3つのサービスすべてが基本無料に─新井統括Pに聞く『リネージュ2』15年の軌跡とこれから

今年でついにサービス15周年。オンラインゲームの運営が長く続くということは、それだけ大勢のプレイヤーに愛され続けているということです。老舗オンラインRPGの躍進はまだまだ続きます。

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3つのサービスすべてが基本無料に─新井統括Pに聞く『リネージュ2』15年の軌跡とこれから
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2019年でサービス15周年をむかえた、エヌシージャパンによるファンタジーオンラインRPG『リネージュ2』。常に最新のアップデートを楽しめる「ライブサービス」、サービス開始初期の様相を色濃く残す「クラシックサービス」、充実した育成サポートでソロプレイでも楽しめる「アデンサービス」という3つのサービスが展開されており、10月30日には「ライブサービス」の基本プレイ無料化(他の2サービスはすでに基本プレイ無料)や、「アデンサービス」における新クラス「デスナイト」実装などの大型アップデートが予定されています。今なお進化を続ける『リネージュ2』がこれから目指す先とは? 統括プロデューサーの新井友和氏に思いをうかがいました。

――まずは新井氏の簡単な経歴からうかがえますか。

新井リネージュ2』統括プロデューサーの新井友和と申します。元々はアライアンス(業務提携)に携わっていましたが、『タワー オブ アイオン』でMMORPGの運営に携わるようになり、その後、本作の統括プロデューサーに就任いたしました。

弊社にジョインする前からいちプレイヤーとしてMMORPGが大好きで、元は『リネージュ2』のプレイヤーでした。そのときは、サーバー内でも屈指のプレイヤー……にはなれませんでしたが、かなりやり込んでいました(笑)。最先端のトレンドを知っておく必要がありますので、MMORPGは他社様のタイトルも含め、今もよく遊んでいます。

今はプロデューサーとしてサービス全体のマネジメントをしています。開発を手掛ける韓国の本社に企画・提案を行い、それを日本用にローカライズして実装する、というのも業務のひとつです。

――そうした企画や提案というのは、イベントや課金アイテムの案なども含まれるのでしょうか。

新井そうですね。アイテムであれば、本社や会社の方針と折衝しながら、その強さやバランスも含めて提案します。お客様にどういうアプローチをするべきか? 国ごとにゲームへのリテラシーや知識はどの程度異なるか? そうした部分も意識しながら、日本向けの調整を施して実装するまでを担当します。プロデューサーというとマネジメントが主だと思われるかもしれませんが、実際のところはなんでも屋ですね(笑)。

3種類のサービスをマネジメントしつつ、プランナーのような職務も果たしている新井氏

――『リネージュ2』を運営されてこられて、日本のプレイヤーにはどのような傾向が見られますか?

新井PCで遊ぶオンラインゲーム自体がニッチなものになっていっている傾向の影響もあるのでしょうが、コミュニティを広げていくのに苦心しています。新規プレイヤーとベテランプレイヤーの接続がなかなかうまくいかなかったり……。お客様の平均年齢は少し高めで35~40歳くらいです。学生時代、青春時代に本作にめぐりあった方たちが、そのまま遊び続けているという印象です。

もちろん若い方たちも入ってきてくれていますが、今どきの若い方たちは僕らの時代と違ってモバイルとともに過ごしてきているからか、他のプレイヤーと関わりを持つより自分(のキャラクター)が強くなることに喜びを見出す方が多い印象があります。

――言い換えるなら、若い層ほどソロプレイを好む傾向が強いということでしょうか。そうした傾向を鑑みてか、「アデンサービス」を筆頭に、自動狩りを実装されたのにも驚きました。

新井自動狩りの実装については、若い人たちに気軽にプレイしていただきたいというのが理由の一つです。また、先ほどお客様の平均年齢をお話しましたが、社会人の方が多いので、仕事に出られている間もレベル上げができるようにしたかったというのがもう一つの大きな理由として挙げられます。

――オンラインRPGの運営というと、むしろツールやマクロなどによる自動狩りを規約で禁じて取り締まる側であるという印象が強いですが、いわゆるbotなどとの区別は付くものなのでしょうか。

新井その点に関してはご安心ください! 伊達に運営を15年続けておりません。詳しくはお話できませんが見分ける術はありますし、そうした不正なプレイへの取り締まりは引き続き厳しく行ってまいります。

自動狩りを実装する際は、こちら側でも「そこまで自動でできたらゲームではないのでは?」という議論も激しくかわされましたが「自分でプレイして、パーティを組んだ方がより効率よくレベリングできる」ように調整することで、うまく"選択肢のひとつ"に収められたと考えています。ところで、iNSIDEさんは何かのゲームで遊ぶ際に効率を考えることはありますか。

――他のジャンルでもそうですが、オフラインのゲームよりレベルを上げづらいMMORPGでは特に考えますね。「どこそこの狩り場なら"時給"がどれくらい出る」とか……。
(編注:時給は「1時間あたりで得られる経験値(の平均/目安)」の意味)

新井なるほど。そういう時って、どんな構成でどこに行って、どんな敵を倒せば効率がよいか……と考えますよね。これから実装される「アデンサービス」は特にその傾向が強いのですが、そうしたシミュレーションゲーム的な”リソース管理遊び”を打ち出したかったというのもあります。

――スマートフォンのRPGでも、稼げるダンジョンに最適化したパーティやデッキを組んで延々と周回したりしますから、基本無料ということもあって「アデンサービス」は新規層にもとっつきやすそうですね。流れで「アデンサービス」のお話をうかがいましたが、「ライブサービス」と「クラシックサービス」についてもあらためて紹介をお願いできますか。

新井「ライブサービス」は2004年6月25日に正式サービスが始まった、当初からあるサービスです。常に最新のアップデートを体験できるのが特徴で、攻城戦などの大規模PvPが特に人気です。渋谷で大規模なプロモーションを行ったのが、今でも思い出深いですね(編注:大型アップデート「クロニクル5 Oath of Blood 血の盟約」に合わせ、2006年8月28日から9月12日にかけて渋谷で「リネージュ2 シブヤプロジェクト」が開催された)。おかげさまで、今年でサービス15周年をむかえました。

「クラシックサービス」は2015年4月1日より始まりました。2004年~2006年頃の「The Chaotic Chronicle」をベースとしたサービスになっておりまして、当時を懐かしみながら、狩りを中心にキャラクターをじっくり育成できます。「ライブサービス」は"覚醒"と呼ばれる4次クラスまでが実装されていますが、「クラシックサービス」はその手前の3次クラスまでとなっているのも特徴です。どちらのサービスも、プレイヤー数は順調に推移しております。

「リネージュ2 シブヤプロジェクト」は今でも思い出深いと語る新井氏

――「クラシックサービス」は2015年の開始当初から基本プレイ無料でしたが、そのときも「ライブサービス」は月額制を維持しましたね。それが10月30日の「アデンサービス」開始を機に基本プレイ無料となりますが、どのような経緯や意図があったのでしょうか。

新井「すべてのサービスを基本プレイ無料とするべきではないか」という議論は「クラシックサービス」の前から盛んに行われていたのですが、お客様からは喜ぶ声と同じくらいに「月額性のままにしてほしい」という要望も強く、そのときは維持させていただきました。

――反対の理由はどのようなものでしたか。

新井プレイ環境が大きく変わることで、今自分がいるコミュニティが崩れることを懸念されておられるようでした。それと「Pay to Win(課金額が勝敗や優劣に直結すること)」になってしまうのではないかという懸念ですね。ですが、「クラシックサービス」を基本プレイ無料で始め、そうはならないということが少しずつお分かりいただけており、今なら「ライブサービス」を基本プレイ無料モデルにしても大丈夫だろうと。

――基本無料化で、どのようなことに期待されておられますか。

新井毎日遊べるわけではない忙しい日々を送られている方は懐に優しくなりますし、休止されている方の復帰の促進にも期待しています。さらに今後のアップデートやイベントの開催で、先に述べたようなベテランと新規・復帰層の接続も加速させ、新しい風を吹かせられればと。

――そのほか、ユーザーインターフェースも見やすく改善されました。

新井長年サービスを続けてきて様々なシステムが追加された結果、すっかりごちゃごちゃとしてしまいましたので、ここで一度見やすく整理する必要があるだろうと。

インターフェース改善前の『リネージュ2』

こちらが改善後。アイコン類が赤い四角で囲った部分にまとめられスッキリした見た目に。
自動狩り関連のアイコンは画面中央下部にまとめられています

――話を「アデンサービス」に戻しますが、このサービスのみの特色として新クラス「デスナイト」の実装も発表されました。

新井「アデンサービス」は2019年2月のサービス開始以降、こまめにアップデートを施していますが、これまでの分析や運営の経験を生かして考えた結果、このサービスに新たな特色を加える必要があると判断しました。

デスナイトはヒューマン、エルフ、ダークエルフの男性が選択可能なクラスで、アンデッド特性を持ちドレインスキルに強く、聖属性に弱いという特徴があります。また、クラススキルの特色として死に至る攻撃を受けた際に再び蘇るといったスキルや、3次クラスまで転職すると、デスナイトの姿に変身することができます。近接攻撃に加え魔法スキルも使いこなせる特殊なダメージディーラー(編注:いわゆる攻撃担当/アタッカー。大抵の場合、攻撃力に優れるか耐久力に難がある)で、PvPで特に活躍します。


――種族や性別の条件は、今後緩和される可能性などはあるのでしょうか。

新井リネージュM』には女性キャラのナイトもいますし、みなさんからの要望が多ければ、今後、そうした可能性も検討の余地があると考えています。

――要望はしっかり運営に届けるのが大事ということですね。サービス15周年をむかえてなお、新たな風を吹かせ続ける姿勢をお持ちであることが分かりました。それでは、今後のロードマップでお話になれることがあればお聞かせください。

新井2020年上半期の実装を目指し、各国と争うことのできる「ワールド攻城戦」の準備を進めています。

――ちょうど日本でオリンピックが開催される年に、本作でもグローバルな対抗戦が行われるということですね。実装の際は、日本のプレイヤーはみんな味方同士になるのでしょうか。

新井まだ仕組みはこれから詰めていくところなのですが、そうなるといいかなと。

――ということは、もしかしたら日本のプレイヤーが別の国についたり、多国籍軍ができたりするようになる可能性も……?

新井それはそれで楽しそうなんですよね(笑)。やはりどこの地域でも、トッププレイヤーのプレイスタイルや考え方は似ていると感じていますので、言語の壁を乗り越えてうまくコミュニケーションさえ取れれば……。

――どちらの仕様でも、異なる楽しみがありそうですね。それでは最後に『リネージュ2』の今後に向けての意気込みと、弊誌読者やプレイヤーに向けてのひと言をお願いします。

新井本作はおかげさまで15周年をむかえましたが、狩りをしてレベルを上げるのがゲームのメインであるのはずっと変わりありません。その揺るがぬ根幹があるからこそ、ここまで続けてこられたし、これからも続けていけるのではと思っています。その一方で、お客様が強くなればレイドボスなどを倒す時間は短くなりますし、自動狩りも実装したことで、以前よりも短いスパンで楽しめるようになっています。

「ライブサービス」の基本プレイ無料化で3つのサービスすべてが基本プレイ無料となり、遊ぶハードルがより低くなると思いますので、休止されている方、まだ遊んだことがない方も、ぜひ本作に触れていただければと思います。私たちはこれからも最高の『リネージュ2』をお届けできるよう、アップデートやプロモーションに力を入れ続けます!


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《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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