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女性向け恋愛ゲームを手がけるボルテージは、Live2Dが主催のイベント「alive2019」にて、Live2Dを用いた成人男性の表現手法を紹介するセッションを行いました。
セッションタイトルは「「その口…塞いでやろうか…?」250人のイケメンをLive2D化してわかった、成人男性キャラの魅力的な見せ方」。インパクトがありすぎるタイトルですが、その内容も“イケメン作り”に徹底的にこだわっていてインパクト大。女性向け恋愛ゲームを100タイトル以上排出してきたボルテージならではの工夫が詰まった内容となりました。その様子をレポートします。
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登壇したのはボルテージのデザイン本部 モーションチーム マネージャ/アートディレクターの森井 理詠さん。会場は9割女性の受講者でした。
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◆映像の臨場感はどうして生まれたのか
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まずはボルテージのLive2D導入について。導入は2013年の「Cubism」で、ホーム画面のマスコットを動かすとことから始まりました。2015年の「Cubism2.0」からテンプレートを用いて映像に使うようになり、以降、バージョンアップに合わせてキャラクターの立ち絵をモデル化&映像化し、現在ではストーリー内にも利用しています。
Live2Dが最も使用されているのは「ヒロイン視点ムービー」。実際に会場で映像が流れましたが、通常なら1人で見る映像を大勢で、しかも大画面で見るのはかなり恥ずかしいものがありました。しかし、映像に臨場感があり、初見のムービーにも関わらず即恋に落ちてしまいそうな錯覚に! なぜそのような気分になったのか、これこそが本講演の肝であると感じ、先の話に期待が高まります。
◆キャラを細かく動かすことより大切なこと
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今でこそ胸キュン映像をたくさん制作しているボルテージですが、Live2D導入当初はディレクターから「キャラのイメージと違う」「動きすぎて気持ち悪い」と言われてしまったそうです。「動かせることが嬉しくて動かしすぎてしまいました」と森井さん。お客さんにとって大事なことはキャラクターが動くことではなく彼が生きて目の前にいることだと気付き、制作ポリシーを決めていったそうです。そして「モデリング」と「演技」の2つに焦点を絞ったといいます。
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まずはモデリング。「彼と私の日常」を壊さないことが重要であると森井さん。
当初、モデリングは真正面のほうが作りやすいため、真正面に近い表情差分の「微笑」を元に制作したそうです。しかしソックリさんができてしまい、ボツに。
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「お客様が一番見慣れているのは静止画の立ち絵。それが「日常」なのに、作り手の都合で壊してはいけない」。その経験から、顔が傾いていて作りづらくても、再頻出の「基本」でモデリングをすることを死守しているのだそうです。
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次は演技について。アニメキャラは基本的に「誇張表現」が大事であると言われていますが、それをイケメンにさせてしまうとキャラ崩壊が起きてしまいます。イケメンキャラらしい動きをつけることに追求した結果、基本のベンチマークを「ドラマ」に、基本姿勢は「誇張」よりも「リアル」に寄せることにしたのだそうです。
さらに「目と眉毛で演技をする」「彼の性格を理解し、表情に落とし込む」「ギャップをつくる」ことでよりリアルになるように工夫をしています。
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眉を下げたり、目をそらしたりしてキャラの性格を表現。
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最も多い「俺様」キャラも細分化されており、それぞれ個性が出るように表情に落とし込んでいます。
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最大の胸キュンポイントであるギャップをメリハリを付けて表現!
紆余曲折を経て、今のリアルなイケメンたちが生まれたのですね。
◆ディティールにこだわることで臨場感が生まれる
実際のムービーを見ながらの演技解説では、AnimatorとAfter Effectsでの工夫を紹介。
Animatorでは「基本性格の表現」と「オス顔」を入れることがポイントであると森井さん。
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基本性格の表現ではキャラの性格に合わせて体・顔の「Y軸」に変化を持たせているとのこと。温厚な性格のキャラの場合、女の子の目線まで屈んでくれると想定し、アニメーションキーはデフォルトの位置よりも低めを意識しているそうです。
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逆に俺様キャラは高圧的な雰囲気を出すためキーを上げています。また、下げる前には上がる予備動作を入れ、「目線を合わせてくれている」ことがはっきりわかるようにしているのだそうです。
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Animatorにおけるもうひとつの工夫はずばりオス顔。最も盛り上がるキスの前に最も男っぽい顔をさせることでギャップを作り、ユーザーをときめかせる狙いがあります。
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次にAfter Effectsでの工夫について。一つ目の「彼の手」は画面側差し出された手のことで、見切れさせることでヒロインの目線であることを強調しています。
二つ目「落ち影」ではキャラが近づくにつれ顔に影をかけること。キャラの頭の上に照明があると想定し、臨場感を演出しています。
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三つ目「背景演出」は言われなければ分からないほどの細かい演出。エレベーターの光が消えた後、振り向くと夜景がキラキラしているなど、ドラマチックな演出にとことんこだわっています。
最後に「カメラ」。ヒロインは喋らないからこそ、カメラの動きでヒロインの行動や意思を伝える必要があります。基本ですが、とても重要ですね。
◆アプリ内におけるLive2Dと今後の野望
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ムービーの知見をもって、アプリ『あやかし恋廻り』では多くの場所にLive2Dを導入しています。しかしアプリへの導入のハードルはかなり高かったそうで、「思っていた10倍ハードルが高かった」と森井さん。
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特にこだわったのは「壁ドンモーション」。キャラがかなり近い位置まで近づいてくれます! 映像で培った「見切れると臨場感が増す」ノウハウがここに活きていますね。また、モデル側に拡大パラメーターを仕込んでいるため、Unityの設定が不要になり、デザイナー側で作業を完結させられるのが最大の利点なのだそうです。
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拡大の中心点を目の間に設定することで、キャラの身長も反映されているのがニクいですね。
今後、アプリ内でも動画が完全再現できることや、キャラムービーコンテンツへの展開なども考えているそうです。これまでのノウハウがさらに臨場感のあるリアル彼体験につながっていくと思うとワクワクしますね。
イケメンのLive2Dモデリングは一日にして成らず。冒頭に感じた「恋に即落ち」しそうな映像体験は、イケメンをモデリングするための徹底的なこだわり、それを活かすための細かな映像演出が成せる業であると実感するセッションでした。さっそくアプリをDLしてイケメンに癒されに行ってきます!