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5回目となる同イベントは、仙台市が2005年から産業協定を結んでいるフィンランド共和国オウル市との独自ネットワークを活用し、仙台・東北にゲーム/ICT産業を構築するために設立されたコンソーシアム「グローバルラボ仙台」が仙台市と中心となって開催しています。同日はゲーム内容を競う「ゲーム部門」とゲームの売上を競う「GLS for Education部門」の学生チームが特別審査員の前でプレゼンテーションを行い、それぞれの最優秀タイトルを決めました。
インフィニットループでゲームエンジニア・プランナーを務める川口功氏がモデレーターを担当したトークセッションの模様を本稿でお伝えします。
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・『NARUTO -ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム』の開発などで知られるサイバーコネクトツー 代表取締役の松山洋氏。
・セガゲームス 執行役員クリエイティブオフィサーの大橋修氏。
・コナミデジタルエンタテインメント プロダクト推進室プロジェクトマネージャー、アートディレクターの根岸豊氏。
・インフィニットループ 執行役員 仙台支社長、仙台ゲームコート代表の澤田周氏。
・フィンガーソフト社 CEOのテーム・ナルヒ氏。
■南米でもアニメ・ゲーム市場が広がっている
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2018年の国内家庭用ゲーム市場規模が、前年度約4400億円をわずかに下回る4343億円だったことを挙げた松山氏。少子化の影響もあるとしながら、「ソフトの売上は好調でも、ハードはある程度普及してしまったのではないか」と分析しました。
一方で、ゲームは世界中で盛り上がっており、「北欧だけでなく、この5年くらいで南米市場規模も大きくなっている」とのこと。とくに海外では娯楽品であるゲームのハードなどにかかる関税が高かったため、任天堂やSIEのように現地で製造する工場を造って価格を抑えたことが大きく、中東の富裕層では数万本単位でゲームソフトが売れることもあると言います。
「南米というとサッカーなどスポーツのイメージが強いですが、最近は動画配信で『聖闘士星矢』『美少女戦士セーラームン』など昔のアニメが安く買えるため、アニメ市場も広がっている」(松山氏)。
■VRはブレイクスルーを迎えた時、もっと広がっていく
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大橋氏はセガゲームスのように、VRゲームを体験できる施設が着実に増えているとしながらも、「デバイスがもう一段進化しないとその先に行かない」と話しました。とくにVR体験は楽しいものの、「準備が大変であったり、一人でやると少し寂しかったり」とクリアすべき点がまだあり、そこをブレイクスルーしてもっと自由に遊べるようにする必要があると言います。
現在のスマホゲームの人気も、スマートフォンが普及したからこそであり、「将来的に主流となるのがVRなのかARなのかは分からない」ものの、それに備えて「技術は培っておきたい」とのことでした。
■インディーズゲームコンシューマー市場について
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近年は小規模の開発チームや同人サークルによって造られる、インディーズゲームの人気が高いことについて、松山氏は「今に始まったことじゃなく何年も前からPS4やニンテンドースイッチでダウンロードして遊べるようになっている。インディーズだからとかは関係なく、ゲームのボリュームによって値段を付けている」時代だと言いました。
しかし、アメリカなどの海外では、学生時代にインディーズゲームで実績を作って卒業と同時に起業する人が少なくないのに対し、日本ではまだその動きはほとんど見られないと分析します。
「海外でインディーズゲームを買い付け、日本などのアジア市場に展開する企業が増えてきた。逆に日本のインディーズタイトルが海外で売られるのはほとんどない」(松山氏)。
これに対し、大橋氏は「日本は販売するパブリッシャーの立場が強いが、欧米は制作するスタジオが強い。欧米では小さいスタジオができて、技術力に特化したゲームタイトルを造れば中国の大手企業が買ってくれるといった夢がある」と違いを説明しました。
その上で、「日本だとゲームを作ろうとしたら大きいゲーム会社入る選択になり、一旗揚げようという人は少ない。ただ、現在はSteamのようにパッケージではなくダウンロード販売できる環境が揃っている」と、ゲームを販売するルートは広がっていると言います。
根岸氏は毎年京都で開催され、年々規模が大きくなっているインディーズゲームの祭典「BitSummit」に出展されているゲームのクオリティーや熱量の高さを挙げ、同会場には大手ゲーム企業も参加していることから「買い付けの場」としての側面も大きくなっているのではと分析しました。
「良いなと思った作品はすでに配信が決まっている。今後は日本の学生が就職せずに、開発したゲームをいきなり売っていくというのも考えられる」(根岸氏)。
■フィンランドのゲーム環境は?
フィンランドにおけるゲームスタジオの状況を聞かれたナルヒ氏は、「フィンランドでは小規模の開発チームであっても、ゲームを販売しやすい環境。2年ほど前からインディーズタイトルも増えていますが、PG(ゲーム機などで動作するコンピューターゲーム)も開発しなければいけない意識があり、両方を兼ね備えた所がたくさん出てきました」と答えました。
同時に、インディーズゲームのタイトルの数が増えたゆえに、どうしたらユーザーに認識してもらえるかが一つの壁になっていると言います。
「ここ一年ほどの動きで感じているのが、スマホゲームの人気が長期的に続いていることで、プレイヤーの質も上がっている。ゲームの中身やテイストが洗練されていないと、皆さん遊んでくれない。簡単な仕掛けじゃ満足してくれなくなっている」(ナルヒ氏)。
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