■物語のおおまかな流れ
1.十二勇士の紹介
筆頭騎士ローランドやオリヴィエ、リナルドなどが登場
2.絶世の美女アンジェリカが登場
カタイ(中国の古名の一つ)のガラフロン王がシャルルを破滅させるために送り込んだ王女のアンジェリカを巡る御前試合をきっかけに、ローランドやリナルドが旅に出てしまいます。十二勇士の双璧を失ったフランスに、セリカン(中国の古名の一つ)王グラダッソがローランドの持つ聖剣デュランダルやリナルドが持つ名馬バヤールを欲して攻めて来ます。それを、アンジェリカの弟が持つ魔法の槍を手に入れたアストルフォが見事に打ち負かし、置いて行かれたバヤールを返すためリナルドを探す旅に出ます。
3.イスラム軍が侵攻
アフリカの大王アグラマン率いるイスラム軍がスペインのイスラム軍と連携してフランスに襲撃。ギリシャの英雄ヘクトールの血を引くロジェロという強敵も出現。合戦の中、リナルドの妹である女騎士ブラダマンテは敵であるロジェロと運命の出会いをして恋に落ちます。戦いは、戻って来たリナルドがイングランドの援軍を連れて夜襲をしかけたことで勝利に終わりました。
4.失恋で狂うローラン
フランスが大変だというのにアンジェリカを追いかけて戻ってこないローラン。アンジェリカが介抱したイスラム軍の若者メドロと結婚したと聞いてショックのあまり狂ってしまいます。聖剣デュランダルを始め、兜、鎧も投げ出して全裸でフランス中を彷徨い、1,000回も命を危険にさらすことに。長く旅に出ていたアストルフォは偶然、アフリカのアビシニア王国(エチオピア)に辿り着き、3賢者の導きで月にある「思慮分別」を取ってきてローランに飲ませることでようやく正気に戻ります。
5.イスラム軍を撃退
月から戻って来たアストルフォがアビシニア王セナプスを救い、協力を得てアフリカの大王アグラマンの王国を包囲。リナルドの夜襲で撤退したアグラマン率いるイスラム軍は自国に戻れなくなったため、シャルルにお互いに代表を3人ずつ出し合って決闘で決着をつけることを申込みます。
フランス側はローラン、オリヴィエ、フロリマールが、イスラム側は大王アグラマン、老戦士ソブリノ、セリカンの王グラダッソが名乗り出て戦い、フランス側はフロリマールの犠牲を出すものの勝利しました。
6.ロジェロの決闘
リナルドの妹である女騎士ブラダマンテと結婚するため、キリスト教の洗礼を受けることを決意するロジェロ。しかし、ギリシャ帝国の皇太子レオがブラダマンテを妻に迎えたいとシャルルに伝えたことを知り、恋敵と決闘するためにギリシャ帝国の軍に乗り込む。
この間、ブラダマンテがロジェロと結婚するため、シャルルに自分と戦って勝った者を夫とするという条件を許してもらったのですが…ロジェロは事を返ってややこしくするも、最終的に皇太子レオがロジェロとブラダマンテを祝福して結婚を辞退します。
7. ロンスヴァルの戦いで十二勇士の多くが戦死
シャルルは、アフリカ王アグラマンに協力したスペインを攻めて勝利し、マルシリウス王は貢物を出すことを約束。ローランが少数の部隊を引き連れて貢ぎ物を受け取りに行く段取りでしたが、十二勇士に数えられながら裏切り者ガヌの内通で奇襲を受け、ローラン、オリヴィエ、アストルフォなど多くの騎士が討ち死にしました。
ほかの勇士がガヌの裏切りを懸念する中で、最後まで信じていたシャルルは激怒し、スペインの本拠地サラゴサを焼き払って、マルシリウスとガヌを処刑します。
8.リナルドの死
ロンスヴァルの戦いで多くの勇士を失ったことに落胆し、ガヌに騙されたことを嘆くシャルルでしたが、ドラ息子のシャルロに甘かったことが同じような失敗を引き起こします。ある日、リナルドがシャルロの機嫌を損ねたため、自分の城に逃げこむことになり、シャルル自ら大軍でリナルドの城に攻め込みます。
なんとかリナルドの母の取りなしで、リナルドの愛馬バヤールをシャルロに献上することを条件に和解が成立。しかし、残忍なシャルロはリナルドの目の前でバヤールを殺してしまい、リナルドは悲しみのあまり地位を捨てて聖職者として神に仕える生活を送るようになります。しかし、年月が経ち、年老いたリナルドが教会建築の大工仕事をあまりに熱心に取り組むのを見た現場監督が他の労働者を怠け者と非難してしまい、労働者の反感を買ったリナルドは撲殺されてしまいます。遺体はドルトムントに埋葬され、守護聖人になりました。
9.ユオン・ド・ボルドー
ユオンが父であるギエンヌ公爵を若くして亡くしたため、シャルルの息子のシャルロと悪友のガヌの従兄弟にあたるアモリーは、ギエンヌ領を手に入れるために待ち伏せしてユオンの暗殺を企てるも、ユオンはシャルロを返り討ちにして殺してしまいます。
ボルドーが襲撃者を返り討ちにしたことを最初は喜んだシャルルでしたが、殺されたのが自分の息子だと知ると激怒。ユオンを許す代わりに、「スルタン(イスラム教国の君主)のゴーディソの宮廷に行き、スルタンの食事中に姿を現し、その近くにいる最も身分の高い賓客の首を斬り落とせ。そして、スルタンの娘である王女に3度口づけをしろ。さらに、貢物としてスルタンのあごひげ一掴みと、抜いた歯を4本もらってこい」と実現不可能に思える条件を提示します。つまりは全く許す気がない。
しかし、ユオンはこの条件を呑み、旅の途中で出会った妖精王オベロンに「象牙でできた魔法の笛」と「魔法のカップ」をもらって任務に成功。自らも惚れてしまったゴーディソの娘クラムリンダを連れてフランスに帰って結婚しました。
10.オジエ・ル・ダノワ
時系列的にはユオンの物語よりも前の話で登場。デンマークの初代キリスト教徒の国王ジョフロワは、シャルルから臣従の礼をつくすように求められるも拒絶したため、戦いとなって敗北。長男のオジエを人質に取られてしまいます。それでも立派な騎士に成長したオジエはイスラム軍との戦いで数々の武功を立て、シャルルの息子シャルロの妬みを買うことに。
ある日、シャルロはオジエの息子にチェスで「チェックメイト」と言われてカッとなり、チェス盤で頭をたたき割ってしまいました。シャルルはシャルロを偏愛していたので、ギリギリの所で復讐を踏み止まったオジエはその後もイスラム軍との戦いで活躍し、シャルルもオジエを愛しました。そんなある時、オジエがフランスに帰る途中に船が難破して妖精モルガナがいる“不老不死の楽園”アヴァロンに辿り着きます。
あまりに美しいモルガナと恋人になって至福の時を過ごすも、シャルルや宮廷が気がかりでフランスに戻るオジエ。しかし、そこは100年以上も時間が経過し、シャルルの血筋が絶え、カペー朝の初代王ユー・カペーが治めていた新しいフランスでした。そこでもサラセン人の勢力は衰えていなかったので、オジエは助力を申し出てフランスを勝利に導きます。
戦いが終わっても、王と王妃に引き留められて宮廷に残るオジエでしたが、嫉妬したモルガナに再びアヴァロンに連れ戻されてしまうのでした。
■最後に
いかがだったでしょうか?「シャルルマーニュ伝説」は数々の武勲詩をつなぎ合わせた物語です。とくに今回は11~13世紀頃に書かれたものの中からお伝えしたので、他にもエピソードは多くありますし、中には話の展開が異なるものもあります。
物語ですからどれが正解ということはないのですが、間違いなく言えるのは奇想天外で面白い作品だということ。思わずツッコみたくなる破天荒な登場人物たちの活躍をぜひ味わってください。
参考文献:トマス・ブルフィンチ著、市場泰男訳『シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス』(現代教養文庫ライブラリー、発行:株式会社インタープレイ)
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