平成ゲームメモリアル第2回「本当のゲームハード戦争の時代を話そう―“ハードが無くなる”トラウマ」

平成の時代で起きた、ビデオゲームの出来事についての座談会「平成ゲームメモリアル」。第2回は、数多くのゲームメーカーがハードに参入した、20世紀最後のゲームハード戦争について語りつくします!

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マルチメディア時代のハード戦争


葛西祝1995年を過ぎてからのゲームハード戦争は、過去のSFCやメガドライブ、PCエンジンといったゲームメーカー主導のハード戦争とは別物になるんですよね。ソニーの参入であったり、パナソニックの3DOであったり、もともとゲームとは違う産業から、ゲームハードが出てきました。

SHINJI-coo-Kそうですね、それゆえに初期は怪訝な反応があったように記憶しています。これは果たして受け入れられるのか?という。複数登場したから、ユーザーもどれを買えばいいのか混乱していたように思います。

G.Suzuki確かにソニーのPSも、全くの他業種からやってきた存在でもありましたしね。ソニーもSFCにチップを提供していたとはいえ、松下電器の3DOからを考えると、数年連続して他業種からゲーム業界へ刺客が襲来してきたように思えます。

SHINJI-coo-Kマルチメディアといえば、そういえばPSもサターンも(PCエンジンの流れを汲んで)音楽CDなどの再生もできたりしていましたよね。

末永してましたね。懐かしい。8cmCDをPSでよく聴いてました。あと、逆にPSのCDをコンポに入れると隠しトラックや警告ボイスを聞けるとかありましたよね。

SHINJI-coo-Kああー!懐かしい!ちょっとした別の遊びとしてそういう楽しみ方もできましたね!

G.Suzuki警告音声と言えば『SDガンダム ジージェネレーション』シリーズとかにも入っていましたよね。CDのデータ領域の警告をしつつ「ガンダム」シリーズの名言を使った寸劇をして大爆笑した覚えがあります(笑)。初期のPSタイトルは初代『リッジレーサー』や『エースコンバット』を筆頭に、BGMがCD-DAで収録されていましたから、そのままサントラ代わりになったりして面白かったです。

葛西祝サターンでもソフトがそのままサントラになるってありましたね。このあたりはハード間で競い合いつつ、共通していた方向性だったのかも。

末永あと、メモリーカードに初めて触れたのがPSだったので、当時は結構驚きました。ガジェット感があって楽しかったし、アイコンが並んでるのも印象的でした。

G.Suzukiそうですね。メモリーカードにはソフトだけでなくゲーム雑誌にもカードシールが付録だったり、ゲームの進行状態でアイコンが変化したりと楽しかったですね。また、CD付き雑誌だけでなく公式でも『チョコボの不思議なダンジョン』に付属していた「不思議なデータディスク」に「最強データ」があったりと、思い返してみると色々な試みがありましたね。


末永ありましたね。『ファイナルファンタジーVll』を初めて遊んだとき、不思議なデータディスクに入っていた最強データを使ってしまったんですよね。そしたら当たり前ですけど全然面白くなくて(笑)

葛西祝逆にストーリー主体で楽しめなかったですか(笑)?

末永なんかもう、やる気が削がれてしまって(笑)。ダメでしたね。最初のステージからアルテマウェポンを振り回して蹂躙してるのに、苦労して世界救わないといけないのか……みたいな。

SHINJI-coo-Kほんとに伝説のソルジャーとして始まってしまったんですね(笑)


葛西祝PSでは『ファイナルファンタジーVll』が映像やストーリーの衝撃を起こしましたよね。その他にも『メタルギアソリッド』や『Dの食卓』など、もともと3DOで開発されていたり、発売されたりしたソフトもPSにやってきて、その流れは決定的になったなと思います。

G.Suzukiポリスノーツ』もそうでしたよね。『ファイナルファンタジーVll』発売当時、あまり意識を向けていなかったこともありましたが、発売後は「いつのまにか皆が持っていて話が通じる」みたいな事がありましたね。雑誌の攻略記事を半分頼りにしつつ進めていた思い出があります。

先に葛西さんが言われていた通り、物語展開上でプリレンダリングなど映像やカットシーンを挿入できるようになって表現の幅が広がりましたよね。

葛西祝逆に『メタルギアソリッド』はプリレンダムービーを避けていましたね。ゲームプレイと同じリアルタイムグラフィックによるムービーを、当時から堅持していました。ムービーシーンが多いタイトルですけど、ゲームプレイとは分離させたくないんだって意識があったんだろうなと。

SHINJI-coo-K当時の作品は、映画と戦う、映画を実現するという野望を抱えていたように思えますね。


G.Suzukiそうですね。98年9月2日に発売された『メタルギアソリッド』も映画的な演出を含んだリアルタイムレンダリングとフルボイスで、21世紀へと繋がる未来を予見させてくれるものが沢山ありました。

ストーリーも、政治的なものや哲学的なもの、ミリタリー的なものも加わるようになって、「ゲームそのものが操作だけでなく、視点(3D)や物語的にも複雑になっていく」みたいに感じました。また『ファイナルファンタジータクティクス』も難しい政治劇や悲劇が中心で、「世界を救うなんて簡単にはいかないな」と打ちのめされました。


葛西祝一方サターンでは『NiGHTS into Dreams...』のような、旧来の価値観を保ったまま、新技術に合わせたアクションを作っていました。しかし時代の流れに呑まれ、映画的な大作RPGも必死で作ろうとしていた……というのもしみじみします。

3Dシューティングの『パンツァードラグーン』が、なんと3作目に『AZEL -パンツァードラグーンRPG-(以下、AZEL)』とRPG化したり。それでもシューティングとターン性バトルをミックスした。野心的な名作に仕上げたのはさすがでしたね。


SHINJI-coo-Kあと自分はセガサターンに広井王子さんのイメージがありますよ。『サクラ大戦』しかり『天外魔境 第四の黙示録』しかり。この辺はメディアミックスが盛んだったので、なおさら印象深いというか。

末永自分が子供だったのもありますが、GBとかSFCのころは漠然と遊んで楽しい!みたいな感じだったんですよね。それが、PS・N64になってできること・表現・演出が一気に増えて、この先ゲームってどうなっていくんだろうと、「ゲーム」という文化そのものに興味を持つきっかけになりました。『アクアノートの休日』を初めてプレイしたときの感動と驚きが今でも忘れられない……。


SHINJI-coo-Kおお、あの名作の……!クリアっていうゲームにとっての終わりを設けない作品として、ゲーム表現の幅が本当に広がったのがわかる作品でしたね。ハードと共に表現も新しいものが生まれたという。

葛西祝ソニーのように、ゲームメーカーが主導じゃない会社の作ったハードだったからこそ、そうしたゲームもリリースできたんだと思いますね。

G.SuzukiPS後期のアクションやシューティングゲームも、RPGなどの演出に影響を受けると共に、3Dや幕間の映像によって表現方法が広がり、より詳細で奥深いストーリーを盛り込むようになった印象がありますね。フルボイスと一部ボイス実装へ本格的な過渡期というのも含めて。


最近、初期の企画書が発掘された『エースコンバット3 エレクトロスフィア』では、SF要素に加え、劇中のニュース映像が妙にリアリティがあって、全体を通してのストーリーにも驚かされました。友人の家で一緒にプレイしたとき、その友人のお兄さんが『3』劇中のニュース映像を見て「とてもリアルだ」と言っていたことが忘れられないです。


また『R4 -RIDGE RACER TYPE 4-』もレースの幕間にストーリーが盛り込まれていましたね。他にも、スクウェア(当時)のシューティングゲーム『アインハンダー』も途中でプレイヤーが裏切られるストーリー展開があったため忘れられません。


もう少し語らせてもらうと、PS時代の90年代後半のゲームはスクウェアを筆頭に「文字を多く表示してプレイヤーに文章を読ませる」ゲームが多かったように思えます。2018年から未プレイだった『FF8』をPCでプレイしているのですが、ボイスが無く、常に文字が画面に出てくるため、『FF7』以上に何でも読まなくてはいけないことに驚きました。

葛西祝世界観と物語に浸らせるパワーが凄かったですからね。本当にRPGの影響って大きくって、セガサターンも中心タイトルだった『バーチャファイター』でさえも、結局のところRPG化に乗り出したわけですからね。それが『シェンムー』になるという。


G.Suzuki『シェンムー』!制作費70億円という、あのCMはインパクトがありましたね!

SHINJI-coo-K『シェンムー』は円熟の極みですよ。なにしろ広告のインパクトは大きかったし、予算を含めた、リソースを割けばオープンワールドは作れるという実例となりましたよね。20世紀最後にして最大のタイトルといってしまっていいかもしれません。

葛西祝『AZEL』と『シェンムー』は「時代の流れでRPGを作るけれど、絶対にただのRPGにはしない。爪痕を残してやる」ってゲームデザインを感じられていいんですよね。『シェンムー』はファンタジーの世界観じゃなくて、現実そのものが世界観だって打ち出しましたし。そしてジャンルも「RPGじゃない!FREEだ!」って表明していて、時代にツッパっているのもすごくいい(笑)

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《葛西 祝》

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