『幻想水滸伝II』の物語を生演奏で追体験!「MUSICエンジン 第四回演奏会」レポート

2018年4月7日(土)、「MUSICエンジン 第四回演奏会」が渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて開催されました。

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『幻想水滸伝II』の物語を生演奏で追体験!「MUSICエンジン 第四回演奏会」レポート
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2018年4月7日(土)、「MUSICエンジン 第四回演奏会」が渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて開催されました。

MUSICエンジンは、ヴァイオリン奏者の河合晃太氏が主宰を務める演奏団体で、「レトロゲームから最近のゲームまで、大好きなゲームタイトルの音楽をつきつめていく」というコンセプトでの活動を展開。ソロ演奏やオーケストラ・レコーディング等の音楽活動で活躍しているプロ奏者たちが演奏を担当し、楽器編成も、それぞれの作品の世界観を表現するために最適な形を考えたものになっています。

今回演奏されたのは、1998年にKONAMIから発売されたプレイステーション用ソフト『幻想水滸伝II』。今年で発売20周年を迎えるこの作品は、中国の歴史小説「水滸伝」をモチーフとした壮大な大河RPGで、主人公とその幼なじみであるジョウイ、主人公の義姉であるナナミを中心にした物語が描かれています。また、「宿星」に導かれた108人にもおよぶ個性豊かな仲間たちを集めながら冒険することも大きな特徴で、発売から長い時を経た現在でも根強い人気を誇っている作品です。

本稿では、『幻想水滸伝II』の物語を追う形で50曲以上の楽曲が披露された本演奏会の模様を、体験記形式でお届けいたします。

【『幻想水滸伝II』を未プレイの方へ】
本稿では『幻想水滸伝II』の物語を追う形の演奏会の模様について記述しているため、文中で各楽曲についての簡単なご紹介や、物語の内容に触れている部分があります。これからプレイするご予定がある方はご注意ください。


MUSICエンジン 第四回演奏会
日時:2018年4月7日(土)
会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

プログラム:
M1 敵襲、疑惑、勝利への意欲、回想
M2 働かざる者食うべからず、平和山村人暮鳥声、郷愁、冒険の旅
M3 Beautiful Morning、母への祈り
M4 王者の行進、救出
M5 子供たちは野に遊び、あの丘に登ろう、不穏
M6 作戦、戦争、回想~ストリングスバージョン~
M7 彼方の星、過ぎた日々
M8 耳を澄ませば、静かなお部屋、ナハーラ・ヤン・クン
M9 パッサカリア合唱付き、フーガ「我があるじを讃えよ」、強敵出現
M10 彼女のため息、昔話
M11 なごみの時間、もっと遠くへ
M12 さざ波に運ばれて、2つの川、毎日がカーニバル
M13 囚われた街、誇り高きサラバンド、平和の賛歌
M14 光のない戦場、追いつめる、Mad Luka
M15 儀式、Gothic Neclord
M16 月夜のテーマ
M17 怒りの鉄拳、対決の時、銀狼
M18 回想~ストリングスバージョン~、Chant~あなたと出会い生をうけ、あなたを失い死を知った~、悲しみのレクイエム、なごみ BGM1、なごみ BGM2、エンディングマーチ~我らは常にいつならん(108人のその後)~Coda、La passione commuove la storia~情熱は歴史を動かす~
アンコール オープニングBGM



会場の渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールには、多くの『幻想水滸伝II』ファンが来場。およそ8割以上の方が女性だったのが印象的でした。また、会場のロビーには『幻想水滸伝II』ファンの有志によって贈られたフラワースタンドが飾られており、多くの来場者がじっくり見入ったり、写真に収めたりして賑わいを見せていました。

◆オープニングから心震わせる「回想」


開演時間を迎え、奏者の皆さんが登場。演奏が始まるかと思いきや、まず聞こえてきたのは……虫の声でした。ゲームの開始後、初めて耳にする音がまさにコレなので、非常にゲームに忠実な構成です!


しばらく虫の声が続いた後、いきなり緊迫感に満ちた重々しい「敵襲」が鳴り響きはじめ、ホール内は一気に、ゲームの最初の舞台であるハイランド王国の駐屯地キャンプと化します。続いて、ドラムと金管で、どろどろとした不穏な「疑惑」が奏でられたかと思うと、通常戦闘曲「勝利への意欲」が勇ましく奏でられました。

演奏がいったん落ち着いた後、静かに奏で始められるのは……オープニングスタッフロールの楽曲、「回想」です。波乱の運命に満ちた『幻想水滸伝II』の物語を思わせる、切なさにあふれるピアノ演奏がホール内に響き渡ります。さらに、原曲に入っていたボーカル部分は、コンサートマスターの河合氏がソロヴァイオリンでしっとりと演奏。美しくも切ない旋律に、思わず心が震えました。また、ホール内からは、すすり泣きの声も多数聞こえてきたのが印象的でした。

次に演奏されたのは、前作にも登場した傭兵・ビクトールやフリックたちの砦の楽曲「働かざる者食うべからず」です。リズミカルなパーカッションやオーボエ、チェロなどで、原曲通りのコミカルな雰囲気で披露されました。続いては、リューベの村の楽曲「平和山村人暮鳥声」。フルートやピアノによる穏やかな旋律とともに、小鳥の元気なさえずりも再現されていました。

主人公たちの故郷・キャロの街の楽曲「郷愁」が、鈴、ピアノ、フルートなどによるやさしい音色で演奏された後は、フィールドマップの楽曲「冒険の旅」が響きます。これから、波乱に満ちた長い旅路を歩むこととなる主人公たち。しかし、勇気を持って一歩ずつ先へと進んでいく主人公たちの姿を思い起こさせてくれる、勇壮で力強い演奏でした。

◆ナナミやジョウイらと紡いだ物語が、次々と演奏でよみがえる


次に奏でられたのは「Beautiful Morning」です。フルートやストリングス、パーカッションが奏でる明るく爽やかな旋律は、家に帰ってきた主人公と再会するなり「だいじょうぶ!?だいじょうぶ!?ケガはなかった!?」と心配するナナミの様子が思い起こされ、微笑ましくなるほどでした。続いての「母への祈り」は、ゲーム中のとある哀しいイベントで流れる楽曲です。小さく静かに鳴り響くトライアングルとシンセサイザーによるハープの音色、そして切ないピアノによる演奏は、「母に会いたい」という願いが叶わず絶望するジョウイの辛い心情や、彼の母に対する切実な想いをありありと感じさせてくれて、思わず心が震えました。

続いては「王者の行進」が、ティンパニやシンバル、金管楽器で重々しく奏でられます。ゲーム中では主人公たちがとある場所に連行されるシーンの楽曲なのですが、原曲のイメージ通りの演奏で、穏やかではない雰囲気がよく出ていました。そして、ビクトールとフリックが主人公たちを助けに来てくれるシーンの楽曲「救出」は、アップテンポな金管と美しいストリングスによる勇ましい音色が、ワクワク感と爽快感バツグンで、最高に気持ちいい演奏でした!


トトの村の楽曲「子供たちは野に遊び」では、ヴァイオリン奏者が楽器をギターのように持って弦をかき鳴らす形での演奏も交えて、フルートやオーボエがかわるがわる主旋律を奏でます。また、楽曲の後半では河合氏がヴァイオリンのソロ演奏を披露しました。続いてのミューズの楽曲「あの丘に登ろう」では、リズミカルな鈴とフルート、シンセによるチェンバロ風の音色、さらにストリングスも入って優雅な雰囲気に。続く楽曲「不穏」は、重々しいストリングスやティンパニの音色で、ゾクッとするほどの重い雰囲気。冷酷なるハイランドの皇太子、ルカ・ブライトが率いる王国軍の襲撃によって両親を失ってしまい、泣き叫ぶトトの村の少女・ピリカが思い起こされました。

◆紋章を授かり、戦火に巻き込まれてゆく主人公たち


やがて主人公たちは、同盟軍へと参加し、王国軍に立ち向かうことに。まずは戦争前の作戦会議のシーンで流れる「作戦」が、ドラムやストリングスで勇ましく響きます。続いて、シミュレーション風の戦争シーンの際に流れる楽曲「戦争」が、金管やティンパニによる重厚かつ壮大な演奏で披露され、激しく火花を散らして戦うさまが描かれます。続く「回想~ストリングスバージョン~」は、「回想」のメロディがストリングスのせつない音色でホールに響いては消えてゆきます。激しい戦争の烈火や、残虐極まりないルカの行為を目の当たりにしてしまったピリカ。そのショックによって、彼女の身に起こってしまうある悲劇……。そんな情景が鮮明に想起されるほど、素晴らしい演奏でした。

続いて披露されたのは、主人公とジョウイにそれぞれ、とある“紋章”を授ける人物であるレックナートが登場するシーンの楽曲「彼方の星」です。神秘的な旋律を、ストリングスが美しく歌い上げていました。さらに、主人公とジョウイが初めて出会ってから共に過ごした日々を追憶するシーンで流れる「過ぎた日々」の旋律が、あたたかさと寂しさを感じさせるピアノとソロヴァイオリンで響きます。ここで主人公とジョウイは、それぞれ異なる “紋章”を得ることになるのです。


フルートをメインにゆったりと奏でられた「耳を澄ませば」、シンセによるチェンバロ風の音色で優雅に奏でられた「静かなお部屋」に続いて演奏されたのは、サウスウィンドウの街で流れる「ナハーラ・ヤン・クン」です。この楽曲では、河合氏が立ち上がって華麗なソロヴァイオリンを披露。また、原曲に入っている手拍子も、ほかの奏者さんらがリズミカルかつ楽しげに再現。途中からはテンポアップして、さらにノリノリな演奏になっていました!

次に演奏されたのは、「パッサカリア合唱付き」、フーガ「我があるじを讃えよ」の2曲です。シンセによるパイプオルガン風の神聖な音色で披露されたこの楽曲は、吸血鬼・ネクロードが登場してのノースウィンドウ城での一幕が想起されます。続いての「強敵出現」では、ボスとの激しい戦いを思わせる緊迫感に満ちた音色がホールを支配しました。


物語が進み、主人公たちは軍師シュウを仲間にするため、ラダトの街を訪れることに。オーボエやフルート、ストリングスで織りなされる旋律が美しい「彼女のため息」に続いて披露されたのは、「昔話」です。この楽曲は、主人公とナナミの養父である人物・ゲンカクの過去についてビクトールが語るイベントで流れるのですが、「回想」の旋律も含んだ美しい音色を、ソロヴァイオリンがしっとりと奏でていました。

やがて、新たな同盟軍のリーダーとなった主人公。彼らの本拠地の楽曲である「なごみの時間」では、ソロピアノからストリングスが入ってきて、ソロヴァイオリンがゆったりと穏やかにメロディを奏でます。続いて披露された、物語後半でのフィールドマップ楽曲「もっと遠くへ」は、激しい戦火や運命に負けず前向きに歩き続ける主人公たちを思わせる、勇壮な音色が印象的でした。演奏が締めくくられると、観客からは大きな拍手が贈られました。

◆圧倒的な激しさの演奏で語られる、ルカとの決戦


休憩を挟んだのち、物語は後半戦に入ります。まずはレイクウェストの楽曲「さざ波に運ばれて」が、ストリングスとピアノ、そして木管楽器でたゆたう波のように穏やかに奏でられます。続いて、ウィングボード居住区の楽曲「2つの川」がチェロとパーカッションの響きで、トゥーリバーの楽曲「毎日がカーニバル」がストリングスのピッツィカート(弦をはじいて演奏する方法)とパーカッションでリズミカルに披露されます。

ピアノやフルートなどで切なげに奏でられた「囚われた街」に続いて、ロックアックス城の楽曲「誇り高きサラバンド」がトランペットやストリングスによって高貴な雰囲気で披露。さらに、「平和の賛歌」がゆったりと穏やかな雰囲気で奏でられました。この楽曲は、トラン共和国の首都・グレッグミンスター城で流れる楽曲であり、前作のオープニングテーマ「幻想の世界へ」のアレンジ曲でもありますね。


『幻想水滸外伝Vol.1 ハルモニアの剣士』の楽曲である「光のない戦場」が、重々しい鐘や金管、ストリングスで奏でられた後は、ついにルカとの決戦を迎えます。ルカとの戦いで流れる楽曲「追いつめる」は、パーカッションやストリングス、重厚な金管でアップテンポに演奏され、苛烈な戦いを想起させられます。さらに、主人公とルカの一騎打ちの楽曲「Mad Luka」では、さらに激しさが増した狂おしいほどのアップテンポで、弦が切れてしまうのではないか!? とこちらが心配になるほどの凄まじい速さの演奏が繰り広げられます。その鬼気迫る圧倒的な演奏は、思わず手に汗を握り、固唾を飲んでしまうほど。ルカの壮絶なまでの執念や狂気に、敢然と立ち向かう主人公……そんな雄姿がありありと思い浮かぶほどの激しい戦いが、見事に演奏で表現されていました。

◆最後の戦い、そしてエンディングへ……



シンセのパイプオルガンによる神聖な響きで「儀式」が披露された後は、ビクトールの因縁の敵である、ネクロード戦の楽曲「Gothic Neclord」が登場。パイプオルガンの音色にストリングスやドラムも加わってのアップテンポな演奏が、火花散るような戦いを彩ります。

ピアノ、ストリングス、鈴、そしてフルートソロとヴァイオリンソロのゆったりとした演奏による「月夜のテーマ」が優しく会場全体を包み込んだあとは、とある人物との戦いで流れる楽曲「怒りの鉄拳」の登場です。ゲーム中、この戦闘の直前に哀しみと怒りがワナワナと込み上げてくるようなイベントがあるのですが、その感情をよりかき立ててくれるかのように緊迫感と迫力にあふれる金管やストリングスの激しい音色がホール全体を支配します。続いて、すさまじくアップテンポなパーカッションやストリングスの早弾きが印象的だった「対決の時」を経て、重々しいチェロや金管の音色、緊張感をあおるティンパニらが激しく吠えた「銀狼」と、激しい連戦が展開されました。


そして迎えたクライマックス。……あの“約束の地”で対峙するふたり。ここで再び「回想~ストリングスバージョン~」が、切なさに満ちたストリングスでしっとりと歌いあげられます。続いて、荘厳に響く「Chant~あなたと出会い生をうけ、あなたを失い死を知った~」、悲哀に満ちた「悲しみのレクイエム」に続き、ピアノや木管、ストリングスでやさしく穏やかに奏でられる「なごみ BGM1」と「なごみ BGM2」、勇壮に響く「エンディングマーチ~我らは常にいつならん(108人のその後)~Coda」が次々と届けられ、最後は「La passione commuove la storia~情熱は歴史を動かす~」の美しく壮大な演奏が会場を満たしてゆきます。最後の一音がホールの空間に消えていくと、わずかな余韻……そして、大きな、大きな拍手が贈られました。


鳴りやまない拍手に応える形で披露されたアンコールでは、「オープニングBGM」が演奏されました。最後の最後にオープニングを演奏するというのが!素晴らしくニクい演出ですね!! 美しく勇壮な演奏が締めくくられると、再び割れんばかりの大きな拍手が巻き起こります。

奏者全員の一礼のあと、ほぼ全員の奏者が退場してもまったく拍手が止むことは無く、ステージに最後まで残った河合氏が、観客に向かって何度も深々とお辞儀をしていた姿が印象的でした。

◆生演奏で、物語を“追体験”するという素敵な体験


……こうして、今回の演奏会は幕を閉じました。ゲームの世界観を大切にした丁寧な編曲と演奏で、『幻想水滸伝II』の物語を音楽で追体験できた素晴らしい演奏会でした! まるで、会場に足を運んだ皆さんと一緒に、『幻想水滸伝II』を改めてプレイしたような感覚でしたね。次々に奏でられる名曲の数々が“思い出の扉の鍵”となって、心の奥底に眠っていたさまざまな思い出が呼び起こされていくのが、本当に心地よい時間でした。

今回の演奏会で筆者が非常に印象的だったのは、公演中も公演終了後も、ホール内のあちこちですすり泣きの声が聞こえていたという点です。美しい音楽や奥深い物語の面も含めて、非常に多くのファンの心に深く刻まれている作品なのだな……と改めて実感しました。『幻想水滸伝II』のいちファンである筆者も、演奏を聴いていて鳥肌が立ったり涙腺がゆるんでしまうことが何度もあり、とても素敵な時間を過ごさせていただきました! 今後また機会があれば、ぜひ再演されたらいいなと願っています。

【MUSICエンジン 次回公演情報】
2018年5月19日に東京オペラシティ コンサートホールにて、「MUSICエンジン 第五回演奏会」が開催予定です。この公演では、近年大きな話題となっているRPG『UNDERTALE』の楽曲がフルオーケストラで演奏されます! こちらのチケット一般販売はすでに終了していますが、チケットの追加販売(抽選制。2018年4月19日の23:59まで受付)が、MUSICエンジンの公式サイトで実施されるとのことです。ご興味をお持ちの方は、ぜひチェックしてみてください!

なお、MUSICエンジンは第五回演奏会以降も引き続き活動を予定しているとのことです。“大好きなゲームタイトルの音楽をつきつめていく”というコンセプトで独自の演奏活動を展開するMUSICエンジンが、次はどんな作品を音楽でつきつめるのか、今後の活動にも大いに期待を寄せたいと思います。

Photo by Studio Symgraph

《hide/永芳英敬》

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