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――気になっていたのですが、今回なぜ『夢100』からビッキーを選んだのでしょうか?
三木:候補は色々あったんですけど、キャラクター性に合ったものをつくろう、と決めていて朗読をイメージした時に、合いそうなキャラクターとしてビッキーを選びました。
――その『夢100』を含めて、既にたくさんのイケメンコンテンツを作ってますが、なぜ今回VRに挑戦したのですか?
木原:まず「イケメンテックラボ」設立にあたって、「イケメンとはなんぞや」という話がありました。イラストだけが「イケメン」なのか?と言ったら、NOなんです。声も要素の一つでありますし、動きもそうです。ではジークレストではよりどこを強化するべきかと考えたときに、今まで挑戦してこなかった3Dや動きなどでのイケメン表現ができるVRに挑戦してみようとなりました。
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――その領域を表現するためのVR化なんですね。しかし2Dから3Dにという技術的な面はもちろん、女性向けの絵は独特な部分もあってかなりハードルが高かったのではないかと思うのですが……。
三木:3Dモデルはイラストの印象を元に、3Dにしていく過程で人体に近づけていきました。動きはモーションキャプチャを使用しました。ジークレストが提供するコンテンツで動きが入るものは今まであまりなかったのですが、お客様のイメージを超えるものをつくりたいと思って開発しました。ただ、その中でも重要視したのは全体の流れや雰囲気づくりなどのユーザー体験を考えることでしたね。
――最初からビッキーがいるわけではなく、そこまでの過程があることで特別感が全然違いますよね。
三木:あとはイケメンをイケメンと感じてもらう環境を整えていきましたね。音がチープだったり、立体的に聞こえなかったりするだけで雰囲気が嘘っぽくなってしまうんです。今回はそういう部分を作りこむことができたので、臨場感があったと思います。
――外で雪が降っていたり、部屋の雰囲気がすごく合ってました。
木原:『夢100』の世界に入れるので、周りの環境がしっかりしていなければいけないと思ったんです。最初に茨田には、そういうところを意識して開発してほしいとオーダーしました。なので立体音響を使って音の位置を付けられるようにとか、実際に僕たちが現実世界で暖炉の前に座った時、五感として何を感じるか。そういう部分が必要な要素だと。
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三木:部屋の大きさもかなりこだわっています。ビッキーは王子様なので、彼のいる部屋が狭すぎてもおかしいし、広すぎると二人っきりでいる感覚が得られにくいので、ちょうど良さそうなサイズ感を考えて作っていきました。あとは暖炉の火や外の雪を降らせたりして、明るすぎずムーディーな照明にしようと。
――狭すぎるとお城っぽくないですし、さらに緊張してしまいますよね。そういう違和感のないちょうどいい広さでした。他にはどういう工夫をされたんでしょうか?
木原:女性が体験するという観点で言うと、雰囲気をいかにかもしだすかというところですね。雰囲気を言語化するのは難しいのですが……男性向けと女性向けのVRは雰囲気が違うんです。その点ではUIも工夫しました。
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三木:文章も含めて、どうやったらなるべく世界観を崩さないように誘導できるか。スタートボタンを押すとかだと興ざめしてしまうので、手紙っぽくしようかとか、スマホはどうなんだろうとか……。
木原:男性向けVRではボタンが配置されて「そこを押せ!」とかでもあまり違和感はないのですが、女性向けではそこから注意してシステムの構築をしました。
――VRが現状、男性向けのコンテンツの方が多いからかもしれませんね。
三木:VRの最初の誘導のシーンも、女性では気づかない人が結構いて、「どうやって始まるの?」と言う人もいました。こうしたVRに慣れていない人のためにも、もっとわかりやすくしないといけないと思いましたね。
――映像を見ている感じで、じっとしていれば始まるんじゃないかと思ってしまうのかもしれません。しかしそこまでこだわると、技術周りでは大変なことも多かったのではないでしょうか?
茨田:今回はVRなので二つの画面に描画しないといけないんですけど、かなり負荷が大きいんです。なのでなるべく軽くなるよう色々整えて、一定のクオリティを保てるようにしました。
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