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同作は複数のゲームタイトルプロジェクトとして進行予定で、第1弾は知力が試され、コレクターの興味を駆り立てるカードバトルゲームです。無料のWEBゲームとして、体験版のリリースは2019年夏頃を予定、本格リリースは2020年2月を目指しています。職業によって「Busines job」や「Freelance job」、「public job」など5つのジョブトライブに分かれ、覇権を競い合うファンタジー世界を舞台に、プレイヤーは「職を持たない」という特別な存在として数多くの職業と出会い、仲間を見つけ、成長をしていくというストーリーが展開されます。
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制作陣は、『金田一少年の事件簿』や『神の雫』など大型ヒット作を生み出した樹林伸氏がストーリー構成を担当。キャラクターデザインにも、『マクロス』シリーズや『ガンダム』シリーズで知られる美樹本晴彦氏を始め、著名なクリエイターが参画しています。
原作である山田コンペー氏の『日本の給料 &職業図鑑』シリーズ(宝島社)は、これまで弁護士や医師といった定番の職業から、ユーチューバーやコスプレイヤーなどの新しい職種まで、給料や仕事内容を擬人化したRPG風イラストとともに紹介。ゲーム化することでグローバル展開し、世界中の人たちの職業における理解を深め、互いの「Job」に対してリスペクトを生む社会貢献の意義も狙いの一つだと言います。
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■ブロックチェーンとは?
「仮想通貨」であるビットコインの取引を記録する「分散型台帳」の中核となる技術。取引データをまとめた「ブロック」を連なるように「チェーン」で繋いで保存したデータベースです。ビットコインを利用している全ユーザーのコンピュータにデータが保存されるため、特定の管理機関は存在せずに権限が集約しないことが特徴です。外部からのデータ改ざんが非常に難しく、記録された内容の信用度が高くなるメリットがあります。
一般的なブロックチェーンゲームは、ゲーム内通貨に仮想通貨を利用しているため換金可能で、獲得したアイテムなどもプレイヤー同士で売買可能となっています。
■ゲーム業界に革新を起こす
同作の運営会社でシンガポールに本社を置く「Digital Entertaiment Asset」CEO 山田耕三氏より、同作の3つの革新「課金の排除」「クリエイターを守る」「所有の概念をアップデートする」が発表されました。
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同作は無料で遊べますが、クリエイターが描いた「職業カード」のイラストデザインを気に入った場合は、連動する「Art Auction」でブロックチェーンによって管理されたデジタル・アセット(アート)の真の所有権を手に入れることができます。こちらは個人の資産として保護されることに加え、ゲーム内のエフェクトやサイドストーリー、ゲーム外におけるオーナーコミュニティへの参加などの特典を享受することができます。
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これまで業界ではクリエイターが描いたイラストは基本的に買い切りであり、どれだけ好評でも追加報酬は入りませんでした。しかし、このシステムによって、クリエイターはイラストが評価されれば何度でも報酬を得る機会が設けられるのです。
■“世界に殴り込みをかける”ゲーム
同日のトークセッションは、原作者の山田コンペー氏、シナリオ担当の樹林伸氏、22年ぶりにゲーム業界に復帰したアドバイザーの「株式会社イオレ」代表取締役社長の吉田直人氏、ブロックチェーン部分の技術開発を担当する「株式会社テコテック」代表の釣崎宏氏、ゲーム開発を手がける「デジタルエンターテインメントアセット」の大津民地氏、ブロックチェーン関連に数多くの知見を持つ森和孝弁護士、さらにスペシャルサポーターに「WBOスーパーフェザー級世界チャンピオン」伊藤雅雪氏が登場しました。
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吉田氏は、「子供の頃にゲームでモンスターを倒した時にお金がもらえたんですけど、それが現金だったら良いなとずっと思っていた。そんな時代がいつか来るんじゃないかと思っている内に、技術が進化してブロックチェーンを使うことでバーチャルのお金が実現した。それによって、モンスターを倒すことで現実に何かをもらえる第一歩が踏み出せると思ったんです」とブロックチェーンの発達でエンタメ業界が激変すると確信して22年ぶりにゲーム業界復帰を決めたと明かしました。
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樹林氏は同プロジェクトの魅力について、「話を聞いて非常に夢がある仕事になりそうだと感じた。クリエイター業界全体に対してもそうだけど、例えばアフリカで貧しい子供が何かの拍子にこのゲームを遊んで手に入れたバーチャルのお金を現金に換えて生活に余裕が出てくることも起こりうるくらいすごいこと」と挙げました。
プロゲーマーがeスポーツの世界で活躍する舞台が整い、収益を得られるようになった延長線にブロックチェーンを活用したゲームがあると感じているとし、「関わることができて非常に光栄ですし、楽しみです」と意気込みを述べました。
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山田氏は、「そもそも『日本の給料 &職業図鑑』の始まりは、強風や豪雨の中で働いている人達を見て、もっとスポットを当てて世の中に知って欲しいと思ったから。RPGと結びつけたら面白そうじゃないかと思ったんです。僕は『一億総かっこいい職業』をコンセプトにしていて、働いている皆さんは本当にかっこいいと思っています」と、ゲーム化することで日本だけでなく世界中に職業のリスペクトが広がることに期待を寄せました。
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多くのゲーム会社でプロデューサーやディレクターを務めた大津氏は、「ゲーム業界が変わるのは新作ハードの登場、もしくは新しいビジネスモデルの変化だと思います」とゲーム業界の変換期が今来ていると着目しており、シンガポールを中心に活動している森弁護士は「ブロックチェーンは各国が法整備を進めている状況です。私はシンガポールを中心に活動しているのでその温度をすごく感じる。しかし、日本ではなかなか面白いプロジェクトが届いてこなかった現状で、このプロジェクトがシンガポールから世界に発信されてどうなるのか興味深い」と知見を述べました。
また、鶴崎氏は「ブロックチェーンは、昔からあった『ビザンチン将軍問題』に現実解を提示したように本当に面白い技術」とブロックチェーンの魅力を伝え、伊藤氏はボクシングに重ねて「世界に殴り込みを掛けていくことに対して、刺激を受けますし、応援したい」と声援を送りました。
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また、樹林氏はクリエイターにとっても夢があるとアピール。「正直、クリエイターにとって作品の買い取り契約は、あんまり美味みがない。評価されたらその分、さらに報酬がもらえるのは夢があって、業界に人が入ってこようとする。漫画業界がここまで人材豊富なのも、印税で稼げるイメージができてきたからですよ。このゲームで、若いクリエイター達はこれからすごい夢を叶えていける気がする。漫画やアニメ、ゲームなどコンテンツ業界全体が潤っていくのが凄く大事だと思います」と伝えました。
最後に吉田氏は同プロジェクトについて、「僕らがビジネスで色んな夢を与えるようなプロジェクトになれば良いなと思う。これだけ業界の重鎮が集まったプロジェクトはなかなか無かったと思う。僕らは伊藤さんのように世界でチャンピオンになりたいと思っている」と意気込みを述べました。
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■山田コンペー氏に訊くゲームプロジェクト始動の経緯
発表会後、山田氏に同プロジェクトの詳細を訊きました。
――いつ頃から動き出していたんですか?
山田コンペー
一年前くらいですかね。お話を頂いていて、ゆっくり企画が練られて、有名なクリエイターの方々も参加してくれるようになり、ようやく形になりました。
――ご自身がブロックチェーンゲームを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
山田コンペー
新しい技術を使ってゲームを作るというのが一番大きかったです。あとはクリエイターの方を守れるという観点も魅力に感じた。日本の職業図鑑で描いてくれたイラストレーターの方にも色々還元できると思ったんです。
――ゲームタイトルに込められた意味は何でしょうか?
山田コンペー
ゲーム内容になるんですけど、今ある職業を大きく5つの部族に分けまして、振り分けなどは今後詰めるんですが、大雑把に言うと、フリーランス部族、公務員系部族、サラリーマン系部族、未来形職業部族、あとちょっと闇系職業部族なんですね。この部族の人たちが異世界でバトルを繰り広げるようなイメージということでタイトルは決まりました。
ストーリーは樹林先生が全て担当しています。僕としては、もう職業がRPGのキャラになって活躍するだけで「一億総かっこいい職業」のテーマに適っている気がします。職業同士が戦うのか、職業同士が連携してモンスターと戦うのかは、まだこれから決めていく部分ですね。
――ゲーム開発にはどのように関わっていくのでしょうか?
山田コンペー
僕は基本的に原作者として、世界観の構成などに意見を言わせて頂くだけです。毎週1回は制作会議があるので、できる限り参加させて頂いています。
――豪華なクリエイターがこれだけ集まりました。ご自身はゲームにどのような期待感を抱いていますか?
山田コンペー
世界に向けて、日本のクリエイターをどんどん輩出していけるようになれば良いですよね。これから出てくる若いクリエイターの方々を支援したい思いは強いです。このゲームがそのための一つの媒体のようになれれば嬉しいですね。体験版が完成すれば、今後はよりイベントに出展してPRもしていきたいなと思っています。
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