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昨年4月に発表され、「人類滅亡まで残機(ノコリ)8人」という衝撃的なキャッチコピーで注目を集めた、PS4/PS Vitaソフト『ザンキゼロ』。約1年の時を経て、いよいよ2018年7月5日に発売を迎えます。
人類がほぼ滅亡した世界で、生き残っているのはわずか8人のクローン人間のみ。しかも彼らは、たった13日で寿命を迎えてしまいます。ですが、一定の条件をクリアすることで、記憶や経験を継承して生き返ることが可能。蘇った直後は幼い子供ですが、13日間で急速に成長し、そして老化を迎えるサイクルを繰り返します。
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このユニークなライフサイクルを軸に、荒廃した世界でのサバイバルを描くRPGとなる『ザンキゼロ』。サバイバルを題材とするゲームは、ジャンルを問わず様々な作品が世に出ているものの、ここまで人類が滅亡の寸前まで追いつめられている作品はそうありません。
個性的な世界観はもちろん、物語の展開や行く末も非常に気になるところ。筆者もひとりのゲームユーザーとして発売日を楽しみにしていましたが、事前に本作をプレイする機会に恵まれ、一足先に『ザンキゼロ』のサバイバルを体験。そのプレイを通して、本作の魅力や特徴についてお伝えしたいと思います。ただし、若干のネタバレもあるので、本作をプレイする予定がある方はご注意ください。
◆サバイバル? それとも陰謀!? 謎めきながらも、プレイヤーと隔絶しないストーリーが展開
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『ザンキゼロ』の物語はまず、残された8人のひとり「日暮ハルト」の視点で幕を上げます。サラリーマン風な装いに身を包んだハルトがいるのは、ビルの屋上。しかもフェンスを乗り越え──そのまま、立ち尽くしてしまいます。
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次のシーンで彼は、南国を思わせる眩しい日差しの中で目を覚まします。意識を失っていたハルトを呼び起こしたのは、右腕と左足が義手・義足な少女「比良坂サチカ」。どこか謎めく彼女に連れられ、この島──ガレキ島でサバイバルを営む拠点となるガレージに案内されます。
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ガレージには、これから生活を共にするメンバーたちが勢揃い。サチカ以外は、全員同学年(24~25歳)とのこと。そして、「海に囲まれており、この島から出られない」「島にいるのはこの8人だけ」「携帯電話などは取り上げられている」といった状況が伝えられます。
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「人類滅亡まで残機8人」という先入観を持ってプレイしていましたが、“ハルトの不自然な目覚め方”や“島の街並みが既に廃墟同然”など、腑に落ちない点が多々。「これは、本当に人類滅亡に瀕している世界なのか?」と、プレイヤー視点で疑問が湧き始めたところ、ハルトも誰かが仕組んだことではと疑い始めます。
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この疑問は、現時点では完全に解消されず、また他の参加者たちも少なからず怪しんでいる模様。“異常な事態”に追い込まれている状況は認識している一方で、“自分たち以外の人類が滅亡している”といった情報には懐疑的で、悪質なリアリティ番組に巻き込まれているのではと疑う者も。
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「人類滅亡」などの情報源は、不定期に放送される「エクステンドTV」という番組から寄せられたもの。外部(かどうか、正確には定かではありませんが)から寄せられる情報と接点はこの番組のみ。しかも映像が流れるだけなので、意思の疎通も不可能。その情報が本当かどうか問い質す術はなく、また人類滅亡を証明する方法もありません。
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しかし、「エクステンドTV」が発信する情報が怪しいものばかりかと言えば、そんなことはありません。ハルトたちがクローン人間という事実を突きつけるのも、この「エクステンドTV」でした。その証拠として、ヘソの部分にある「ペケ字キー」の存在を指摘。また、少し後の展開になりますが、死亡時に残された「ペケ字キー」を元に蘇らせる──その仕組みや使い方などを「エクステンドTV」が明かし、同時にそれが事実であったことを“実証”として見せつけられます。
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ひとつの事実が、全ての言動を裏付けるわけではありませんが、常識を覆すような情報が現実であることを思い知らされるハルトたち。人類滅亡については疑問を残しながらも、ただならぬ事態に置かれていることを実感させられ、このサバイバルな状況を受け入れていきます。
ここまではまだプロローグの段階ですが、個性的だからこそ“奇妙”とも言える設定や状況について、しっかりとキャラクターたちが疑問を提示している点は、個人的に好感触でした。推理モノやホラー、サスペンスなどの作品で、「なんでそこを疑問に思わないんだよ!」「どうしてそこに気づかないんだ!?」と思ってしまう展開やストーリーに出会ったことは、誰しも一度はあるでしょう。もちろん、いざ当事者になるとそこまで頭が回らないとも思いますが、プレイヤーの立場であればやはり気になるものです。
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ですがこの『ザンキゼロ』では、例えば「人類滅亡」といった彼らが置かれた“奇妙”な状況など、多くのプレイヤーが感じるであろう疑問点について、キャラクターの側からもその疑問がちゃんと発信されています。こういった疑問をプレイヤーと共有しないキャラや物語とは、どうしても気持ちが離れがちになってしまいますが、そういった齟齬は(少なくとも今回プレイした範囲では)感じられません。
また、作品内で疑問が提示されるということは、それに対する答えが明かされる可能性が非常に高い、と見ていいでしょう(稀に、その期待が外される作品もありますが)。プレイヤーが引っかかり、キャラも留意している“疑問”の数々に、どのような結末が用意されているのか──しっかりと“問題”を掲げることで、その“回答”に対する興味をかき立て、先へ先へと進みたくなるプレイ意欲へと繋げてくれます。設定こそ奇抜ですが、ゲームの作りそのものは地に足が着いており、いい意味で見た目通りの作品ではない印象を受けました。
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ちなみに、今回プレイした約6時間ほどの間で、人類滅亡の証拠や(もしいるならば)黒幕の存在に辿り着くことはできませんでした。もちろん、断片的な情報はいくつもありましたが、いずれも想像の余地があるものばかり。この想像を刺激される感覚もまた心地よく、サバイバルを進める傍らであれこれと思考を巡らせつつのプレイを楽しみました。
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そしてもうひとつ、本作の物語面について言及したい点があります。それは、ハルトたちがそれぞれ持つ「罪」についてです。サバイバル生活を送る中で、ガレキ島の近くにいくつもの島が流れ着きます。例えば、一つ目の島は、ハルトが最後にいたビル──真白ガーデンタワーのある島です。
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その島も廃墟と化していますが、更にハルトたちに向かって攻撃してくる危険な生物たちも点在。ただしこの生物たちは、肉などの食料や素材になるので、一方的に忌避する存在ではありませんが、そちらについては改めて後述します。この流れ着く島が持つ重要な役割のひとつ、それは──ハルトたちの過去の「罪」が暴かれる点にあります。
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廃墟となった真白ガーデンタワーを探索していると、進行度に応じて、廃墟に放置されていたテレビから「エクステンドTV」が流れ出し、ハルトが編集者として取り組んだ記事がきっかけで、悲劇が起こったという事実が語られました。このことが原因で、ハルトはビルの屋上に向かい、冒頭の「目覚め」に繋がります。
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また、第二の島では、別のキャラクターである「玖保田ゼン」の過去が紐解かれることに。このような形で、彼らの罪がそれぞれの島で明らかとなっていきます。この過去の「罪」自体も気になりますが、果たして“誰”が、“なぜ”用意したのか。それを突きつけることで、どのような“結果”を得たいのか。その全てが謎めいています。
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人類が滅亡に瀕しているとすれば、彼らの過去に関わった人たちも既に息絶えており、その罪を白日の下に晒したところで何の意味もありません。また、罪の掘り返しこそが理由で、島や人類滅亡はそのための舞台装置だとするならば、「ペケ字キー」による超科学的な蘇りの手段を設置する意図が不明です。
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「罪」を告発する島が定期的に流れ着くガレキ島。ここでは、決定的な死を回避できるシステムが確立していますが、それは同時に「死による逃避」すら許されない世界なのかもしれません。人類存続の可能性と、いずれ流れ着く「過去」が共存するこの地は、“希望と罪の島”なのか──そんな想像もつい膨らんでしまいます。
無論、これはあくまで一プレイヤーの憶測であり、また6時間程度のプレイにおける途中経過での感想に過ぎません。おそらく、筆者の思考など及びもつかない真実と展開が、更に待ち受けていることでしょう。
生きるため、食らうために戦え! サバイバルにはバトルも必須