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本作を一言で表すなら、ハクスラに特化した『エルダー・スクロールズ(The Elder Scrolls 以下:TES)』だと言えるでしょう。どのようなゲームになっているのか、その詳細を見ていきたいと思います。
『エルダー・スクロールズ』の世界をスマホに忠実に再現
本作の最大の特徴は、オリジナルの『TES』に忠実なルックに仕上がっているということ。最初に行うキャラメイクは、シリーズお馴染みの作り。インペリアル、ノルド、カジートやアルゴニアンなどの種族から選択し、顔の形や髪や目の色、体の大きさまで詳細を設定。自分のオリジナルキャラクターを作成できます。
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オリジナル作品と比較すると、顔バリエーションが少な目ではありますが、このあたりは基本無料のスマホゲームであるため致し方ないところかもしれません。
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冒険は一人称視点で進行します。森や洞窟の景観は非常に美麗。散策しているだけで、『TES』の世界に入り込んだ気分になれます。
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街やダンジョンのデザインはオリジナル作品に近いクオリティになっているため、『TES』をプレイしているという感覚を大いに味わうことができます。
ゲームプレイはスマホの縦向きと横向きの両方に対応しているところも特徴。操作性はどちらも大きくは変わりません。横向きの方が視界が広いため、周囲を探したり、敵の位置を把握しやすいところがポイント。電車での移動中などスキマ時間には縦向きでサクッとプレイし、腰を据えて遊ぶときは横向きで周囲をよく観察しながらプレイする、というスタイルがベターでしょう。
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豊富な育成要素や、街づくりのシステム
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『TES』シリーズは育成や装備のシステムも重要な要素。この『ブレイズ』でも過去作お馴染みの武器防具を一通り取り揃えております。
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また、育成はスキルツリーによるもの。項目は大きく「呪文」、「特殊能力」、「アビリティ」の三つに分かれています。「呪文」はその名の通り炎や氷を操り敵を攻撃したり、回復したりする能力。「特殊能力」は「剣での攻撃力に+数%」などのいわゆるパッシブの能力。「アビリティ」は攻撃武器を使った技能となっています。
レベルが上がった際に与えられるスキルポイントを自分の欲しい技能に振り分けて育成します。呪文主体のキャラに育てるも良し、武器のプロフェッショナルを作るも良し、プレイヤーの自由です。
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また、本作は崩壊した街を拠点として冒険を進め、復興させることが目的。ダンジョンを探索し、お金と資材を集めて建物を建て、街を活性化させていきます。建物を建てるにつれて街のレベルが上がり、それに合わせて建設できる施設のバリエーションが増加していくという流れです。
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最初は民家くらいしか建設できませんが、次第に鍛冶屋や錬金術研究所など様々な施設を建設が可能に。建てる場所も数も制限はありますが、基本的にプレイヤーの自由であるため、自分だけの街を作ることができるようになっています。
ダンジョン探索にシンプルな戦闘システム
森や洞窟などの探索がゲームの主たる部分。スマホゲームだからと言って侮れません。ダンジョンの作り込みはしっかりしており、やり甲斐は十分。各所に宝箱が落ちていたり隠し部屋があったりと、正当なRPGらしい探索を楽しむことができます。
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敵との戦闘はシンプル。敵と主人公の一対一の戦いとなります。画面のタップによる武器攻撃の他、画面下にセットした呪文やアビリティを使って特殊攻撃を使用できるようになっています。HP、MP、スタミナのそれぞれが減ってきたら、薬を使っての回復も重要。
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良くも悪くも『TES』らしい戦闘システムだと言えるでしょう。盾での防御を上手く組み合わせたり、クリティカルヒットを狙う程度のテクニックは必要ですが、アクションを楽しむというよりは呪文や技能で戦略の幅を広げるタイプのゲームです。従来シリーズのファンなら問題なく入り込めると思います。逆に『オブリビオン』も『スカイリム』もやったことない人は「こんなものなの?」と驚くかもしれませんが、このシンプルさこそ『TES』ですね。
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敵を倒すとアイテムを落とします。素材やお金、時には武器や防具のドロップも。自分の所持品よりも数段階高いアイテムが出る場合もあります。レアアイテムを狙って集めることこそが本作の醍醐味と言えるでしょう。
ダンジョンに挑戦する際には、どのレベルのアイテムを入手可能であるかが事前に提示されます。拠点で冒険の準備をして、ダンジョンで敵を狩ってアイテムドロップを狙うという、シンプルなハック&スラッシュが楽しめるようになっています。
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装備品は課金して購入でき、記事執筆時点では黒檀の鎖帷子やドーンブレイカーが課金対象として並んでいます。筆者も『スカイリム』でドーンブレイカーには大変お世話になりました。こうして目の前に陳列されていると欲しくなってしまいますね。
本作と従来シリーズの大きな違い
本作は基本無料のスマホゲーム故、当然オリジナルの『TES』シリーズと比較していくつかの要素がそぎ落とされています。本作をプレイする上で、それらを知っておくことは非常に重要ですので、ここで述べていきます。
まず本作はオープンワールドではありません。『エルダー・スクロールズ』といえばオープンワールドこそが一番の売りといって間違いありませんが、本作ではその要素はオミットされています。
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基本的に拠点である街とダンジョンの往復でゲームが進行します。挑戦するクエストを選択すると自動的にダンジョンへ移動して探索がスタート。クリア後は探索終了のボタンを押すと直接街に戻ってくるという仕組みです。
行動の自由度が少ない、という点にも注意が必要です。従来の『TES』シリーズは、民家に侵入して盗みを働いたり、NPCとの戦闘も可能であるなど、遊びの幅が非常に広いことが特徴でした。しかしこの『ブレイズ』ではピッキングやスリなどの行為は不可能であり、街の中の建物には入ることすらできません。街の中での抜刀もできず、会話以外の方法でNPCに干渉できないようになっています。
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「オープンワールド」と「なんでもできる自由度」を除外しているため、従来の『TES』シリーズを期待していたプレイヤーは面食らうかもしれません。冒頭でも述べましたが、本作は『TES』の世界で「ハック&スラッシュ」を楽しめる作品。ダンジョン探索は丁寧な作りになっているので、ハクスラとしては十分やり込めるのではないかと感じました。
その他にも「深淵」という、ひたすら深く潜り続けるタイプのダンジョンも存在。どこまでも深い階層が用意されており、一度の冒険で行けるところまで進む腕試し的なダンジョンです。
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メインのシナリオを十分に攻略し、装備を揃えたプレイヤーは永遠に続く深淵に挑み、腕試ししてみると良いでしょう。
やり込み要素を豊富に備えた『エルダー・スクロールズ:ブレイズ』。従来のシリーズ作の雰囲気を壊すことなく、新しい遊びを提供してくれる作品となっています。