『Ghost of Tsushima』後編:何故日本の長弓はオーバーキル性能を持ってしまったのか?【ゲームで英語漬け#32】

第32回は『Ghost of Tsushima』の後編をお届けします。

ソニー PS4
『Ghost of Tsushima』後編:何故日本の長弓はオーバーキル性能を持ってしまったのか?【ゲームで英語漬け#32】
『Ghost of Tsushima』後編:何故日本の長弓はオーバーキル性能を持ってしまったのか?【ゲームで英語漬け#32】 全 7 枚 拡大写真

先週に引き続き、今回も『Ghost of Tsushima』を特集します。先日配信が開始されたマルチプレイモード『冥人奇譚』には、時を開けずして新たなミッション「大禍」の追加が予定されています。毎週土曜日の週替わりミッションもあり、週末の丑の刻には夜な夜な冥人たちが対馬に集うことでしょう。

『Ghost of Tsushima』前編:英語から考える冥人にとっての「HONOR」とは?【ゲームで英語漬け#31】
冒頭の動画はモーションキャプチャーに参加した「天心流兵法」のチャンネルより。オンラインで指南動画を積極的に配信されています。時々見覚えのある動きもありますね。こちらは担当した鍬海氏による実況プレイ。専門家の視点からツッコミを入れつつ撮影時の裏話も交えて攻略していきます。



練習問題の解答


問題:You forgot what it’s like to fight someone stronger than you.
回答例:強い相手と戦うってどういうもんか忘れたのかい?

“What is it like ~?”は「~はどんな感じ?」という定型句ですね。ここでは“You forgot”が主語の通常文なので“What it is”の形です。

日本語版では「自分より強いやつに負ける気持ち、分かるよ」と同情するもの。本作のローカライズは「英語をそのままローカライズするというよりは、英語をベースにして1から時代劇を作る」という方針なので、大まかには同じですが文意に手が加えられているところが結構あります。2週目には言語を切り替えてその違いを確かめるのも面白いですね。

Impressive phrases:英語であの台詞を言ってみよう



英語版:I’ve never seen a samurai fight like that.
訳:こんな戦い方するお侍様は見たことねえ……
日本語版:お侍様の戦い方じゃねえ……


仁の残虐な戦いを目撃したたかが呟いた、本作を代表する台詞ですね。直訳したものと日本語訳では文意に違いがあります。直訳の方は一見すると感心していると取られる可能性もあり、この場面で重要になる仁の恐ろしさを落としてしまいます。そのため、正々堂々たる侍の戦い方に背いている、という点をより強調する言葉が選ばれています。ちょっとした意訳ですが、非道な戦い方に恐怖を抱いているのがよく伝わり、トレイラーの中でも特に印象的な台詞になりましたね。


英語版:Someone has to.
訳:誰かがやらねえとな



I did what I had to.
訳:成すべき事をしたまで


仁と竜三、旧友だった二人は道を違えてしまいますが、二人とも根本的なところは同じで、“Have to”、誰かがかぶらなければならない泥をかぶる立場になりました。登場する武家の人々はこの“have to”を行動原理にしており、私情との間で揺れ動いています。


英語版:Honor died on the beach.
日本語版:誉れは浜で死にました!


こちらはストレートな翻訳ですね。日本の精神性を重んじる本作において、「誉れ」が「死ぬ」という言葉は大きなインパクトがあります。志村の生き方、ひいては侍の存在意義を全否定する台詞であり、二人が袂を分かつ決定打になりました。侍は戦だけでなく民を統治する政治も担うので、人心の離反を最も避けなければなりません。それでも仁が侍を捨てる道を選んだのは、ゆなや竜三の生きる姿に触れて、生き抜くことの難しさに悩んだ末の答えなのでしょう。

人間も吹っ飛ばせる? ガラパゴス化した日本の長弓


素晴らしいゲームプレイだったのですが、弓でのヘッドショットの物理演算を見直していただけませんか。矢で敵を弾き飛ばすのは少し非現実的でしたし、やりすぎだと思いました。それ以外は見事なデモでした。

ネイト:この件についてはたくさんのユーザーからコメントをいただきました。(中略)日本の長弓には、西洋やモンゴルの標準的な弓よりもはるかに大型のものがあり、「State of Play」でご覧いただいたように敵を弾き飛ばすほどの衝撃を与えることもできたと思います。

Playstation.Blogより)

本物の武術家でモーションキャプチャーするなど、殺陣へのこだわりが光る本作ですが、発売前にはこんな話題も上がっていました。ゲーム中の長弓は通常の矢と違う「剛矢」が必要で、番える時間もかかる重い武器です。鎧も貫通できると説明文にありますが、実際はどうだったのでしょうか。こちらの動画では実物の長弓を矢を使用し、鉄板の貫通実験が行われました。


ゲームの「剛矢」に相当する最も太いものは「大将を射る」用途だと説明がありますね。動画にもあるように鎧を通すには矢自体が補強されている必要があります。そのため、この矢は重装の鎧武者を射抜くためだけの特注品。これほどの威力を持つ弓矢は世界を見ても極めて珍しいです。

ではなぜこんな極端な威力が必要になったのでしょうか。それは、初期の武士は刀ではなく弓矢を主武器として使っていたからです。学校でも習いましたが、鎌倉時代の武士鍛錬では犬追物、笠懸、流鏑馬の「騎射三物」が有名ですね。この3種はどれも騎馬弓術を鍛えるもので、武士=弓のイメージは今川義元の武勇を表す言葉「海道一の弓取り」にも現れます。一騎討ちも最初は弓の撃ち合いから始められました。

防御、機動、遠距離攻撃が揃ったオールラウンダーの騎馬武者は、局所戦で個人の武勲を求めた日本独自の発展です。それを討ち取るには、弓の反撃を防ぐために一発で仕留める必要があります。そのため鎧を貫く威力を求めた結果、世界でも類を見ない超大型の弓矢が生まれたのです。

今週のキーフレーズ:Massacred by our own people.



身内によって皆殺しにされたのだ


復讐の鬼と化した政子と最初に出会ったシーンより。「Massacre」は「マサカー」と発音するので、政子の名前の由来だと思われます。仇敵とみるや容赦なく斬りかかり、その執念はある意味、仁以上に恐ろしさを感じます。似たような意味の「Genocide」は主に政治的な意図で民族、特定の国民を対象にしたものに使われます。「Massacre」は無差別殺傷など残虐さを強調するときに用いられますね。

練習問題:次のリスニング問題に答えなさい。



冒頭の回想シーンにおける志村の台詞を書き取りなさい。


TOEICテストでは2006年よりアメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、5カ国のアクセントをリスニング問題に使用しています。グローバル英語の時代には、耳慣れない訛りであっても理解できるレベルが求められます。日本人の英語はこのように聞こえていると理解して挑戦してみてください。

《Skollfang》

この記事の写真

/

特集

関連ニュース