された、プロデューサーの坂尻一人氏、シナリオの生田美和氏、メインテーマ作曲の横山克氏、キャラクターデザインを手がけるThird EchoesのShingo Sugimoto氏とWataru Katsuo氏にお話をうかがいました。
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左から生田美和氏、横山克氏、Third EhoesのWataru Katsuo氏とShingo Sugimoto氏、坂尻一人氏
――まずは、タイトルに込めた意味について教えてください。
坂尻氏:“禍つ”はそのまま禍々しいという意味で、ヴァールハイトはドイツ語で“真実”という意味です。本作の世界は“光”が滅びをもたらす不吉の象徴で、これは光というものに抱きやすいイメージとは正反対ですよね。本作では、この光という普遍的な自然現象と対峙するため、人間にとって都合の悪い真実というような意味合いが込められています。
また、「王道の作品にはしたくないよね」という思いがチームでありまして、分かりやすいだけのタイトルにはしたくなかったんです。分かりやすい王道より、ちょっと背伸びしたところをイメージしました。
――ステージでは、シナリオの生田美和氏にお見せしたプロットが“ちゃぶ台返し”されたというようなこともおっしゃっておられました。
坂尻氏:オリジナルIPで勝負するという挑戦的なプロジェクトですので、王道すぎるものを提示してしまったかなと反省しています(笑)。でも、生田さんのおかげでなかなかない世界設定を作れたと思っています!
生田氏:これは私の仕事の仕方の特徴なのですが、会社さんからお話や企画の概要、プロットなどをいただいたら、まず最初にインタビュアーになるんです。この方たちが作ろうと思っているものは、本当にこれなのかなと、徹底的に聞き込みをします。そうやって先方が本当に作りたいものを洗い出して、それならこういうお話ではどうでしょうかとご提案するのが私のやり方なんです。
お話をいただいたときも、「何か本当にやりたいことがありそうだ」という雰囲気を感じまして、深くお話をうかがったら「サラリーマンの悲哀」というキーワードが出てきまして。「これか!」と(笑)。上司や部下、同僚の存在というものは、日々の仕事のうえで支えになることがあれば、しがらみになってしまうこともありますよね。そんななかで、できることにベストを尽くしていく……。現実に私たちが背負うような悩みを背負ってくれる等身大の主人公がいて、その場その場で最善を尽くしてくれるかっこよさ。それを描こうと思いました。
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“光”が人類に仇なすものとわかると、こうしたキービジュアルも違って見えてきます
――坂尻氏は、ステージでおっしゃっていた「リテイクを出さない」という制作方針が印象的でした。
坂尻氏:できるだけリテイクを少なくするというのが僕の信条なんです。さまざまな才ある方たちに集まっていただいて作品を作るからには、120%の力を発揮していただくことが第一。その相乗効果が、よりよい作品を生み出すものと思っていますので。もちろん、制作やデザインをするうえでの骨子となる企画の軸はあり、それは事前にきちんとお伝えしているわけですから、方向性がバラバラのものが上がってくることはありませんしね。
――次は、メインテーマ作曲の横山氏にお伺いします。メインテーマはハンガリーで収録されたというお話が印象的でした。
横山氏:本作のスケールはとても壮大ですよね。それをあますことなく表現するには、その壮大さにふさわしい曲でなければと感じたんです。もちろん、打ち込みで曲を作ってもそこそこ表現することはできますが、それでは本作ならではの曲にはなりません。違いを出すには、やはり大人数での収録だろうと考えました。
ハンガリーのホールでの、現地の楽団にお願いしての収録はこれまでに何度もやりましたので、これしかないと。中世ヨーロッパ風味の世界設定にもよく合うだろうと思い、僕にできる全力を直球で落とし込みました。
YouTubeで公開されているトレーラーで、横山氏によるメインテーマが使用されています
――坂尻氏は「基本的にリテイクを出さず、それをまとめるのが自分の仕事」とおっしゃっておられました。リテイクがないことで、逆にプレッシャーがかかったりはしましたか?
横山氏:プレッシャーはもちろんありましたが、リテイクの有無に関係なくフルスイングする(全力を出す)ことには代わりありません。特に本作のメインテーマは、フルスイングする以外にやりようのない曲にできたと思っています! 僕は、それぞれのクリエイターが多少“暴れて”いても、それをしっかりまとめていただけるというのが一番クリエイティブなやり方だと思っていますので、とてもやりやすく、ありがたかったです。
――Third Echoesのお二人にもお伺いします。ファンタジーでありつつ、現実味といいますか、ミリタリー要素も感じられるキャラクターデザインですが、両立されるうえで大変だったことはどんなことでしょう。
Third Echoes/Shingo Sugimoto氏:“ド直球ではないけれど、奇をてらっているというほどでもない”というコンセプトは、やはり一番気をつかったところです。鎧を着させるにしても、(騎士のように)全身が鎧一色というデザインにはせず、軍服のような服を着せることでミリタリーっぽさを出しました。
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主人公の上官候補となるヤスミン(左)とイグナーツ(右)。鎧のデザインはもちろん軍服の着こなしにも個性が出ています
Third Echoes/Wataru Katsuo氏:ファンタジー調のデザインに別の要素を……というより「どこまでファンタジーに歩み寄れば、ちょうどよくなるか」というアプローチで挑みました。“ファンタジーだけど、ファンタジーではない”というと言葉遊びのようでもありますが、やりがいがありました。
Third Echoes/Shingo Sugimoto氏:デザインのベースとなる軍服を、個々人がアレンジすることで個性が出ていたりと、いいデザインにできたのではと思います。
――横山氏にもお伺いしましたが、リテイクがないという環境でのデザインはいかがでしたか?
Third Echoes/Wataru Katsuo氏:「どこまでやっていいのかな……」というのはありましたね。たとえばの話ですが、もっと現代風の軍人のようなデザインにしていたらどうなっていたのだろう、とか(笑)。ただ、どうであろうといつも“フルスイング”でという心構えは、僕らも同じです。この作品が浸透していって、いい意味での本作の記号になれればいいなと思います。
――それでは最後に締めのひと言をお願いします。
坂尻氏:本作の続報は2018年の春頃にお届けする予定です。そこからは継続的な情報公開をして、リリースまで間をあけることなく話題を提供できるかなと考えています。KLabGamesのオリジナルタイトルとなるオンラインRPG『禍つヴァールハイト』、応援をいただければうれしいです!
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